9月21日(土)、サイバーコネクトツー(以下、CC2)が主催する「サイバーコネクトツーゲームクリエイターセミナー」が日本教育会館にて開催された。同イベントはCC2が毎年東京、大阪、福岡の3ヵ所で行なっているゲームクリエイターを目指す方へ向けたセミナー。単に会社の説明が行われるだけではなく、ゲーム業界の実情や内定獲得のために必要なスキルの解説など実践的な情報も含まれ、毎年、人気を博している。

TEXT&PHOTO_久保 駆 / Riku Kubo(Playce)
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada

開発会社でありながら、パブリッシャーを目指すCC2

CC2は今年で設立から24年を迎えるゲーム開発会社。福岡本社と東京、カナダ・モントリオールの3拠点合わせて約210名のスタッフが在籍している。代表作は人気漫画『NARUTO-ナルト-』を題材にした『NARUTO-ナルト- ナルティメット』シリーズや、小説、アニメ、コミックなど幅広いメディアで展開している『.hack』シリーズなど。コンシューマーに向けて、ハイエンドなゲームの開発を手がけている。

セミナーの初めにはまず、人事室の百武みずほ氏が、CC2社内での特徴的な取り組みを紹介した。

いくつかある取り組みのうちのひとつが、3人1組の小さいチームがツリー状に連なり大きなチームをつくる「トライファクター」というチーム構造だ。こうしてチームの人数を3名に限定することで活発な意見交換を促す環境をつくっている。また、3人で話したことを上層部に伝えるというフローで、小さな意見をすくい上げられるよう工夫されている。その他にも、指揮管理を行うスタッフが分散することで、管理職の負担が減るという効果もあるという。

続いて紹介されたのは「超企画」と呼ばれる社内コンペ。年に数回行われるこのコンペは、社内でゲームなどの企画を募集し、審査を通過した企画を実際にプロジェクト化するというもの。社歴や職種に関わらず参加することができるため、若いスタッフがプロジェクトリーダーとなることもあるという。現在開発しているタイトルの中には、この超企画から生まれたプロジェクトもあるそうだ。

こうした取り組みに積極的な理由は、社員同士のコミュニケーションを大切にしているため。CC2は3拠点が離れてゲーム開発を行なっているため、伝える力や相手が言ったことを理解する力=コミュニケーション力がより必要になるのだという。

また、クリエイターが開発に集中できるよう、バックオフィス業務を行う部署に他のゲーム会社よりも多くの人員がいるとのこと。加えて女性でも活躍できる環境を整えているなど、働きやすい組織づくりにも力を入れている。

CC2はこれから、ゲームだけにとどまらず、アニメ、映像作品、マンガなどのエンターテインメント作品を積極的に発信していきたいという。ゲーム開発のプロジェクトを主軸としながら、ファミ通.comで連載中の『チェイサーゲーム』の制作や、A5プロジェクトと呼ばれる映像作品などを企画中だ。

続いて登壇した代表取締役の松山 洋氏は、「CC2はつくることにこだわりをもった会社」だと語る。「ものをつくっているヤツって格好良いと思っています。なので、自分たちがつくりたいと思うものをつくり、責任と誇りをもってお客様に届けることを大切にしています」と、松山氏は開発会社でありながらパブリッシャーを目指す同社の理念を語った。

「自分の武器」を活かしてゲームを制作

新卒で入社1年目のゲームデザイナー 藤井 洋氏が就職活動時から入社後の体験を紹介したセクションでは、まず藤井氏が「自分をアピールするためには武器をもつことが必要だ」と語りはじめた。自身の武器はプログラムができることやイラストを描けることだといい、それぞれの武器をどのように就職活動で活かしたのか。自身が就職活動で使用していた企画書とゲーム作品を見せながら解説を行なった。

藤井氏は企画書を提出する際、自分でプログラムを組み、実際に遊べるゲームを添えて提出したという。また、企画書には自分で描いたイラストを入れることで、頭の中にあるゲーム画面のイメージをそのまま表現することができたそう。結果、就職活動用の作品として目を引くものになったという。

続いて藤井氏は「作品を完成させることが重要」だと述べた。「ゲームデザイナーを目指すのであれば作品を完成させるようにしてください。ただ、自分が『完成した』と思えば完成という訳ではありません」と藤井氏。「企画書のみの送付でゲームがついていない」、「ゲームがついていてもバグが多くて動かない」、「既存のゲームのコピー作品」、「ゲームはできていてもチュートリアルが入っていない」など、「完成とは呼べない作品の例」を挙げ、学生たちに注意を促した。

また、完成したゲームに自信をもつことも大切だという。しかし「もちろん、自分が満足していれば大丈夫という訳ではありません」といい、ひとりよがりでない確かな自信をもつためには、他人からの評価が重要だと語った。コンペに出す、Webサイトで公開する、SNSを活用するなど、作品を評価してもらう場はたくさんある。客観的な意見をもらい作品をブラッシュアップすることで、真に自信のある作品へと高めていけるという。

さらに藤井氏は「ゲームはつくりたいけど絵も描けないし、プログラムもできない。そういう消極的な理由でゲームデザイナーを選ぶのではなく、明確な意思と理由をもって就職活動に取り組んでください」とも語った。

学生時代との変化については「入社後は『なぜ?』に対する答えとコミュニケーション能力が求められる」と話した藤井氏。昨年まで学生だった藤井氏の視点や体験談は、学生たちにとって実践的な情報となったのではないだろうか。

「分解、分析、再構築」をくり返し、エフェクトのクオリティを上げる

「エフェクトはテスクチャとポリゴンを組み合わせてつくります。その制作過程にパズルのような面白さを感じ、入社しました」。

こう話すのはビジュアルエフェクツアーティストの佐藤竜平氏。佐藤氏はアルバイトからCC2の正社員になった経歴をもつ。アルバイトをしていた当時は、CGの技術こそあったがエフェクト制作は未経験だったという。

そこでアルバイトをしながら、仕事の合間に自主的にエフェクトを学んでいたという佐藤氏。書籍やインターネットでUnreal Engine(以下、UE)やUnityの勉強をしていたほか、現場のエフェクトアーティストから課題をもらい制作方法について質問したり、チェックバックをもらっていた。「受け身ではなく積極的に動いたことで知識や技術が積み上がり、プロへの道を切り拓くことができた」と、佐藤氏は語る。

エフェクトの制作方法は、アルバイトをしながら自主的に勉強したという佐藤氏

自身の入社までの経緯を語ったのち、佐藤氏は現場における「ブラッシュアップの方法」を紹介。ヒットエフェクトとビームエフェクトを例に、どのように改善していくのか解説を行なった。

制作物のクオリティを上げるには「分解、分析、再構築」というサイクルで考えるのが良いと佐藤氏はいう。既存のゲームのエフェクトに含まれるパーツを分解し、各パーツの役割や良いと思う点を分析。それらを踏まえて制作を行い、良いと思った点を採り入れながらエフェクトを再構築する。完成したエフェクトに納得がいかなければ、再度分解に戻って理解を深めることで、プロのクオリティへと近づいていくのだという。

「デザイン感覚を高めるために、既存の作品の研究を行うようにしてください。それから制作技術の習得のために、『この方法ならつくれそう』という感覚をもつようにしてください。未経験でも、プロになっても学ぶことはたくさんあります。学ぶことを継続すれば必ず力はついてくるので、諦めず、プロを目指してほしいと思います」と佐藤氏は学生たちにアドバイスした。

「自分の技術が足りないと感じていても、ぜひインターンやアルバイトで開発の現場に入ってみてください。学校では学べないことを、開発を通じて体験することができます」(佐藤氏)

研修では座学と実践をくり返し、プログラマーに必要なスキルを磨く

次に登壇した常岡晴彦氏はプログラマーとしてゲーム開発を手がけながら、マネージャーとして採用や研修にも携わっている。このセクションでは、CC2に入社した後に行われているプログラマー研修が紹介された。

研修の目標はゲームプログラマーの基礎能力を身につけること。約3ヵ月の研修のうち、最初の1ヵ月はC++を学び、2~3ヵ月目はUE4を使ってゲームの開発を行う。実際にゲームを開発することで、ゲームに必要な要素やC++、UE4を理解できるため、成長のきっかけになるのだという。

「学生の頃と入社後で学ぶ内容には、ほとんど変化はありません。ただ、求められるクオリティは大きく変わります」と話す常岡氏。実際に行われている研修のフローが説明され、学生にとっては入社後のイメージが明確になるセッションとなった。

「C++の理解を深め、それをプログラムに落とし込む技術をもつことで、プログラマーとして成長することができます」(常岡氏)

CC2が求めているのは「新しい若い力」

常岡氏の講演の後は、登壇者全員による質疑応答が行われた。「ポートフォリオや面接での評価点」などといった一般的な質問のほか、「エフェクト制作はどのソフトで勉強すれば良いか」、「ゲームのアイデアはどのように考えているか」といった専門的な質問にも回答し、参加者の不安や疑問を解消する時間となった。

セミナーの最後に、松山氏は「CC2は全職種で新しい若い力を求めています。これから面白いものをつくっていくのは、皆さんのような若いクリエイター。まっすぐゲーム業界を目指して進んできてほしいと思います」と、CC2の採用について触れた。

さらに「面白いものをつくって世の中を驚かせたいと考えている人には合う会社だと思います」と話す松山氏。現在、CC2では未発表の大規模プロジェクトが進行中とのことだ。