The Foundry 独占インタビュー
KATANA
次に、元々 Sony Pictures Imageworks(以降、SPI と表記)で開発され、ライティングとルックデベロップメント(以下、ルックデヴ)を行うツール KATANA について、同じくサイモン・ロビンソン氏に話を伺った。(以下、サイモン・ロビンソン氏)
KATANA は、これまでにも『2012』、『アリス・イン・ワンダーランド』、『グリーン・ランタン』、『スマーフ』等の映画で使用されてきました。我々 The Foundry と SPI は、2009 年 11 月より共同で商品化の開発を始め、今日に至っています。現在はαバージョンの段階ですが、2011 年の5月にサイトライセンスとしては初めて Digital Domain が KATANA のβ版を導入したことが正式に発表されています。そして、2011 年の年末に v1.0 が正式にリリースされる予定です(※2011 年 10 月にバージョン 1.0 をリリース、最新バージョンは 1.0v3)。
KATANA は、VFX スタジオにおけるオーガナイズされたパイプライン環境の中で、ライティングやルックデヴを進めていく際に強力なツールです。特にアセットベースのワークフローで威力を発揮し、巨大なライティングシーンのアセットを読み込み、ライティング&ルックデブを柔軟に行うことができます。例えば、Maya で制作されたモデリング、アニメーション、カメラ、エフェクト等のアセット、そして予め設定されたシェーダー等を KATANA に読み込み、ライティング及びルックデヴを行います。つまり KATANA の中でシェーダを組むのではなく、KANATA に完成したシェーダを読み込んでパラメーターを調整していくのです。ルックデヴが完了した後は、各ショットにルックデヴを読み込み、パラメーターを調整しながらショットワークに入ります。そして RenderMan、Arnold 等のレンダラを立ち上げ、レンダリングを行うというワークフローになっています。
KATANA は生みの親である SPI での現在に至るまでの使用実績や、今回 Digital Domain に採用されたことで大規模な VFX スタジオでの浸透が期待されています。また同時に、小規模なスタジオやプロジェクトでも活用されていくことでしょう。
話は変わりますが、私は先日、日本の販売代理店の方の案内で東京のいくつかの VFX スタジオを訪問するチャンスがありました。その際、日本の VFX スタジオが制作する映像のクオリティの高さに驚くと共に、制作スタイルやワークフローの違いについて学ぶことができ、大変エキサイティングな経験となりました。
MARI
続いて、ジャック・グリースリー氏に MARI の名前の由来から「NUKE <> MARI BRIDGE」という NUKE との連携などについて伺った。(以下、ジャック・グリースリー氏)
MARI は元々 Weta Digital で開発されたデジタル 3D ペイントツールで、ハリウッドの多くの VFX スタジオに採用されています。OS は Windows と Linux の両方をサポート。Weta Digital においては、映画『第9地区』、『ラブリーボーン』、そして『アバター』等で、大変複雑なディテールを持つシーンのルックデヴで威力を発揮しました。ちなみに「MARI」という名前の語源は、「美しい」「有効性」という意味を持つスワヒリ語の「Maridadi」という言葉から派生しています。
今回は「NUKE <> MARI BRIDGE」と題して、NUKE と MARI のスピーディーな連携を紹介しましょう。
「NUKE <> MARI BRIDGE」とは、NUKE の 3D シーン内でジオメトリにテクスチャマッピングを施し、そのデータを MARI へ「BRIDGE」するやりとりのことです。MARI 内では、自由に視点を動かしながらジオメトリにマッピングされたテクスチャを直接ペイント修正することができます。その後、再び NUKE へ「BRIDGE」し、修正したデータを使ってすぐにコンポジット作業を進められるのです。これによって、従来のように Photoshop や他のペイントソフトウェアを介してテクスチャを修正するよりも格段に早く、作業も効率的になりました。テクスチャの解像度は縦横 32K までをサポート。様々なペイントブラシやコピーツールも用意されています。
現在は 1.3v2 がリリースされていますが、2011 年末には 1.4 をリリースする予定です(※2011 年 12 月にバージョン 1.4v2 をリリース)。1.4 では、Photoshop の PSD、開発者からの要望が多く寄せられていたC言語 API(C API )、そして OpenColorIO のサポートを予定しています。来年発表予定の MARI v2.0 の構想の中には、Photoshop のようなレイヤー機能や、Full HDRI 32bit、Open EXR v2.0、前述の Alembic へのサポートなどが含まれています。この「NUKE <> MARI BRIDGE」は、作業スピードが重要視される CM プロジェクト等で力を発揮することでしょう。
取材を終えて
ここハリウッドでは、NUKE は完全に「業界標準ツール」として定着している。1993 年に Digital Domain で産声を上げ、ハリウッドのハイエンド VFX 制作に対応すべく、ノードベースによるアプローチが採られた NUKE。その後 3D スペースでのコンポジットや S3D への対応など、ハリウッドの最前線での厳しいニーズに応えながら開発が進められてきたことは、NUKE の最大の強みだろう。The Foundry 社が 2007 年に NUKE の販売権を取得し、発売開始から約4年余りが経過したが、ここ数年の NUKE ユーザー人口の増加には目を見張るものがある。今後 MARI との BRIDGE、そして新しい KATANA の登場により、どのような素晴らしい作品が生み出されていくのか、今からとても楽しみである。


