3月6日(日)、三鷹市芸術文化センターにおいてアニメーションに関わる様々な才能の発掘を目的とした映像イベント「三鷹の森アニメフェスタ2016 第14回インディーズアニメフェスタ」が開催された。本稿ではその模様をお伝えする。

TEXT & PHOTO_真狩祐志 / Yushi Makari
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada



新しい才能が集う「インディーズアニメフェスタ」

三鷹市で2003年から開催されてきた「三鷹の森アニメフェスタ」。今年も会期は2日間で、1日目の「アニメーション古今東西」では第1部で「動物とアニメーション」と題し、2015年米国アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされた『ダム・キーパー』ほか全6作品を上映、第2部では原 恵一監督によるアニメーション映画映画『百日紅―Miss HOKUSAI―』の上映と現代アーティスト・小松美羽氏のライプペインティングが行われた。

一方、2日目に行われた「第14回インディーズアニメフェスタ」では、プロ、アマ問わず1~15分程度の作品を公募。当日は選出された10作品の上映と各賞の発表が行われた。過去に大賞<三鷹市賞>を受賞した作品としては、塚原重義氏『ウシガエル』(第3回)・『端ノ向フ』(第11回)、石田祐康氏『フミコの告白』(第8回)・『rain town』(第9回)などがある。

インディーズアニメフェスタ,三鷹の森アニメフェスタ

オープニングでは三鷹の森アニメフェスタのイメージソング『このまち みたか~僕らの未来へと~』が披露された

今回のノミネート作品は『東京コスモ』(宮内貴広氏)、『ピーナッツ』(中村 武氏)、『かなえて!トゥインクルスター』(大野 剛氏)、『カメラあそび』(平間誠士氏)、『公園のトロイ<特別編>』(MATSUMO氏)、『Sketch』(Nozomi氏)ほか計10作品。

なお『ピーナッツ』の制作者である中村氏は第4回の『かたいフタ』(いしづか賞受賞)・第8回の『お手本』、そして『公園のトロイ<特別編>』の制作者であるMATSUMO氏は第10回の『動物の転校生』(市民審査員賞受賞)に続くノミネートとなった。

16mmフィルムから3DCGまで、多様な表現方法による作品が集結

当日、発表された「第14回インディーズアニメフェスタ」各賞の受賞作品は、以下の通り。

審査員賞

審査員賞:『TUKUMO99~夢見る柳ババァ~』(おーのもとき氏・加藤妙子氏)

インディーズアニメフェスタ,三鷹の森アニメフェスタ

おーのもとき氏に講評中の審査員・西岡純一氏(徳間記念アニメーション文化財団事務局長)。
「影絵アニメーション風のレトロな色使いなど、どの場面も絵本になりそうな画づくりが一番の魅力だと思いました。話自体もシャレが効いていてニヤッとさせられました」(西岡氏)

おーの氏は昨年開催された「第13回インディーズアニメフェスタ」で『トウモロコシどろぼう』がノミネートされている。

インディーズアニメフェスタ,三鷹の森アニメフェスタ

審査員賞:『おひさま』(しょ~た氏)
「旅人が良いキャラクターだと思います。物語も理屈抜きで楽しめますし、オリジナルの歌も楽しくて頭に残りますので、シリーズ化していくとよいのではないでしょうか」(審査員・浅尾芳宣氏/大阪芸術大学映像学科准教授・ガイナックス取締役)

なお、しょ~た氏も前回のフェスタで『そらとぶとけい』がノミネートされている。

市民審査員賞

来場者の得票数が反映される市民審査員賞に選出された『シリーズおともだち』は全6話。その中から1、3、5話が上映されたが、中でも異色の第5話『ちはるトマホーク』は某アニメ風のサントラが物語を盛り上げた

市民審査員賞:『シリーズおともだち』(永谷優治氏・石松氏)
※動画は第5話『ちはるトマホーク』

インディーズアニメフェスタ,三鷹の森アニメフェスタ

永谷優治氏に講評中の審査員・谷口顕也氏(サムライピクチャーズ代表)。「日常系のアニメはたくさん観るのですが、間の使い方など完成度が高いと思いました。それから日常系の作品は単調な絵になりやすいんですが、本作の場合、テクスチャで個性を出せていたと思います」(谷口氏)

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ジブリ美術館チケット抽選会当選者の二人も、『シリーズおともだち』に投票していた

大賞<三鷹市賞>

栄えある大賞<三鷹市賞>には、水谷汐里氏の『愛をこめて』が選ばれた。

大賞<三鷹市賞>『愛をこめて』(水谷汐里氏)

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三鷹市長・清原慶子氏より表彰を受ける水谷汐里氏。「大学一年生の時に制作された作品にも関わらず、完成度が高く驚きました。キャラクターや背景の色彩設計がいいと思います。それから、トマトが水で洗われてからまな板で白黒に変わる演出にオリジナリティがありました」(浅尾氏)

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審査員、三鷹市長、受賞者一同

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総評する三上浩司氏(東京工科大学メディア学部准教授)。「大賞はやはり演出と表現力が決め手になったと思います。トマトが切られる時の包丁が迫ってくる感覚であったり、切られる時の仲間のトマトの演出であったり、最後に切られたトマトが美味しそうであったりと。そういったところが審査員の間で高評価につながりました」(三上氏)

また三上氏は閉会に際し、「上映中に笑いが起こったり、怖い場面では"キャー"といった悲鳴が聞こえるなど、例年になくお客様の反応が良かったと思いました。会場で市民の皆様に審査いただくことで、作り手の皆さんもお客様のことを考えて作品をつくっているんだなと感じました」と総評。また最後に「今回も16mmフィルムを使った作品からデジタル、手描き、3DCGと様々な技術による作品が集まりました。ノミネートはされませんでしたが、人形やクレイを使ったものもあり、クリエイターの皆様があらゆる技法で観客を楽しませてくれたことがありがたかったです」と、振り返った。

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  • 三鷹の森アニメフェスタ2016
    第14回インディーズアニメフェスタ

    2016年3月6日(日)(13:00~16:00)
    開催場所:三鷹市芸術文化センター/星のホール(東京都三鷹市上連雀6-12-14)
    主催:三鷹市/インディーズアニメフェスタ実行委員会
    協賛:ボーンデジタル、電子システム
    www2.m-sohot.com/iafesta