>   >  『SEKIRO : SHADOWS DIE TWICE』、『フレームアームズ・ガール』フィギュアなど、ZBrushの最新機能と事例が集結〜ZBrush Merge 2019(1)
『SEKIRO : SHADOWS DIE TWICE』、『フレームアームズ・ガール』フィギュアなど、ZBrushの最新機能と事例が集結〜ZBrush Merge 2019(1)

『SEKIRO : SHADOWS DIE TWICE』、『フレームアームズ・ガール』フィギュアなど、ZBrushの最新機能と事例が集結〜ZBrush Merge 2019(1)

<3>『フレームアームズ・ガール』 スティレット -SESSION GO!!- フィギュア制作過程の紹介

午前中の最後の登壇は、フィギュアメーカーのコトブキヤから、企画本部開発グループ原型チーム所属のツチヤトモミ氏による、『フレームアームズ・ガール』の登場キャラクター・スティレットのデジタル造形を基に、ZBrushを使ったフィギュア制作過程が紹介された。会場には作成されたフィギュアの彩色前の現物も展示され、注目を集めていた。プレゼンテーションでは、『フレームアームズ・ガール』の企画内容から、フィギュア販売のながれ、フィギュア原型制作のワークフローなど、ZBrushによる造形の実演を交えながら行われた。

『フレームアームズ・ガール』のシリーズ概要

プレゼンテーションは、まずコトブキヤの概要やビジネスモデルの紹介から始まり、コトブキヤのオリジナルロボットコンテンツである『フレームアームズ』の概要が紹介された。今回紹介された『フレームアームズ・ガール』とは、コトブキヤ オリジナルロボットコンテンツ「フレームアームズ」の各機体を"美少女化"したスピンアウトシリーズで、アニメ化もされている。制作のながれとしては、フィギュアの企画が立ち上がったところで、造形担当がフィギュアのコンセプトやキャラクターデザインの解釈や読み込み、必要な資料収集を行なった後に、素体の作成、衣装モデルの作成、ラフモデルを3Dプリントして形状を検証し、さらにつくり込みを行いながら顔などの細かい要素をディテールアップしながら修正をくり返し、監修を受けるというかたちだ。

フィギュア造形の大まかなながれが紹介された。素体の造形から始まり、髪の毛や衣装のつくり込みからエフェクト造形、監修を経てさらなるディテールのつくり込みといった手順が踏まれている

プレゼンテーションでは、スティレットの各工程での造形データの状態を紹介しながら、各工程での造形ポイントが解説されていった。フィギュアをつくるための考え方としては、まずコンセプトの確認が大事だという。

例えばプラモデル用の造形とフィギュア用の造形ではコンセプトがまったくちがうのでつくり方も変わってくる。プラモデル用の造形では、関節に可動部分があるため、可動のしくみと造形の両立が求められるという。また、武器のパーツを組み替えたりするようなカスタマイズ性も求められるため、シリーズで統一された仕様に則った造形が必要になる。さらに、プラモデルの場合素材のちがいによる金型の制約なども考慮しながら造形しなければならないという。

フィギュアの場合は、固定ポーズならではの表現が求められる。プラモデルに比べてサイズが大きくなるため、ディテールのつくり込みや、飾って見て楽しむという部分に注力しながらの造形となる。「『フレームアームズ・ガール』のキャラクターは装甲パーツのように普通の女の子のデザインと異なる部分があるので、制作前に特徴をしっかり読み込んでおく必要があります。設定や作家さんのインタビューを通して、そのキャラクターらしさがどこにあるのかをよく分析し、造形に盛り込みたい要素を考えていきます。衣装の質感に関しては設定がないことが多いので、デザイン画や実際の素材として近しいものをイメージして制作していくことも必要」と造形作業に入る前段階でのポイントをツチヤ氏は話す。

同フィギュアのコンセプトを示した図。バトル前の勝ち気な表情、肌部分の表現、ツインテールのながれ、躍動感、衣装のシワの表現に注力したフィギュアと記されている

キャラクターデザインを読み込み、設定画はもとより、イラストやアニメなどを参照しながら、キャラクターの性格付けといった深い設定まで検証しながらフィギュアとしての造形デザインを考えていく

造形の作業は社内ディレクターのチェックを受けながら進められていくが、プレゼンテーションでは、実際にディレクターに提出したデータに対して、どのようなチェックバックがあったのかなど、具体的な資料が提示しながら解説が行われ、フィギュアの原型造形などを目指している人には、フィギュアを造形する際に良く問題となるポイントへの理解が深まったと思う。

ディレクターによる実際のチェック内容を書き留めたもの

実演のパートでは、衣装と髪の毛のパーツをベースにフィギュア造形ならではの、ZBrushによる造形テクニックが披露された。衣装の制作は、極力ローポリゴンで作成し、厚みを付けつつ形を整えていく手順を採ったという。フィギュアの場合、強度の都合上厚みの制約がある。基本的には1~2mm以上の厚みを確保しているが、縁が分厚いと布っぽく見えないので、例外的に0.7mmほどにしているそうだ。衣装の角の部分にはCreaseを適用、オプションのCreaseLVの数値で角の丸みを調整し布らしさを出しているという。厚み付けにはZModelerのQMeshを使用している。

厚みのない状態で作成したスカートのオブジェクトに、ZModelerの押し出しを使って厚みを付ける

一様に厚みを付けただけでは布感が出ないので、クリースで角を落としたり、部分的に薄くするなどして布感を出している

衣装のメッシュはかなりのローポリゴンで作成されているが、ローポリゴンでベースを作成しておくと、厚みを調整しやすくなりそれだけでも布っぽい印象になると、ツチヤ氏は、フィギュアの衣装制作でのポイントを話す。この他にも髪の毛のつくり方も紹介された。髪の毛のベースもローポリゴンで作成している。DynaMeshで作成してしまうと、髪の毛の房と房の谷部分を処理する際にトポロジーが乱れて編集しにくくなるため、デザイン的に問題ないレベルまでローポリゴンの状態で作業を進めているという。

髪の毛のオブジェクトは図のようなローポリゴンの状態から作成していったという



  • 顔のトポロジーのアップ。やはりかなりローポリゴンで作成されているのがわかる



  • ある程度モデリングできたら、シルエットを確認していく

ほぼモデリングが終了した状態。ディレクターの細かいチェックを受けながら、ディテールを詰めていく

プレゼンテーションの最後には、8月に発売されるフィギュア『フレームアームズ・ガール スティレット -SESSION GO!!-』の予約受付と、6月に劇場公開される『フレームアームズ・ガール~きゃっきゃうふふなワンダーランド~』の告知が行われた。

彩色された『フレームアームズ・ガール スティレット -SESSION GO!!-』。2019年8月発売予定。予約受付中
© KOTOBUKIYA / FAGirl Project

ZBrushMerge 2019 - Kotobukiya プレゼンテーション

>>後篇は5月14日(火)公開予定



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