一見実写映画のワンシーンかと見紛うような 今月号の表紙グラフィックは、本誌連載でもお馴染みのModelingCafeによるもの。本稿では、同社スタッフによるその制作工程を紹介する。

※本記事は、月刊「CGWORLD + digital video」vol. 210(2016年2月号)からの転載記事になります。

■MAKING01:コンセプト

今回は筆者( 一丸敦生)がModelingCafeに応募した際のポートフォリオの一部をブラッシュアップするかたちで、総勢4名のスタッフで制作しました。コンセプトは、2045年、何本もの長い触手を持つタコ型エイリアンが地球に侵攻。夫を殺された妻が 復讐のために日本政府により組織されたエイリアン討伐隊に参加、エイリアン抹殺に立ち上がるというストーリーです。

  • 『CGWORLD 210号(2月号)』表紙グラフィックメイキング
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<A>個人で制作していた初期の頃のZBrushでのコンセプトです。ストーリー、パーツのディテールのコントラスト、パーツ同士の関係性、装着時の動きやすさ等を考えながら作成します。
<B> 表紙のコンセプトはキャラクターの画像だけでなく、「CGWORLD」等の文字が入ることも考慮しなが ら、mental rayでレンダリングした画像にペイントオーバーで作成しました

■MAKING02:モデリング

まずはじめにすることは参考資料の収集です。顔には形状として様々な情報があり、リアルな顔を制作する場合には 資料が非常に重要になるため、顔全体や細部等様々な資料を用意します。顔の解剖学的知識も重要ですが、それだけではリアルな顔は作れないので、必ず資料を用意します。アーマー部分も同様に現実にある資料を参考にしますが、顔ほど資料の重要性は高くなく、頻繁に見ることもありません。今までどのような形を見て、それが頭の中にどれだけ入っているかが重要になります。

  • 『CGWORLD 210号(2月号)』表紙グラフィックメイキング
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<A>資料を参考にしながらZBrushでモデリングしていきます

  • 『CGWORLD 210号(2月号)』表紙グラフィックメイキング
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<B>細かいシワも追加していきますが、シワにもながれがあるので、それにも気をつけながら作業を進めていきます。毛穴等はレンダリングした際にどれくらいの強さで出るのかわからないため、レイヤーを分けて強度を調整できるようにします。
<C>アーマー部分のモデリングはコンセプトを基に徐々にディテールを追加しますが、このときもパーツ同士のコントラストを考えて作っていきます。

  • 『CGWORLD 210号(2月号)』表紙グラフィックメイキング
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<D、E>UV展開やテクスチャ作業のことも考え、全て四角形ポリゴンのみで構成します。

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MAKING03:テクスチャ
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■MAKING03:テクスチャ

  • 『CGWORLD 210号(2月号)』表紙グラフィックメイキング
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<A>テクスチャは手描きのみで作成しました。写真は不要な影やハイライトが入ってしまうので、使用していません。
<B>ArnoldのalSurfaceを使用するため、ラフネスマップはシンプルにします。

  • 『CGWORLD 210号(2月号)』表紙グラフィックメイキング
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<C>ディスプレイスメントマップでなるべくディテールを保持したいので、8Kで作りました。
<D>肌のテクスチャはZBrushのSprayなどは使わずに、下の血管を表現するためシンプルなブラシを使って、血管を描いていることを意識しながら8の字で描きます

『CGWORLD 210号(2月号)』表紙グラフィックメイキング

<E>ディフューズマップは赤をメインに彩度を落としたものやシフトしたものを、レイヤーを使って描いていきます。

『CGWORLD 210号(2月号)』表紙グラフィックメイキング

<F>アーマー部分のディフューズマップはベースのテクスチャに砂埃や傷などをレイヤーで重ねていき、それを基に他のテクスチャを作成します。主に作成するテクスチャはディフューズ、ラフネス、バンプのみです。必要な場合にIORマップや反射マップを作成します。個人制作時はMudboxで作っていたのですが、それをMARIにインポートして編集しました。IORマップについては、材質が3つ以上に分かれているところは 白黒のテクスチャとノードで表現するのが手間なので、MARIで16bit FloatのEXRで作成しました。Pixel Analyzerで見ればIORの値はすぐにわかるので、ファイルサイズは大きくなりますが、白黒のテクスチャとノードで調整するよりは簡単です。

■MAKING04:髪の毛

『CGWORLD 210号(2月号)』表紙グラフィックメイキング

<A>髪の毛にはXGenを使用しました。XGenはパラメータはほぼ全てSeExprというエクスプレッションで管理されており、ClampやCut、Noise Modifier等でマップと組み合わせていくことで、リアルな表現が可能です。

  • 『CGWORLD 210号(2月号)』表紙グラフィックメイキング
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<B>従来のMaya Hairではカーブの数が非常に多くなるのに対し、XGenではより少ないガイドで作成できます。
<C>髪の毛の長さが1つのDescription内で異なる場合、マップを新たに作成するか、あるいは$cLengthなどのグローバル変数を使用して調整します。

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MAKING05:レンダリング
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■MAKING05:レンダリング

『CGWORLD 210号(2月号)』表紙グラフィックメイキング

<A>肌のシェーダもalSurfaceのSSSを使っています。ディフューズの色もここで調整していきます。産毛はalHairを使用し、クローズアップで ディフューズやスペキュラの値を調整していきます。

  • 『CGWORLD 210号(2月号)』表紙グラフィックメイキング
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  • 『CGWORLD 210号(2月号)』表紙グラフィックメイキング
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<B> 肌のMicrostructureもディテールがよくわかるライティングを使って強度を調整していきます。SSSの調整はコントラストの強いライティングを使用し、光と影の境目を見ながら調整します。
<C〜E> HDRIを使用してレンダリング、質感調整をしていきます。大きく写るパーツや視線が集中するところなどは、コントラストを強めてディテールを強調したりする等、重要なところを優先的に調整していきます。

■MAKING06:HDRI

『CGWORLD 210号(2月号)』表紙グラフィックメイキング

HDRIには、街灯のある夜景を使用しました(ロゴスコープの亀村文彦氏に撮影依頼)。街灯は演色性の低いことが難点ですが、暗い場所でのねらったライティングが十二分に再現できました。

■MAKING07:コンポジット

  • 『CGWORLD 210号(2月号)』表紙グラフィックメイキング
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今回はライトごとにパスを出し、NUKEで合成しました。ライトは加法なので、パスごとに光の強度や色を変えることが可能です。ほかにもいくつかパスを出して合成しますが、このときに気をつけることは、どのように奥行き感を出すかということです。そのひとつにカメラから遠くなるほど明るく、近くなるほど暗くするという方法があります。これ以外にも様々な方法がありますが、それらを組み合わせて画像に立体感を加え、色味等を調整し完成です。

■参考資料
【The Wikihuman Project】
【Measurement-Based Synthesis of Facial Microgeometry】
【Arnold for Maya User Guide】
【alShaders】

TEXT_ 一丸敦生(ModelingCafe) 協力:亀村文彦氏(株式会社ロゴスコープ)




  • 『CGWORLD 210号(2月号)』表紙グラフィックメイキング
  • 【stuff】
    写真左から 松本龍一 一丸敦生 藤原 司 齋藤隼人(株式会社 ModelingCafe)

    【Information】
    ・株式会社 ModelingCafe
    モデリング、コンセプトデザインに特化したCG会社。専門会社ならではの分業体制により、ジャンルを問わずに制作できるのが強み。現在、スタッフ募集中!
    modelingcafe.co.jp


  • 『CGWORLD 210号(2月号)』表紙グラフィックメイキング
  • 【stuff】
    亀村文彦(株式会社ロゴスコープ)

    【Information】
    ・株式会社ロゴスコープ
    映像制作における撮影・編集・VFX・上映に関するワークフロー構築およびコンサルティングを行なっている。シーンリニアワークフローおよびBT.2020規格を土台としたワークフロー構築に取り組んでいる。
    www.facebook.com/Logoscope.Ltd