2016年7月24日(日)から7月28日(木)までの5日間にわたり、アナハイムで「SIGGRAPH 2016」に参加してきた。その目的だが、ひとつにはモチベーションの向上があるが、それと同時にハリウッド映画のVFX制作現場におけるディファクト・スタンダートを肌で感じるためだ。世界最大のコンピューター・グラフィックスの間ファンレスであるSIGGRAPHは、最先端の情報を得るにはもってこいである。本レポートでは、エキシビションや各種セッションを通して感じた筆者が所属するトランジスタ・スタジオのメインツールのひとつであるHoudiniの浸透度合いと、これから期待すべきDCCツールを紹介していく。

TEXT&PHOTO_秋元純一、平井豊和(トランジスタ・スタジオ) / Jyunichi Akimoto、Toyokazu Hirai(Transistor Studio
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)



<1>SIGGRAPHでも目立った、Houdiniの存在感

筆者が所属するトランジスタ・スタジオでは、Houdiniをメインに据えたワークフローを構築している。Houdiniはハリウッド映画のVFX制作現場では定番DCCツールのひとつだが、日本では最近になってようやく導入が増えてきたように感じる。今回は、SIGGRAPHに参加することで、今後のプロダクション業務に活かせる有用なアイデア(ヒント)を見つけられればと思っていたのだが、取材を続けていくなかでHoudiniのプレゼンスが世界的に高まっていることを大いに実感した。

SideFX at SIGGRAPH 2016 from Go Procedural on Vimeo.

筆者が参加したセッションには必ず言ってもいいほど、Houdiniが登場しており、大手スタジオでの採用率の高さを垣間見ることができた。数年前にSIGGRAPHへ参加したときはMayaをメインツールに据えつつ、スタジオごとにインハウスツールでパイプラインに手を加えるというのが主流だったと思うのだが、それがHoudiniの柔軟性を活かす方向へと変化しつつあるように思えた。
例えば、7月25日(月)に行われたTalksセッション「Dancing Trees」である。ここでは、樹木の生成をテーマに各プロダクションごとの取り組みが紹介されたのだが、Moving Picture Company(以下MPC)による『Can't See the Jungle for the Trees』という、映画『ジャングル・ブック』の事例紹介では、HoudiniとFabric Engine(後述)を組み合わせた樹木のアセットに対するワークフローが披露された。MPCと言えば、先述したMayaをベースにインハウスツールで拡張するスタイルよいうイメージが筆者にはあったのだが、それゆえにHoudiniを取り入れたパイプラインの話を聞くことができ、驚いた次第だ。

また、7月26日(火)の夜に催された、SideFX主催の「Houdini Mixer at SIGGRAPH 2016」。ここでは大手プロダクションのユーザーやHoudiniの開発者たちが多く集まり、盛況であった(ユーザー向けイベントなので当然と言えばそうなのだが......)。オフレコの話が多く、ここでは紹介できないのが心苦しいが、今後のHoudiniの発展を期待せずにはいれない夜だったのはまちがいない。特に、今後のロードマップの話を聞けたのが有意義であった(その一部がSideFX公式サイトで確認できる)。

Houdini Roadmap Presentation | SIGGRAPH 2016 from Go Procedural on Vimeo.

Talksセッション「Angry Effects Salad」では、MPCやDisneyに加えて、日本からスクウェア・エニックスが今冬に発売予定の『FINAL FANTASY XV』の事例を紹介していた。ここで印象的だったのが、MPCとDisneyの事例である。

MPCによる「The Effects of "Jungle Book"」は、講演タイトルのとおり映画『ジャングル・ブック』におけるエフェクト表現の事例が披露された。

The Jungle Book Official Big Game Trailer

本作のエフェクト制作は、約900ショット分。それを55名のアーティストで対応することになったそうだ。物語の大半がジャングルという熱帯地方の原生林で繰り広げられるため、必然的に大量の樹木を3DCGベースで生成させることが求められた。先述のTalksセッション「Dancing Trees」で披露された情報によるとその物量は;

・1,200ショット
・250種類の樹木
・275種類の植物
・1,700のアセット
・30k2という広大な面積


......にも達したそうだ(ただただ圧倒的な物量である)。そんなジャングル内で描かれるエフェクトとして、ここではスコールのシーンがどのように制作されたのが披露された。

4〜5レイヤーで生成された雨の要素には、雨粒や跳ね返り、霧など様々なものがあったという。特に跳ね返りの要素などはHoudiniの特性を活かした手法がとられており、木に対してPoint Cloudを生成し、雨の方向から作成したVectorから導き出した跳ね返りを、葉、木陰、地面など様々なタイプに自動的に分類、そこへ雨粒から跳ね返りを自動生成するというアプローチがとられた。

また、ジャングルが火事になるというシーケンスでは、Fire Volume、Smoke Volume、Ember Particles、Preview GeometryをまとめたPackageを作成し、炎の大きさや勢いなど種類別にアセット化し、配置することでスムーズな作業ができるようにされていた。アセットは時間を長めにシミュレーションを演算しており、かなり自由に配置できるようになっていた模様。
このように、アセットで切り抜けられる要素を、上手くHoudiniを活用してコストを抑えようという創意工夫が窺えた。

逆にヒーローエフェクトでは、変わったコンビネーションが採用されていた。川とキャラクターのインタラクションを例に解説されていたのだが、メインとなる川のシミュレーションはScanline VFXが開発した流体シミュレーションツール「Flowline」を用いつつ、Whitewater(波頭)などのセカンダリ要素の作成にはHoudiniが用いるというユニークな手法が採られていたのである。残念ながら筆者はFlowlineの詳細を知らないため、このコンビネーションの理由に確証はもてないのだが、知人に聞いた話ではMPCでは2005年にFlowlineのライセンス供与を受けており、相応にノウハウを蓄積していたことに加え、Houdiniによる大規模でハイディティールな川のシミュレーションは難易度が高いと判断したようだ。ただ、SIGGRAPH 2016におけるMPCの各種講演内容からは今後はプライマリシミュレーションについてもHoudiniをより多用したパイプラインへと改めていくようにも感じた。

続くWalt Disney Animation Studios(以下Disney)による「Delicious Looking Ice Cream Effects with Non-Simukation Approaches」では、映画『ズートピア』におけるシミュレーションを使用しないエフェクトや、アセットを上手く活用したエフェクト表現が紹介された。

『ズートピア』MovieNEX 予告編

その中で印象的だったのが、カフェ店員のゾウが自分の鼻を使って(アイスクリームディッシャーさながらに)アイスクリームをすくうという表現のエフェクト制作である。そのワークフローは以下のとおり;

1.2D Drawover
2.Procedural Animation
3.Keyframe Animation
4.Texture、Sculpt


......まず最初にアニメーターが描いた2Dアニメーションを再現するというフローになっていたわけだ。
作画(アナログ)の時代から活躍を続ける同社では、2Dアニメーションの技法をしっかりと継承しており、Houdiniはそうしたワークフローに上手く順応しているように思えた。特に本講演のメインとなったアイスクリームの表現の場合、当初は様々なアプローチを考えていたようで、MetaballやVDBなどのVolumeベースのアプローチを試していたが、納得のいくクオリティを引き出せなかったそうだ(日本では問題なくOKが出そうな域にまで達していたと思うのだが、さすがはDisneyである)。
そこで、すくった際に丸まるようにスプーンに収まるアイスクリームに対して、『アナと雪の女王』制作時にエルサの袖が丸まりながら収まる表現のために開発したというRoll Deformerが使用された。
それに対してスカルプトの対象となる;

1.全体のノイズ
2.削れた際のクラック
3.縁
4.溶け出した箇所


......上記4種類のDisplacement Textureを用いることによって、シミュレーションを用いないアイスクリームエフェクトが完成した。

続いては、噴水のエフェクト。こちらもHoudiniを使い水のシミュレーションが作成されているが、『ズートピア』では、町中やクラブのシーケンスで多くの噴水が登場する。これらを低コストで作成するために、アセットを利用したフローが使われたという。

Houdiniアーティスト視点から、海外の大手スタジオが実践するモダンな制作手法とこれからの期待したいツールをチェック!〜SIGGRAPH 2016レポート<5>〜"

© Disney
『ズートピア』では街中にある噴水が多くのシーンに登場する


まず、ノズルから発生する水のシミュレーション長めに演算(発生量や形状なども数種類準備されていたようだ)。これらをタイミングをずらして配置することにより、噴水のパターンを作成するというものだ。この手法を用いることで2週間程度で全ての噴水エフェクトを完成させることができたという。
こうしたアプローチは、当社のような中小規模のプロダクションが多用するものだとばかり思っていたのだが、Disneyのような大手でもコストパフォーマンスの最大化を目指すという意味ではかわりないのだと良い意味で実感することができた。
そのほかにも芝生とクルマのインタラクションをHoudiniのWire Solverを用いたエフェクトワークなども披露されたが、Disneyではシミュレーションに頼らずに、プロシージャルなアプローチを目的にHoudiniを活用していることを力説していた。

そしてHoudini関連で最も印象的だったのが、7月26日(火)に開催された「A Tall Drink of Water」のセッションにおける、PixarによるLapping Water Effects in "Piper"であった。 これはPixarによるショートムービー『Piper』の波打ち際の事例だ。

"Piper" Clip - Finding Dory - In Theatres this Friday!

シギのひな鳥が波打ち際で餌捕りを四苦八苦しながら会得するというストーリーで、メインとなるシーンの大半に水表現が絡んでくる。その波打ち際をHoudiniで作成していたのだが、驚いたのがその非常にシンプルなシーン構造だ。
PixarやDisneyの事例を見て感じたことだが、両社のプレゼンテーションからは望み通りの形状を徹底的に追求しようという精神を随所に伝わってきた。『Piper』の場合は、キャラクターのプロポーションや動きは、フレーム単位で手書きの指示が加えられている。エフェクトにおいても、シミュレーションの結果のみに頼る事なく、あくまで手で作られる形状にもこだわりを見せていた。その波打ち際の場合は、Curveを用いて波打ち際の形状をデザインし、それに追従するようなシミュレーションを加え、さらに泡もあらかじめデザインされた形状を再現できるアセットを配置することによって、意図的な形状に近づくように工夫されていた。
整理をすると、

Step 1.プロシージャルアニメーション
Step 2.シミュレーション
Step 3.プロシージャルコントロール


......上記のように、シミュレーションはあくまで中間に行うオペレーション的位置付けにとどめられているわけだが、これは当社でも理想としているワークフローである。

プロシージャルとシミュレーションにはどちらも一長一短で、良いところを組み合わせることを理想としているようだ。また、波打ち際のジオメトリはGeometric Implicit Networks(GIN)を用いてキャッシュを取っていたという。海外の大手スタジオでも、限られた中での作業で、節約した分を別の部分へ注力することによってクオリティを高めているわけだが、そうしたシビアな状況の中で、自ずとHoudiniの利用機会が増えているのだと言えよう。

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SideFXのブース(撮影:CGWORLD編集部)

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<2>Fabric Engineの大きな可能性

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<2>Fabric Engineの大きな可能性

Fabric EngineとはFabric Softwareが開発する次世代のフレームワークだ。昨年バージョン2がリリースされたのだが、正直、日本では馴染みの薄い存在だと思う。しかしテクニカルアーティストやエンジニアの間では着実に知られつつある。そんなFabric Engineをひと言で説明するならば、次世代型のCGツール開発プラットフォームとでもいうべきだろうか。

What is Fabric Engine 2? from Fabric Engine on Vimeo.

先述したセッション「Dancing Trees」におけるMPCの『ジャングル・ブック』講演では、Fabric Engineを使ったフローが解説された。非常に大規模なジャングルを描くにあたり、大量の樹木を生成する必要があった次第だ。樹木自体の生成にはSpeedTreeが用いられていた。一連のデータの受け渡しはFBXやAlembicが使用されていたが、パイプラインにはFabric Engineを用いてMayaとやり取りをしていたようだ。

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SpeedTreeの『ジャングル・ブック』事例に関するブログ記事

Fabric Engineのフレームワークで開発を行なった結果、Mayaと比べても非常に高速だという結果を披露していた。このように海外の大手スタジオでも導入されはじめており、これまでの開発の概念を打ち崩す力を秘めていると感じた。特にビジュアルプログラミングという概念が重要なポイントだ(さすがはICEを生み出したSoftimageの開発者たちによるツールである)。
Fabric Engineでは、Canvasと呼ばれるインターフェイスで関数などを組み合わせてプログラミングするという、HoudiniにおけるVOPに近い考え方を有する。

Fabric Engine 2: Canvas Overview (Easy To Use) from Fabric Engine on Vimeo.

Houdiniにおいては、そのほかのDCCツールと連携を図るためにHoudini ENGINEがリリースされているが、そちらをより高速な拡張ツールとして連携するためにはFabric Engineに軍配が上がる。もちろんHoudini ENGINEはアーティストフレンドリーな仕様ではあるのだが、Fabric Engineはテクニカルディレクターが使用しやすい設計になっているように感じた。

Fabric for Maya | Fabric Engine 2 from Fabric Engine on Vimeo.

Fabric Engineなどの登場から見えてくる未来は、高速な開発フレームワークをプログラマー不在の小さなスタジオや、テクニカルに強いフリーランスでも自前のツールを開発しやすくなるということだ。次世代の開発環境とは、従来までは相応の規模や組織力が求められた時代から、より手軽にインハウスツールの開発が可能になる時代がそこまで迫って来ていると言えよう。そして、そこから得られる成果は、MPCの創り出した大規模かつハイクオリティなジャングルの表現を見れば一目瞭然である。これまで小規模スタジオにとってコスト面でネックだった自社開発が、テクニカルディレクターとアーティストが密になって創り出せるとしたら、Fabric Engineに対して期待を膨らませざるを得ない。

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<3>そのほかのトランジスタ・スタジオが注目したDCCツール

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<3>そのほかのトランジスタ・スタジオが注目したDCCツール

ここからはExhibitionの展示から、筆者たちが注目したDCCツールをいくつかご紹介したい。まずはSideFXだ。同社のブースは連日盛況で、常に人があふれていた。ここだけを切り取っても、Houdiniの人気ぶりを大いに感じることができた。

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ユーザー事例やチュートリアルなども毎日開催されており、日本勢からは十十がリードVFXを務めた、きゃりーぱみゅぱみゅ『最&高』MVがCrowdの事例として紹介されていた

続いては、レンダラ。CG・VFX制作においてレンダリングは必須の工程といっても過言ではないが、それゆえにコストの増大に直結するレンダリング時間を、いかに削減していくか。そんな希望を叶えてくれそうな2つのレンダラを紹介したい。

ひとつ目は、Redshift『オーバーウォッチ』のシネマティクスやYouTubeで公開されている短編シリーズの制作に導入されたことでも知られる、GPUレンダリングに特化したレンダラだ。超高速なプレビューが可能で、美しいレンダリング結果を得られるという。

  • Houdiniアーティスト視点から、海外の大手スタジオが実践するモダンな制作手法とこれからの期待したいツールをチェック!〜SIGGRAPH 2016レポート<5>〜"
  • Redshift公式サイト。SIGGRAPH 2016におけるRedshiftに関する情報は同社のブログ記事にまとめられている


・Photon Mapping GI Engine
・Brute Force GI Engine
・Irradiance Cache GI Engine
・ Irradiance Point Cloud GI Engine


......上記のように、V-Rayなど業界標準のレンダラと遜色の無いエンジンを搭載しており、十分にプロダクションクオリティを実現できる。
また1ライセンスあたりの年間利用料が500〜600米ドルと、比較的安価というのも魅力的だ。多くのDCCツールに対応予定であり、もちろんHoudiniにも対応予定である。GPUベースのレンダリングインフラの整備に初期投資は大きくなってしまう印象だが、単純に10倍速いレンダリング演算結果が得られるのであれば、その価値はあるのではないだろうか。特に日本ではレンダリングかける時間も予算も少ないのが実情だ。小規模プロダクションには要注目必見のレンダラだと思う。

2つ目は、Octane Render。OTOYが開発する、CUDAを利用したGPU特化のレンダラだ。比較的歴史あり、さらにここ最近注目のレンダラだ。OTOYのブースにはLightStageが設置されており、非常に目立っていた(同社の勢いを感じた)。

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Octane Renderは、先述のRedshiftよりもさらに安価(シングルライセンスで399米ドル)であり、すでに多くの実績もつことも魅力だ。今回は大きなトピックはなかったが、サポート面での安心感があり、導入しやすいと感じた

上記2つのレンダラはどちらもGPUを使用すると言う共通点がある。これまでの時間をかければ綺麗になる、という常識を覆す画期的なものだが、勿論これまでもそういったレンダラ存在した。上記2つは従来のリアルタイムレンダラっぽさがない、フィジカルで美しい結果を得ることができるように感じた。

そのほかにもClarisse(クラリス)やKeyShotなどの高速かつ美麗なレンダリング機能に定評あるツールのブースもにぎわっており、これからは高速レンダラに非常に期待がかかる。

Houdiniアーティスト視点から、海外の大手スタジオが実践するモダンな制作手法とこれからの期待したいツールをチェック!〜SIGGRAPH 2016レポート<5>〜"

ClarisseのベンダーであるIsotropixのブース

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KeyShotのブース

さらにレンダリング処理を補佐するツールでも興味深いものを見つけた。InnoBright Technologiesの「Altus」で、これはレンダリング画像のデノイザーだ。
レンダリング結果で最も難儀なのがノイズの除去だ。このツールはその悩みを高品質に解決してくれるという。レンダラを問わず利用できるというのも魅力だろう。

Altus_1_500_Video_GUI from Raghu Kopalle on Vimeo.

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InnoBright Technologiesのブース。デノイザーのAtlusは、まだ筆者も試せていないツールなので、使用感が不明だが、フィジカルレンダリングにはノイズが付き物で、消すまでには長時間の演算が必要となる。それを画像に対して後処理できるのであれば、大いに期待したい

今回のSIGGRAPH滞在を通して感じたことは、新しいCG新時代の幕開けだ。VRビレッジなどに見られるリアルタイムやインタラクティブなどを見てもそうだが、RedshiftやOctane Renderなどみ見られる高速プレビューやGPUアクセラレーションのレンダラ。これらはどれもリアルタイム性を秘めている。

また、HoudiniやFabric Engineに見られるプロシージャルなワークフローも大きな存在感を示していた。数年前までは大規模なインフラを有するプロダクションのセッションに圧巻されて、日本ではあまりに遠い世界に思えていたが、ここに来てようやく海外のプロダクションでも低コスト重視のワークフローが重要視されるようになっていることがわかった。これは日本にとっても非常に参考になるものだ。改めて高速(短納期)&高品質、そしてさらなる低コスト化が、CG・VFX制作の現場でも求められる時代なのだと痛感した。言い換えれば、今まで以上に最新技術や海外の事例に関する情報収集、そしてそこから得た知見を実制作に反映することが重要になってきているわけだが、SIGGRAPHへの参加はその有効手段の最たるものと言えるだろう。

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