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SIGGRAPH 2015 レポート:E-Tech、VR Village そして Posters

SIGGRAPH 2015 レポート:E-Tech、VR Village そして Posters

<1>Emerging Technologies(E-Tech)つづき

1−4.Fairy Lights in Femtoseconds : Aerial and Volumetric Graphics Rendered by a Focused Femtosecond Laser Combined With Computational Holographic Fieldss

このシステムは、フェムト秒レーザーで発生させたプラズマを用いて、空中に立体の光の絵を描くことができるシステムだ。過去にもプラズマを用いて空中に描画する試みはあったが、今回のシステムが既存のものと大きく異なるのは、プラズマで描いた絵に触れさらにインタラクション性をもたせることができるという点だ。また、音も従来のものと比較すると極めて静かである。

SIGGRAPH 2015 E-Tech

フェムト秒レーザーは短時間にエネルギーを圧縮して発振を行う。そのため、強いレーザー光をきわめて細かい範囲、短い時間に絞っての照射が可能となる。インタラクションを可能にするために、このレーザー照射によって何秒でどのくらい皮膚がダメージを受けそうかという検証実験も行なっている。その結果、2秒以下であれば皮膚表面のダメージを受ける面積が直径約500μmの円程度であることがわかった。
これを受けて、実際の展示に際しては、あらかじめプラズマ発生部分を60フレーム毎秒のカメラで認識させておき、指がさわった瞬間にレーザーを切るようにするという安全策がとられている。また、同じ仕組みを用いて画像が切り替わるようにプログラムしておけば、触ると絵が変わるなどのインタラクション性を持たせることもできる。
同システムの今後の展望としては、より安全なレーザーを使用し、もっと自由に触れるシステムの開発をしてみたいとのことだった。また、現状では展示のための設備が大がかりなものとなってしまうため、展示できる場所もどうしても限られてしまう。この問題がクリアされれば、様々な場所で、空中に浮く光の演出が楽しめるようになるかもしれない。

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Fairy Lights in Femtoseconds : Aerial and Volumetric Graphics Rendered by a Focused Femtosecond Laser Combined With Computational Holographic Fields
発表者:落合陽一氏(筑波大学図書館情報メディア 系助教)
96ochiai.ws/Yoichi_Ochiai


1−5.FlashTouch : Touchscreen Communication Combining Light and Touch

この展示では、タッチスクリーンを搭載したモバイル端末と双方向通信を実現する通信方式および技術が紹介されていた。仕組みとしては、タッチスクリーンの液晶パネルをアウトプット、デジタイザーをインプットとして用いている。スタイラス型のFlashTouch端末を使用することにより、投影型静電容量タッチスクリーンを有するすべてのデバイスで使用することができ、ユーザー間のデータの受け渡しやデバイス間のシームレスなデータの移動といった、実世界でのデバイスに即した情報共有が可能になる。

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アイデアを着想してからデバイスを制作するのは簡単だったが、その後のハードウェアの調整に非常に苦労したということで、着想から実現までに3年の時間を有している。主に、光通信の安定性や検証、また、タッチ通信のための画面に触れる電極の距離やサイズの検証に時間がかかったそうだ。
今後は高速化と通信のさらなる安定化を行い、デバイスを触れあわせた時に確実に通信が行われるようにすることを目標としている。その後に、データ交換や外部端末との通信など、実際の使用場面を前提としたデバイス設計・アプリ開発を進めていくことを考えているそうだ。興味を持っている企業もいるとのことで、実用化に向けてコラボレーションしていきたいとのこと。
SDKを組み込むことで、これまでごく一部の携帯端末でしか使用できなかったおサイフケータイ機能に近いようなものが全ての端末で使えるようになるということなので、実用化されれば端末に縛られない様々なサービスが今後活性化していくだろう。

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FlashTouch : Touchscreen Communication Combining Light and Touch
発表者:尾形正泰氏(慶應義塾大学情報工学科今井研究室)、杉浦裕太氏(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 人間情報工学部門 デジタルヒューマン研究グループ 産総研特別研究員)、今井倫太氏(慶應義塾大学情報工学科今井研究室)
www.interaction-ipsj.org/proceedings/2015/data/20150226/A24.pdf

<2>VR Village

VR Villageは、本年から新しく始まったVRに特化した体験型展示である。会期中には様々な展示を日替わりで体験することができ、並ばずに済むよう公式ページから予約も受け付けていた。カテゴリとしてはヘッドマウントディスプレイを用いたもの、用いないもの、ドーム型映像のものの3つに分かれており、合計69もの展示が集まっていた。ドーム型映像と実際にクルマに乗って衝突テストを追体験する「VR Crush Test」に関しては会期中通して同じ展示が行われていた。

SIGGRAPH 2015 VR Village

image courtesy of ACM SIGGRAPH

VISTouch

「VISTouch」は、Laval Virtual 2015にてINTERFACE & MULTIPURPOSE EQUIPMENT部門賞を受賞した直感的に3D空間を認識するためのシステムである。このシステムは、アルミを切り出して作成したスマホケース型ハードウェアと、アプリケーションから構成される。VR Villageでの体験型展示では、日本人唯一の出展となった。また、ヘッドマウントディスプレイ対応でもドーム型映像でもないコンテンツとしても唯一である。

3D空間を扱うインターフェイスとしてはヘッドマウントディスプレイが一般的であるが、ヘッドマウントディスプレイには眼鏡を使いづらい、長時間使用していると頭が痛くなることがある、など問題も多い。安本先生はこの問題を克服するため、本システムを考案した。
タッチセンサーを持つタブレットの上にこのハードウェアを装着した端末を載せると、載せ方に応じて各端末の画面に、その位置、その向きの3D空間の描画が行われる。例えばこのシステムを用いてGoogle Mapをタブレット上に表示させ、その地図上にスマートフォンを垂直に立てると、地図上の該当する場所のストリートビューをタイムラグなしに、任意の角度から見ることができる。それぞれの端末は完全に同じ3D空間を共有している。平行に重ね合わせた場合は、画面に表示される画像は上と下とで完全に重なり合う。
親となる端末のどこに子となる端末が触れているのか、といった情報は、親から子へとBluetooth経由で送られている。子は加速度センサーを使って接触している辺を軸とする角度を取得、空間上の該当する情報をリアルタイムに映し出すことが可能だ。

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最大8台の端末で同じ3D空間を共有することが可能で、画面の大きささえ十分であれば1枚のタブレットの上に複数のデバイスを置いて使用することもできる。このシステムは、端末にケースだけ付ければ手軽に利用できるのも魅力のひとつである。ケースはどの辺が親となるデバイスの上にどのようにタッチしているか認識させるため、マーカーとして辺についているポイント(凸形のディスプレイへの接触点)の並ぶ比率をそれぞれ変えている。
開発で最も時間がかかったのはケースの作成である。デバイスの特性上、導電体である必要があったこと、また3Dプリンターを使用しての耐久度の高いハードウェアの作成が困難であったことから、アルミの削りだしで作成した。側面、および背面に設置されているマーカー用のポイントも完全に水平となるよう仕上げる必要があったため、非常に手間がかかっているが、その分美しく実用にも耐えうる作りとなっている。

VISTouch
発表者:安本匡佑氏(神奈川工科大学 情報学部 情報メディア学科 助教)

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