>   >  日本映画は輸出する環境が整っていない。ワンダースタンディングジャパンが実践する、ハリウッドとの仕事の進め方|CGWORLD 2016 クリエイティブカンファレンス」個別レポート<4>
日本映画は輸出する環境が整っていない。ワンダースタンディングジャパンが実践する、ハリウッドとの仕事の進め方|CGWORLD 2016 クリエイティブカンファレンス」個別レポート<4>

日本映画は輸出する環境が整っていない。ワンダースタンディングジャパンが実践する、ハリウッドとの仕事の進め方|CGWORLD 2016 クリエイティブカンファレンス」個別レポート<4>

<2>今、私達がハリウッドと手を組む理由


現在、世界の映画産業はアメリカと日本と中国が微妙な関係でつながっているといえる。映画市場規模ではアメリカが1兆3000億円。中国が9000億円に届こうとしているところ。対して日本は2000億円前後。昨今メディアで喧伝されている通り、ハリウッドは中国映画産業への依存が高まっている。そして日本の製作委員会方式への批判も高まっている。この2点が長渕氏の考える「ハリウッドと手を組まなくてはいけない理由」だ。

中国の映画産業規模は目覚ましい発展を見せている。2014年は5000億円代半ばだった市場は、2015年に8000億円を超えている。これは異常とも言える成長スピードだ。さらに中国のコンテンツビジネスの好況を示すものとして2016年1月の大連万達グループ(中国の不動産コングロマリット)によるレジェンダリー・ピクチャーズの買収(約3500億円)を挙げた。レジェンダリーは「良くも悪くもハリウッドを象徴したビジネス第一義の会社」(長渕氏)。この買収が示すのは、中国の勢いが一過性のものではなく、映画産業の軸が中国に移りつつあるのかもしれないとの考えを示した。

エンターテイメント産業は人口に依拠するため、日本は有利な状況に置かれていない。だからこそ、早急に対処しないといけないというのが長渕氏のプロデューサーとしての考えだ。現在の日本の映画ビジネスの主流となっている製作委員会には問題もはらんでいる。なかでも大きなものは、委員会は任意組合として構成されているため、海外がリメイク権を買おうと思っても権利の所有者が分からない(法律上はいない)ため、各出資会社をすべて回って権利処理を行なう必要があることだ。これには莫大な手間と労力、資金がかかり、スピード感のあるエンターテイメントビジネスができない。つまり「日本の映画は輸出する環境が整っていない」(長渕氏)のである。それを変える方法はひとつ。最初から海外展開を予測した権利の整理を行なうことだ長渕氏は言う。

それよりも映像化されていないコンテンツを見つけ、海外に売り込む方がビジネスとしては早いというのが長渕氏の判断だ。その例として『オール・ユー・ニード・イズ・キル』を挙げる。桜坂洋によるライトノベルを原作(発表は2004年)とし、2014年にトム・クルーズ主演で公開されたSF映画だ。「ビジネス的な成功もさることながら、あれだけ良い作品に仕上げた裏方のスタッフの努力を知り、あれに続けという思い」だと絶賛した。


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<3>ハリウッド商業主義の中で見つけた答えとは

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