1995年から開始されてきた学生CGコンテストもついに20年へ到達。節目となった第20回の受賞発表イベントが、さる2月27日(金)と28日(土)に東京・銀座のクリエイティブカレッジ「G/A/T」(ギャット)にて開催された。

「第20回学生CGコンテスト」受賞発表イベント

トークセッションの様子

28日に行われたトークセッションのうち、アニメーションには優秀賞から『おでかけ』の川上彩穂氏、『だっぴするためにひつようなこと』の大城良輔氏、『Willy's Night of Surprises』(TEAM AT1代表:小島良介氏)の栗木大介氏、審査員賞から『想い雲』の中舎康平氏、評価員賞から『なまずは海に還る』の岩瀬夏緒里氏の5名が登壇。

モデレーターはアニメーション作家の水江未来氏(審査員)、3DCGコンテンツを中心としたマルチメディア・イメージ・スタジオ「テトラ」から代表取締役プロデューサーの谷口充大氏(評価員)が務めた。5作品中、3DCG作品は『Willy's Night of Surprises(オバケのウィリー)』のみ。本作は同校初の試みとしてクラス20名が一丸となって制作したものであり、相応にハイクオリティに仕上がっている。

Willy's Night of Surprises 「オバケのウィリー」 from TRIDENT COMPUTER on Vimeo

「表現というところではどう思いますか? 手描きと比べて」と問う谷口氏に対し、「それぞれの質感を表現し分けるのを、どのレベルまでできるのか、そこまで分ける必要なくつくってるのか興味があります」と水江氏。

その答えとして栗木氏は、「時間の関係で髪の毛に手を加えることはしてなくて、もし時間があったら入れたいですね。動きで質感を与える作業もしていかないと、硬い表現になってしまうと考えてます」と返した。

「第20回学生CGコンテスト」受賞発表イベント

左から『Willy's Night of Surprises』について話す栗木氏、岩瀬氏、水江氏、谷口氏

それから谷口氏は「日本のCG教育そのものの問題につながってくるんですけど、なかなかこのレベルで作品が作れる学校や生徒が少ない」と現状に触れた。栗木氏の本作は名古屋にあるトライデントコンピュータ専門学校 CGスペシャリスト学科の作品であるが、屈指のクオリティを誇る学校として業界でも定評がある。

谷口氏もまた同校の出身で、このほか2005年に短編『惑星大怪獣ネガドン』が話題となった粟津 順監督や、2010年の第16回で優秀賞を受賞し、昨年YouTubeで100万再生を突破した『CHILDREN』(代表:岡田拓也氏)など多彩だ。

一方の川上氏、大城氏、岩瀬氏は東京藝術大学 大学院 映像研究科 アニメーション専攻、中舎氏は多摩美術大学 美術学部 グラフィックデザイン学科で作品を仕上げた。

前者は教授に山村浩二氏、伊藤有壱氏などのアニメーション作家、NHKで放送されていた「デジタル・スタジアム」の元プロデューサー 岡本美津子氏を擁する。

後者は故・片山雅博教授が学生によるアニメーション制作を牽引、短編『つみきのいえ』でアカデミー賞を受賞した加藤久仁生氏をはじめ、水江氏も出身として国内外の映画祭を賑わせている。

「第20回学生CGコンテスト」受賞発表イベント

『想い雲』について話す中舎氏。手前2人は左から川上氏、大城氏

学生CGコンテストの始まった1995年は、初のフル3DCG長編『トイ・ストーリー』が公開された年でもある。当コンテストも初期はCG作品がメインで、2000年の第6回には先の粟津監督が『大怪鳥マガラ襲来』でノミネートしているのが見られる。同時期に「デジタル・スタジアム」の放送が始まり、美大・芸大生による手描きやコマ撮りの作品も増えていった。他の国内の映画祭やコンテストでも、短編作品の多くを学生作品が占める結果になっている。美大・芸大生による作品の多くは、単体で見るとPVやMVはともかく長編やテレビシリーズへの恩恵がさほどないように見える。

しかし他人の画をアニメートさせるのが得意でない、奨学金をてっとり早く返済するためにアニメ会社よりもゲーム会社を選ぶなどといった理由でなければ、そこまで就職先を選ぶ際には障害にはなっていない。さらに手描きで体得した感覚が活かせるCGアニメーターも選択枝としてますます顕著になっている。

「第20回学生CGコンテスト」受賞発表イベント

現在、大城氏は某アニメCG会社に所属しているとのこと(左から2人目)

当の学生CGコンテストは、その状況どころか、より幅広い視野で学生の可能性を評価している。特に2011年の第17回からは「CG」を「Computer Graphics」から「Campus Genius」へと改めることで部門を廃し、応募作品を同じ目線で等しく審査する方式に変更したからだ。

今回も最優秀賞に選ばれたノガミカツキ氏の『山田太郎プロジェクト』や平本瑞季氏の『いっしょに!おえかきおねいさん』(評価員賞)といったパフォーマンス作品から山内祥太氏の『市澤氏にバツの話を聞く』(評価員賞)といったドキュメンタリー映像まで枠にしばりがない。

山田太郎プロジェクト from katsuki nogami on Vimeo

ちなみにアニメーション作品で上述の5作品以外は、審査員賞に幸 洋子氏の『黄色い気球とばんの先生』とwakuwa氏の『Brother』、評価員賞に三浦光理氏の『アオハルは突然に...』と前田結歌氏の『正太郎』と、計9作品になった。そのうち『Brother』と『アオハルは突然に...』が3DCG作品となっている(後者は前半がマンガ)。

TEXT&PHOTO_真狩祐志

「学生CGコンテスト」
主催:CG-ARTS協会(公益財団法人 画像情報教育振興協会)
特別協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社
協力:カゴヤ・ジャパン株式会社、ゲッティ イメージズ ジャパン株式会社、株式会社ステップ・イースト、スパイラル/株式会社ワコールアートセンター、公益財団法人日本デザイン振興会、阪急うめだ本店