>   >  メーウ『pair* Factory MIX』PVメイキング(前編)〜 Autodesk 3ds Max Eentertainment Creation Suite 導入事例 〜
メーウ『pair* Factory MIX』PVメイキング(前編)〜 Autodesk 3ds Max Eentertainment Creation Suite 導入事例 〜

メーウ『pair* Factory MIX』PVメイキング(前編)〜 Autodesk 3ds Max Eentertainment Creation Suite 導入事例 〜

作画アニメにおける特効表現を 3DCG で再現〜ルック・デベロップメント〜

キャラクターのモデリングは、女の子の姉妹ということで、参加スタッフ(特に男性)それぞれの思い入れが強く、モデルの完成までには何度も試行錯誤が繰り返されたという。「キャラクターの3面図や表情集等の設定資料は特に用意されていなかったので、昨年11月のメーウデビュー時に描かれた1枚のポスターグラフィック(前頁参照)をガイドに、そのイラストが持つ魅力を CG キャラクターモデルに反映させることを心がけました」(鈴木貴志 CG ディレクター)。

meaw:メーのモデル(バスト)01

image courtesy of khara, inc.
メーのモデル(全身)。自然なキャラクターの絵を作り出すためにプロポーションには細心の注意を払われており、特に手足が無機質な棒に見えないようシルエットのアウトラインに気遣ったそうだ

meaw:ウーのモデル(バスト)01

image courtesy of khara, inc.
ウーのモデル(バスト)。作り易さや動かし易さを重視して分割数を必要最小限に抑えながらも、Pencil+ 3 によるライン描画が最適になるようポリゴンメッシュの配置やスムージンググループ分けは厳密に行われている

続くルック開発の工程では、今年4月から KDB に参加した新メンバー、松井祐亮氏がリードする形で新たなシェーディングの手法が構築された。メーウのシェーディングは、既存のセルシェーダではなく、Adobe After Effects(以下、AE )上で細かく調整できるように、基本色や影の色、影の範囲、グラデーションの濃度と範囲など多くのエレメントが出力されてる。

「キャラクターのルックに関しては、通常のセルシェーディングよりも、本作ならではのCGの機能を生かし、女の子キャラクターの魅力をグラデーションや様々な素材で負荷する「イラスト調シェーディング」を採用しました。特に陰影などは重要な要素で、肌等の「やわらかい部分」とアクセサリー等の「固い部分」などでは影のタイプを変えてます。また、肘や膝の赤みや、髪や足もとなどにもプラスすることによって、華やかさを演出しました。影素材やハイライト、ラインなどを個別に出力しているので、最終的なルックをコンポジット(AE CS5 を使用)で細かくコントロールすることが可能なため、影の付き方や色味などに変更する場合でも、Autodesk 3ds Max(以下、3ds Max )側に戻って素材を再レンダリングするといった手間がなく、表現に時間を割くことができました」(松井氏)。もちろん、エレメントが増えれば AE 上での調整の手間なども増えコンポジットに負荷が掛かってしまうが、KDB ではそれらの手間を軽減するためのスクリプトなども社内で作成しているとのこと。

meaw:髪の毛の色グラデーション調整用モデル

image courtesy of khara, inc.
髪の毛の色グラデーション調整用モデル(ベースモデルに対して、調整したい箇所ごとにパーツ分けした素材を貼り付けライトなしでレンダリングしたもの)。シェーディングに関しては、イラストで描かれたルックを再現するために各所にグラデーションが入れてある。基本色や影の色、影の範囲、グラデーションの濃度と範囲などを AE 上で細かく調整できるように多くの素材が出力された

meaw:髪の毛の色グラデーション調整例

image courtesy of khara, inc.
髪の毛のグラデーション調整例。レンダーパスが細分化されるためコンポジット時に相応の負荷が掛かるが、色味の修正などが発生した際にも 3ds Max 側に戻ることなく素早い対応が可能である

meaw:髪の毛の色グラデーション調整・After Effects パラメータ

AE上の調整パラメータ UI 。2D イラストのグラデーションを再現するための本手法は、髪の毛以外にもスカートの落ち影(後述)や尻尾のルック調整にも利用された

meaw:落ち影調整用モデル

image courtesy of khara, inc.
脚へのスカート落ち影の調整用モデル。トゥーンシェーディングを使用していても、リアルな落ち影を入れてしまうと意図しない陰影が多くなり、手描きアニメ特有の持ち味が損なわれてしまう場合がある。さらにライトの影響で落ち影が伸び縮みすることを避けるため、各パーツにオリジナルで作成した素材を貼り付けたり、複数の素材を混ぜ合わせるといった工夫が施された

meaw:落ち影調整例

image courtesy of khara, inc.
脚に落ちるスカート影の調整例。髪の毛のグラデと同じ要領で設定されているが、それだけだと影の形が不自然になるため、さらに別のグラデーション素材を組み合わせているという

meaw:髪の毛のハイライト調整例

image courtesy of khara, inc.
頭部(髪の毛)のハイライトも可愛さ増すためには必須のアイテム。だからと言って単純にテクスチャを貼り付けるだけでは、「貼り付けた感(フラットな印象)」が露骨に出てしまうため、キャラの動きに合わせてハイライトにも表情が出るよう、ここでも複数のグラデーション素材が組み合わされている。AE 上でリアルタイムに調整できるので重宝したそうだ

meaw:キャラクターの陰影調整用モデル

image courtesy of khara, inc.
キャラクターの陰影を調整するためのモデル。デフォルトのモデルにライティングを施したもので、基本ライトは顔用と全身の2種類。セルタッチの場合、影が多く入ると意図しない陰影がついてしまいがちのため、特に顔用のライトはなるべく影を落とさないよう強めにライティングされた。全身用のライトについても、カットに応じて各パーツ(顔、腕、体、小物など)ごとに分けてライティングを行なったりもしているとのこと

meaw:キャラクターの陰影調整例

image courtesy of khara, inc.
陰影の調整例。シャドウを素材として個別に出力しておくことで、AEのレベル補正などで影の色味や面積率を調整することが可能だ。さらに2号影スイッチを独自に開発し、ボタン1つで、作画特有の2号影(ベースの影よりも暗い影)を入れることも可能になった

特集