>   >  ヴァーチャルカメラで切り開く和製 CG アニメの新次元〜『FEVER マクロスF』PR映像 "超時空スーパーライブ"(後編)
ヴァーチャルカメラで切り開く和製 CG アニメの新次元〜『FEVER マクロスF』PR映像

ヴァーチャルカメラで切り開く和製 CG アニメの新次元〜『FEVER マクロスF』PR映像 "超時空スーパーライブ"(後編)

Massive によるモブ(群衆)表現

2010年に Massive を導入したというサテライト デジタル部。本作でも、Massive を使いモブを配置したことで映像に厚みを持たせることに成功している。
「TV 版や劇場版『マクロスF』で表現しきれなかった課題のひとつとして、モブシーンがありました。全宇宙を舞台にした壮大な物語であるはずなのに、街中の人数がどうしても限られていたのです(苦笑)。シェリルやランカのライブシーンの観客も止め絵になっていたので説得力に欠ける部分がどうしても心残りでした。 3DCG の利点のひとつは効率的に物量を表現できることなわけですが、さすがに数万人規模のモブとなると通常のやり方では限界があります。群衆シミュレーションに特化した Massive は、以前から導入したいツールと考えていたのでようやくひとつの願いが叶った感じですね」(八木下氏)。

エージェント

観客モブに使用したモデル(Massive ではエージェントと呼ばれる)。基本的には遠景用として使用するのため 1 体あたり約2,000ポリゴンでまとめられている

Massiveによる群衆 Massiveによる群衆

ランカ篇のモブの配置(左)と、Brain(群衆全体の動きを制御する要素)の設定画面(右)。ランカ篇では 1.5〜2 万体のエージェントが観客としてレイアウトされた

「カメラがエージェント(Massive で動かす群衆キャラ)に近づき過ぎるとレンダリングできないというバグがあったので、モブを避けるようなカメラワークに変更したり、モデルがローポリモデルなので寄りで映るカットでは合成時にぼかしを入れるなどして対応しました。また、スケジュール的な制約もありエージェントの接地を追い込むのが難しかったため、足元を映さないようにも配慮しています(苦笑)。Massive はまだ使い始めたばかりなので、これから色々と試しながらノウハウを蓄積していきたいですね」(森野氏)。

群衆完成 群衆ッ完成

完成したモブシーン(上:『ランカ』篇、下:『シェリル』篇)

チームとしての経験値こそが、"最大の武器"

サテライト デジタル部は、常に先行者として斬新な映像表現を目指している。その為、ある程度はクオリティを犠牲にしてでも、新たな技法を積極的に採り入れてインパクト重視での制作が目指されている。
「僕らは集中力が続かないのでなかなか長期戦は難しいんですが、その代わりにゲリラ的な戦いは得意なんですよ」と、プロデューサーの橋本トミサブロウ氏が言うように、このゲリラ的な試みがひとつの形として結実したのが、CGWORLD でも取り上げた クラムボン MV『KANADE Dance』 であった。つまり『FEVER マクロスF』は、『KANADE Dance』で得たノウハウを武器にさらなる新境地に挑んだプロジェクトなわけだ。

『FEVER マクロスF』では、橋本氏を中心としたこのチームの成長を強く感じる。同じイメージを共有し、同じベクトルで制作できるチームを持つということは非常に強力な武器であり、作品のクオリティに直結すると言っても過言ではない。今後もそのチームワークと新たな技法や手法によって、アニメという表現枠に囚われることなく、より一層強烈なインパクトを与えるゲリラ的な作品が生まれることを楽しみにしている。

TEXT_村上 浩(夢幻PICTURES
PHOTO_弘田 充

『FEVER マクロスF』中核スタッフ

中核スタッフ

右から、HIBIKI コンセプト&ヴィジュアル スーパーバイザー(フリー)、橋本トミサブロウ プロデューサー、八木下浩史 VFX スーパーバイザー、森野浩典 CG スーパーバイザー、以上 サテライト デジタル部

『FEVER マクロスF』

『FEVER マクロスF』

本映像は、『FEVER マクロスF』(フィーバーマクロスフロンティア)公式サイトの「スペシャル」ページにあるゲーム「アイ君を探せ!」をクリアすれば視聴できる。ぜひ挑戦してもらいたい。
『FEVER マクロスF』公式サイト
© 2007 ビックウエスト/マクロスF製作委員会・MBS © 2011 SANKYO

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