>   >  若手アーティスト祭田俊作氏による荒廃した世界で少女と怪獣の出会いを描く作品『Awe』
若手アーティスト祭田俊作氏による荒廃した世界で少女と怪獣の出会いを描く作品『Awe』

若手アーティスト祭田俊作氏による荒廃した世界で少女と怪獣の出会いを描く作品『Awe』

Topic 3 NUKEによるコンポジット

ライティングや細かなエフェクトにもこだわる

コンポジットの作業には、背景制作と同様にNUKEがメインツールとして使用されている。コンポジットでは煙っている感じや荒涼とした世界を表現するために、自分で撮影した素材や動画のフッテージ素材サイトのライブラリを何層にも重ねて、説得力のある画が作り上げられた。「コンポジットについては様々な映画を参考にしました。なるべく映画的なライティングになるように、ちょっとしたリムライトの追加や色収差の加工をするなど、一画面の中での明暗のバランスを調整するようにして、作品全体を通して手を加えています」と語る祭田氏。AEであれば別にプラグインを購入しないと実現できないような、最終的なルックを作成するためのエフェクトや機能がNUKEにはデフォルトで搭載されているため、スケジュールやコストが厳しい個人制作でも、非常に力を発揮するツールだという。なお、NUKEでコンポジットした後は、AEでカットを繋げたり、音楽を入れたりといった編集作業が行われている。

祭田氏は、NUKEの技術習得についてはほとんど独学で身につけており、Nukepedia(www.nukepedia.com)などの情報を積極的に参考にしたという。「個人制作では無駄なことができないため、映像の見えているところに注力して制作を進めてきました。個人制作だと何かあったときのリカバーが大変です。今回は周りにアドバイスをくれる方が多かったので、身近な人に助言をもらうことで完成までこぎ着けられました」と祭田氏。今後も作品づくりを続けながら海外を視野に入れて活動していきたいと抱負を語ってくれた。

コンポジットのながれ

大きな構造物を俯瞰で捉えたカットのブレイクダウン。構造物の巨大さを表現するため、フォーカスの調整や煙の濃度による遠近感の調整など、多くのレイヤーで構築されているカットだ



  • Mayaでモデリングされ、テクスチャがマッピングされた構造物のベース素材



  • ベース素材にマットペイントの背景を合成



  • さらに煙の実写素材を合成



  • ライティングなどを調整


カメラに近い部分のパイプをぼかすなど、巨大感や遠近感を強調するような加工を行い完成

NUKEとAfter Effectsの使い分け

本作では各カットのエフェクト制作から背景制作、コンポジットまでをNUKEを使って制作されている。NUKEはMayaなどの3DCGツールで制作したメッシュをそのまま読み込んでフッテージをして使えるところやノードによる映像処理の自由度の高さが、他のコンポジットツールに比べるとアドバンテージがある。3DCGツールによるレンダリングを経ることなく、コンポジットと同時に3DCGのレンダリングも兼ねてしまえる部分は、制作 効率を考えると非常にパフォーマンスが良い。これまでNUKEは大規模なスタジオ案件での使用が目立っていたが、個人制作においても非常に有効なツールであると再認識させられた。逆に通常カットのコンポジットで使用されることの多いAEは、本作ではカット編集からBGM付けといったコンポジットされたカットを1本の作品にまとめるオーサリングツールとして使用されている



  • NUKE作業画面



  • After Effects作業画面


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