映画『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』公開記念 Weta Digital 潜入レポート
全編パフォーマンス・キャプチャを用いて制作された、話題のフルデジタル 3D アニメーション 『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密(以下、タンタンの冒険)』 は、ベルギーのアーティスト、エルジェの有名な 『タンタンの冒険旅行』 シリーズを映画化した作品だ。原作の長年のファンだという スティーヴン・スピルバーグ が監督を務め、ピーター・ジャクソン がプロデュースを手掛けただけあって、「これぞハリウッド・エンターテインメント!」と言える見事なファミリー・アドベンチャーに仕上がっている。
今年7月下旬、ニュージーランド ウェリントンにある Weta Digital を訪ね、『タンタンの冒険』がどのようにして映像化されているのか、ロサンゼルスからビデオ電話で参加したスピルバーグ監督をはじめ、実際に各施設を紹介してくれたピーター・ジャクソン、そしてVFX スーパーバイザーのジョー・レッテリに話を聞いた。その模様をお伝えしよう。
『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』 © 2011 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
12月1日(木)より、TOHO シネマズ スカラ座ほか全国ロードショー!
21世紀最強タッグで挑むフルデジタル 3D アニメーション
今回『タンタンの冒険』のアニメーション制作を担当したのは、映画 『アバター』(2009) や 『ロード・オブ・ザ・リング』 シリーズ(2001〜2003)を手掛けてきた、世界でも屈指の VFX 工房 Weta Digital だ。ジャクソンが Weta Digital の設立者の1人であるというだけでなく、映画 『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』 でパフォーマンス・キャプチャを駆使し、見事に猿の内面の芝居を描くことに成功した手腕を見れば、今この分野でトップを走っている Weta Digital の起用は当然だと言える。
© 2011 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
さて、時計の針を戻してみよう。スティーヴン・スピルバーグとピーター・ジャクソンという、映画ファンにとって夢のような組み合わせは1本の電話から始まった。2005年、映画『キング・コング』 を撮影中のジャクソンの元に、『タンタンの冒険』の実写映画化を考えていたスピルバーグが「タンタンの愛犬スノーウィを CG で描けないか?」と打診してきたのだ。そこでジャクソンは自らハドック船長を演じ、その映像に 3DCG のスノーウィを合成してみせた。しかしそのテスト結果を見たスピルバーグは、『タンタンの冒険』映画化は実写では難しいという判断に達したそうだ。
その後、さらに一連のやり取りを通じて、ジャクソンが大の『タンタン』ファンであることを知ったスピルバーグは、彼に本作のパートナーになることを提案したという。つまり、『タンタンの冒険』をパフォーマンス・キャプチャを用いて映像化させるという決断に至った背景には、ジャクソンがスピルバーグに多大な影響を与えたことがあったわけだ。
© 2011 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
パラマウント公式のメイキング動画。途中に登場するのが、2005年頃にスピルバーグから相談を受けたジャクソン(当時は『キング・コング』撮影中だったそうだ)がスタジオプレゼン用に約2ヶ月で制作した実写テスト映像。ジャクソンとしては、Weta Digital の技術力を PR するだけでなく、実写化を前提に計画を練っていたスピルバーグに対してフル 3DCG の方がより効果的に『タンタン』の世界観を描けることを PR する狙いもあった模様
まずは、初めてパフォーマンス・キャプチャを用いてアニメーション作品に挑戦したスピルバーグに、感想を聞いてみた。
スティーヴン・スピルバーグ
「僕は結局いつも、世界(環境)はストーリーほど重要じゃないということを学ぶんだ。自分たちのストーリーを形にするために、どんなツールやテクノロジーを使用してもね。そういったことは新しいジャンルを定義付けようとするけど、常にストーリーを語ることが1番重要なんだ」。
「今回、僕はかなり急激に新しいテクノロジーを学ぶことになった。とても学ぶ価値のあるものだったよ。実際にこの映画をとても楽しんだしね。でも、いつも最後は基本に戻る。全ての会話はストーリー、プロット、物語、キャラクターに帰っていく。特にエルジェが描いた原作の映像化において、僕らは彼のスタイルに近いアートフォームでやりたいという思いがあった。もしエルジェが僕らと一緒にスクリーンを見たら、"あの人はハドック船長に見えるね"と言ってもらえるようにキャラクターを描きたかった。だからこのやり方がベストの選択だったんだよ」。
『タンタンの冒険』で初めてタッグを組んだスティーヴン・スピルバーグ(右)とピーター・ジャクソン(左)。初タッグながらも、意見の食い違いで揉めることはなかったという。
スピルバーグ
「僕とピーターは原作の大ファンだから、あることについて1度同意したら全ては共同作業なんだ。問題を解決しなければいけない時も、そこでエゴが邪魔することはない。僕らは2つの違う国から来ているけど、タンタンとエルジェのアートに関しては、同じ見方で心はひとつなんだ」
ジャクソン
「2人の間には競争もエゴもない。問題はどう"タンタン"をアダプトし、良い映画を作るかなんだ。故にスティーヴンと僕は頭を突き合わせ、その答えを見出そうとした。だからクリエイティブで発展的なんだ。競争じゃなく、常に答えを考え、1番良い方法を探っていったよ」


