>   >  日本映画は輸出する環境が整っていない。ワンダースタンディングジャパンが実践する、ハリウッドとの仕事の進め方|CGWORLD 2016 クリエイティブカンファレンス」個別レポート<4>
日本映画は輸出する環境が整っていない。ワンダースタンディングジャパンが実践する、ハリウッドとの仕事の進め方|CGWORLD 2016 クリエイティブカンファレンス」個別レポート<4>

日本映画は輸出する環境が整っていない。ワンダースタンディングジャパンが実践する、ハリウッドとの仕事の進め方|CGWORLD 2016 クリエイティブカンファレンス」個別レポート<4>

<4>日本の映像業界に与える影響とは


日本のコンテンツを海外に配給する上で重要なのが、会社や作品バジェットの規模感を見極めた上でパートナーシップをセットアップしていく人間なのではないだろうか。そうすることで海外にもっと打って出ていく人間が増えるだろうと長渕氏は見込んでいる。映画産業において、タレントであるアメリカ、資本である中国というなかで日本はコンテンツであるという位置を守り通すことがエンターテイメントビジネスで今後生き残る術であると断言した。

最後にゲストとして、宮部みゆき、京極夏彦、大沢在昌のエージェントを担当するラクーンエージェンシー代表の中田一正氏が登壇した。中田氏は作家マネジメントとしての立場からプロデューサーに求めるものはまず謙虚さ・真面目さだという。また、多くの企画の持ち込みがある中で成否を見極めるのはプロデューサーの熱意とビジョンにあり、それを口頭で上手く伝えられるコミュニケーション能力のある人物が求められているとも述べた。「今回の企画は個の力で突破しようとしいてるところに非常に熱いものを感じました。どこまで行けるかわからないですが、形になることを楽しみにしています」(中田氏)。

最後に長渕氏は以下のように述べ、講演を締めくくった。「日本人にしか持っていない感性を必要とした作品はたくさんあって、それは日本でつくるべきだと思っています。一番大切なことはその作品の本質を見抜いて、日本/海外のどちらで制作したほうが良い作品になるのかを判断してその棲み分けをしっかりと行うことが一番大事なことなのではと思います。本来映画の最も大切な部分はストーリーを語ることです。それをいつも忘れないように映画づくりをしていくのがコンテンツのブランド維持に繋がるのではないかと思っています。プロデューサーというのは負のものをプラスに変えていくことこそがゴールだと思います。それが10年かかろうと、私たちの行なっている取り組みで少しでも日本の映画産業の未来を変えていけたら嬉しく思います」。

日本には一流のクリエイターはいてもそれに見合うだけのプロデューサーが不足しているとはもう数十年規模で言われてきたこと。そうした中でもこの10年は徐々にその萌芽の兆しが出始めている。今回の長渕氏もその一人だといえる。彼の実感のこもった熱い言葉は会場に来ていた学生を含めたさらなる未来のプロデューサーにも響いたのではないだろうか。



  • 「CGWORLD 2016 クリエイティブカンファレンス」

    参加費:無料 ※事前登録制
    開催日:2016年11月6日(日)
    場所:文京学院大学 本郷キャンパス(東京都文京区向丘1-19-1)
    主催:ボーンデジタル、文京学院大学 コンテンツ多言語知財化センター
    協力:文京学院大学、ASIAGRAPH CGアートギャラリー
    cgworld.jp/special/cgwcc2016

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