>   >  プレイヤーの視線をビジュアルで間接的に誘導し、ゲームプレイを円滑に進めるためのテクニック ~「GCAP 2016」講演レポート〜
プレイヤーの視線をビジュアルで間接的に誘導し、ゲームプレイを円滑に進めるためのテクニック ~「GCAP 2016」講演レポート〜

プレイヤーの視線をビジュアルで間接的に誘導し、ゲームプレイを円滑に進めるためのテクニック ~「GCAP 2016」講演レポート〜

ゲームエンジンやデジタル流通の普及などで、全世界的にインディ(独立系)ゲーム開発者が急増中だ。これにともないゲーム開発者会議も各地で増加。中でもオーストラリア第二の都市、メルボルンで毎年11月に開催される「GCAP(Game Connect Asia Pacific )」は、ベテランと若手の知見が巧みにミックスされる、ユニークかつハイレベルな内容が特徴的だ。今年もオーストラリアとニュージーランドの開発者を中心に約500名が集まり、様々な議論が繰り広げられた。本稿ではこのうち11月2日(水)に開催されたセッション「Where Art Meets Gameplay - Level and Environment Design in 'The Eyes of Ara'」をレポートする。

TEXT & PHOTO_小野憲史
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)

まずは、今年の「GCAP 2016」について。500名という規模は日本のCEDECの1/10と、世界的にみてもそれほど大きなものではない。しかし、オーストラリアはリーマンショックで大手外資系スタジオが撤退するまで高い開発力を誇っていた。そして、ここで培われたノウハウが現在、インディゲームスタジオに流れているのだ。そのため今年のGCAPも8トラックが並行して進むほどの充実ぶりであった。

プレイヤーの視線をビジュアルで間接的に誘導し、ゲームプレイを円滑に進めるためのテクニック 〜GCAP2016講演レポート〜

 

セッション「Where Art Meets Gameplay - Level and Environment Design in 'The Eyes of Ara'」の講師を務めたのは、モバイルゲームThe Eyes Of Ara(EoA)』のディレクター兼シニア3D背景アーティスト兼レベルデザイナーを務めたベン・ドロステ/Ben Droste氏だ。
本作はブリスベンにある100 Stones Interactiveで開発・配信されており、ドロステ氏は創業者にあたる。家庭用ゲームで『スター・ウォーズ』シリーズのゲーム開発をはじめ、10年以上の経験を持つベテランだけに、講演内容も豊富な経験に裏打ちされた、実践的な内容だった。

プレイヤーの視線をビジュアルで間接的に誘導し、ゲームプレイを円滑に進めるためのテクニック 〜GCAP2016講演レポート〜

ベン・ドロステ/Ben Droste氏(100 Stones Interactive創業者)。『The Eyes Of Ara(EoA)』では、ディレクター兼シニア3D背景アーティスト兼レベルデザイナーと、一人三役を務めた

The Eyes of Ara - Launch Date Trailer

『EoA』は、中世ファンタジー風の古城を舞台としたポイント&クリック型のアドベンチャーゲームだ。城は様々なしかけに満ちており、プレイヤーは探索者となってパズルを解きながらゲームを進めていく。その過程で城に秘められた謎や、いわくがあきらかになっていくという仕組みだ。ゲームはプレイヤーの一人称視点で進められ、メッセージを極力廃するなど、古城探索の雰囲気を壊さないための配慮がなされている。

大前提としてゲームのグラフィックにはある種の「記号性」が求められる。プレイヤーはゲーム内世界で特定のアイテムやしかけしか操作できないからだ。一方でグラフィックが写実的になればなるほど、操作できる箇所が背景に埋没してしまい、プレイヤーは触れる箇所と背景の区別がつきにくくなる。といはいえ、明らかにあからさまな表現も興ざめだ。そのため開発者にとって、いかに記号性と写実性のバランスを取るかが大きな課題となる。

ドロステ氏が「ディレクター」「背景アーティスト」「レベルデザイナー」を兼務しているのも、ひとつにはこの理由からだ。インディならではの少人数開発という事情もあるが、本作のようなゲームでは「ゲーム内世界に何らかのアクションを行う」ことが操作の中心となる。そのためには背景グラフィックとレベルデザイン(ステージデザインなどを通してゲーム体験全体をデザインすること)が高度に融合することが不可欠だ。

プレイヤーの視線をビジュアルで間接的に誘導し、ゲームプレイを円滑に進めるためのテクニック 〜GCAP2016講演レポート〜

 

ドロステ氏は冒頭「プレイヤーはパズルを解きたいのであって、パズルがどこに隠されているか探したいわけではない」と語った。これは多くの開発者にとって突き刺さるメッセージだろう。その上でドロステ氏は「プレイヤーがパズルを解き、古城を探索することを通して、自分だけのストーリーを体感できるようにする」ことが重要だという。そのためには情報を饒舌になりすぎずに、的確にプレイヤーに伝えていくことが必要になる。

以下、スライドにあわせてそのためのテクニックを簡単に紹介していこう。

(1)三分割法の利用

プレイヤーの視線をビジュアルで間接的に誘導し、ゲームプレイを円滑に進めるためのテクニック 〜GCAP2016講演レポート〜

プレイヤーの視線をビジュアルで間接的に誘導し、ゲームプレイを円滑に進めるためのテクニック 〜GCAP2016講演レポート〜

画面内で重要なアイテムを三分割法(画面を縦横それぞれ1/3ずつに区切って分割し、その分割線の交点に被写体を置くポイントを定めるやり方)の交点に配置する

(2)視線の誘導

プレイヤーの視線をビジュアルで間接的に誘導し、ゲームプレイを円滑に進めるためのテクニック 〜GCAP2016講演レポート〜

プレイヤーの視線をビジュアルで間接的に誘導し、ゲームプレイを円滑に進めるためのテクニック 〜GCAP2016講演レポート〜

プレイヤーの視線は背景デザインによって誘導される。手がかりの存在を誘導するように背景をデザインする

(3)対数螺旋の活用

プレイヤーの視線をビジュアルで間接的に誘導し、ゲームプレイを円滑に進めるためのテクニック 〜GCAP2016講演レポート〜

プレイヤーの視線を画面全体に行き渡らせ、最後に目標物に誘導させるには、対数螺旋をベースにした構図が効果的だという

(4)フレーム

プレイヤーの視線をビジュアルで間接的に誘導し、ゲームプレイを円滑に進めるためのテクニック 〜GCAP2016講演レポート〜

操作可能なアイテム=パズルを解く鍵を目立たせる構図にする

(5)表面のちがいを強調

プレイヤーの視線をビジュアルで間接的に誘導し、ゲームプレイを円滑に進めるためのテクニック 〜GCAP2016講演レポート〜

異なる色味・材質・外見上の特徴を用いて、移動方向を自然に示す

(6)ライティング

プレイヤーの視線をビジュアルで間接的に誘導し、ゲームプレイを円滑に進めるためのテクニック 〜GCAP2016講演レポート〜

人間の視線はコントラストによって誘導される。スポットライトやハイライトは手がかりを自然に浮き上がらせるための有効な手段になる

プレイヤーの視線をビジュアルで間接的に誘導し、ゲームプレイを円滑に進めるためのテクニック 〜GCAP2016講演レポート〜

右の通路はダミーで、左の通路が正解であることを自然に示している

プレイヤーの視線をビジュアルで間接的に誘導し、ゲームプレイを円滑に進めるためのテクニック 〜GCAP2016講演レポート〜

ライティングはレベルデザインにおける有効な手段で、背景アーティストだけでなく、レベルデザイナーによっても指示されるべき

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(7)カラーリング

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