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デジタル・コンテンツ業界を目指す学生のためのフリーペーパー「CGWORLD Entry」のイベントCGWORLD Entry Liveの第二回目が2014年10月5日、ベルサール九段にて開催された。 スクウェア・エニックス、NHKアート、オレンジといったゲーム・アニメ・実写VFXの各分野を牽引する企業によるメイキングセッションをはじめ、尾形美幸氏によるポートフォリオ講座、注目の若手アーティスト森田悠揮氏と斉藤裕太氏(bait)や実力派プロダクション画龍によるCGスキルアップセミナーが行われた本イベントだが、大雨の中にも関わらず学生・教職員を中心に328名が来場した。
本記事では「企画セッション」の尾形美幸氏による「ポートフォリオキホンのキ」、森田氏、斉藤氏による「プロを納得させる作品づくりに必要なこと」、画龍による「若き龍」の3セッションの模様を中心に紹介したい。

リクルーティングエリアの模様

リクルーティングエリアでは現在新卒採用中の大小プロダクション13社が出展。第一線で働く現場アーティストや採用担当者が来場学生に対して対面で企業説明をする他、ポートフォリオを持参者に対してはアドバイスを提供した
※出展企業一覧(あいうえお順)
株式会社アクセスゲームズ、株式会社NHKアート、有限会社オレンジ、株式会社カプコン、KALEID.、株式会社 コマデン、株式会社コロッサス、株式会社スクウェア・エニックス、株式会社スパイス、株式会社デジタル・メディア・ラボ、株式会社テトラ、ポリゴンマジック株式会社、株式会社lunaworks

機材展示エリアの模様

機材展示エリアでは高いコストパフォーマンスと拡張性で知られるBTOメーカーマウスコンピューターによるCG・映像制作者向けPCの展示が行われた。画龍セッション『若き龍』では機材トラブルにより、急遽マウスコンピューター展示機よりインテルCore i7-5820K、NVIDIA Quadro K5200搭載のクリエイターPC:MDV-QX9500XH5-WSが用いられる場面も。プロジェクトファイルを用いたメイキングも行われたが非常に軽快に動作した

尾形美幸氏 セッション
『ポートフォリオ キホンのキ』

企画セッションルームでスタートを切ったのは、『クリエイティブ業界を目指す人のための ポートフォリオ見本帳』(MdN刊)の著者、尾形美幸氏だ。前回のCGWORLD Entry Live Vol.1では会場内に『ポートフォリオ相談所』を設け大盛況となったのが記憶に新しい尾形氏による本セッションは、新卒採用と中途採用の違いや人事採用の背景の理解を深めたうえで、就職成功者の実例を添えつつポートフォリオ制作のイロハが語られた。
月刊CGWORLD、CGWORLD Entryでも多数の求人記事を手がけ、3DCG・映像系企業の人事担当者の生の声を聞いて来た尾形氏は、NPO法人国際ゲーム開発者協会日本の理事としてゲーム業界と学生の間を取り持つStudent Task Force(TF)の世話人を務める一方、専門学校 東洋美術学校の非常勤講師としてポートフォリオ制作やプレゼンテーションの指導をするなど、3DCG業界の就職事情を肌で感じて来た自身の豊富なナレッジをこの場で共有したい、と話しセッションをスタートした。

ポートフォリオ制作は「コンセプト」が重要

セッションの冒頭で「無計画に漫然と作品を並べても、採用担当者の心には響きません。ポートフォリオにはコンセプトが重要です」と話し、企業に売り込むべきは作品ではなく自分自身であると尾形氏は明言した。「採用担当者が見たいのはよくできた泣けるストーリーではなく、これまでに何を勉強して何を経験して来たか、入社後何をやりたいと思っているのかです」(尾形氏)。興味を持っていることや強みとする部分に焦点を絞り、コンセプトを明確にした上で作品選びをすることで、採用担当者に対して一貫性を持った強い印象を与えるポートフォリオを作ることができるとのことだ。例えば3DCGアニメーターを目指す場合、ポージングに対する飽くなき探究のプロセスを見せたり、1つのモーションを複数アングルから確認できるデモムービーを作り、モーションの詳細をわかりやすく伝えるなど、アニメーションに対する熱意を存分に伝える工夫が必要だと尾形氏は語る。
また書類選考の際、採用担当者の半数以上がポートフォリオ1点当たりの評価にかける時間を「平均5分以下」と回答しているという集計データから、ポートフォリオは第一印象が重要であると語り、「アニメーションに興味がある場合は、フレームを端から並べてみたりさまざまなアングルを用意したり。自分がこだわっている部分や工夫している点が一目瞭然で、採用担当者の記憶に残るポートフォリオ制作を目指してください」と、就職成功者の実例を画像で紹介しながら解説した。

2013年2月発行CGWORLD Entry vol.3にて実施した新卒採用企業89社に対するアンケート。半数以上(57%)の企業が、作品を5分以内で評価すると回答している

結婚の申し込みに匹敵する真剣な姿勢をポートフォリオで表現する

尾形氏は"採用と結婚は似ている"と話し、「採用担当者は末永く一緒に働ける人を真剣に探しています。"どんな会社でも良いから入りたい"というのは"誰でも良いから結婚したい"というのと同じです。結婚の申し込みに匹敵する真剣な姿勢を採用担当者に示して欲しい」と来場した参加者に投げかけた。
さらに、ポートフォリオ制作に煮詰まった際には「学校の課題以外の実績づくりに挑戦してみてください。採用担当者は個性がよく分かる自主制作作品を楽しみにしています。また、ポートフォリオをブラッシュアップするためには、羞恥心を一度心の棚におき、指導教官、キャリア就職課のスタッフ、来校する現場アーティストや採用担当者の意見を聞いてみることが大事です」とのアドバイスを送りセッションを終了した。

前回に引き続き今回も『ポートフォリオ相談所』を開設。就職活動に対する不安を抱える参加者の背中を力強く後押しした

斉藤裕太氏&森田悠揮氏セッション
『プロを納得させる作品づくりに必要なこと』

【左から】斉藤裕太氏(bait)、森田悠揮氏
http://www.baitfilm.com/
http://www.itisoneness.com/

次に登壇したのは、日本のロックバンド FACT(ファクト)のリリックビデオ『ape』を制作し、注目を集めたフリーランスの3DCGアーティスト森田悠揮氏と映像作家の斉藤裕太氏(bait)の2名だ。
本セッション、『プロを納得させる作品づくりに必要なこと』は、今年の秋に大学を卒業したばかりだという森田氏と、現在も大学に在学中の斉藤氏に司会者が質問を投げかけ、学生でも3DCG・映像業界で実力を認めてもらうための秘訣を探ろうというもの。
学生のうちから3DCG・映像業界で活躍する両名に、日々の過ごし方や作品制作への姿勢、自宅PCのスペックや制作環境などの質疑応答が行われた。この日会場に詰めかけた多くの参加者と比較的年齢の近い両名によるリアルなコメントの数々は、これから社会に出て行く身である学生たちのモチベーションを底上げする説得力と迫力があった。

セッションは立ち見が出るほどで、森田氏と斉藤氏が生み出す作品に参加者が注目しているということが伝わってくる。CGWORLD Entry Live Vol.2の参加者の多くは、専門学校や大学に在学中の学生だ。参加者らと比較的年齢が近く、森田氏と斉藤氏の歯に衣着せないコメントにより、会場は和やかな空気で満たされていた

作りたいものから逆算し、必要な技術・環境を整える

2年前にデジタルハリウッドで知り合い、意気投合したという二人。TVシリーズやゲーム案件のキャラクターモデリングを多く手がける森田氏と、モーショングラフィックを軸に実写と3DCGを合わせた映像作品を多く発表する斉藤氏に、まずはスキルアップの鍵について質問した。
「必要な技術を基礎から一つづつ積み上げていくという学び方ではなく、最終的なゴールのイメージを描き、どうすればイメージを具体化することができるのか。その都度必要となる知識を吸収していくというやり方で技術を磨いてきました」(森田氏)。
「僕の場合、個人制作作品はほとんどなく、クラブのイベント告知用PVだったり友人のバンドのPVであったり、依頼主が明確な案件がほとんどです。いずれも非常にタイトなスケジュールだったり低予算だったりしますが、一方で比較的自由度が高いので、イメージを具体化するために必要な表現方法や作り方を自由に模索することができるので、その中で技術力が自然に身についたのだと思います」(斉藤氏)。 両者ともにまず"作りたいものありき"でそこからの逆算で必要な技術を習得していくというスタイルが共通しているといえるだろう。
一方、「作品のクオリティを最大限引き出すためにはトライ&エラーが欠かせません。MVのような案件はとにかくスケジュールがタイトです。限られた時間の中でプロを納得させるクオリティを生み出すためには可能な限り生産性の高いPCで作業する必要があります」(斉藤氏)。「僕の場合はCGヘビーな作品を制作するケースが多いため、パフォーマンスの低いPCだとストレスを感じます。日によっては24時間CG作ってるときもありますからね、レンダリング待ちの時間がとにかくもったいない」(森田氏)と語るように作りたいものを効率的に作るためには、プロ基準の制作環境を構築することが必須とのことだ。
制作した作品がビジネスになりはじめた時の気持ちを斉藤氏は「映像以外のことでもそうですが、できると思えばできるという根拠の無い自信が昔からありました」と語り「3DCGをやっている人には、そういう感覚をベースに持っている人が多いのではないか」と森田氏は付け加えた。

FACTリリックビデオ『ape』メイキング

バンドFACT『ape』リリックビデオ
「専門学校に通っていた頃から、いつかは一緒に仕事がしたいと話していました」とは森田氏。『ape』の制作でようやくその念願が叶ったという。試行錯誤をひたすら繰り返してきた両名のコメントの裏側には、「ひとつの作品を作り上げるために、いかに工夫して目標とするクオリティに落とし込んでいくか」というメッセージが詰まっていた

セッションの中盤からは、森田氏と斉藤氏が制作したFACTのリリックビデオ『ape』のメイキングが披露された。斉藤氏によると、プロジェクト開始当初はキャラクターもののアニメにしようと話が進んでいたとのこと。しかしフルCGのアニメーションを制作した経験がないため、Pixarのような気持ちいい映像に仕上げるのは、スキル的にも時間的にもまだ難しいと判断。そこで"ある逃げ方"を見つけ出しと実行した結果、作品に独特なアニメーションとなり味が出たという。
「この作品は、1フレームずつモーションを付けたフルアニメーションではなく、日本のアニメでいう"コマ落ち"の方法を応用して作っています」(森田氏)。FPSが常に一定でることが多い3DCGアニメだが、『ape』では中間のフレームを落とし "可変FPS"にしているそうだ。「ワニがジャンプするシーンは、実は3フレームくらいしかありません。フレームの間をコミック風のエフェクトで埋めたことが功を奏しました」(斉藤氏)。
セッションの最後に森田氏は、「楽しく作品を作ることが一番の目標」と話すなど、質問に丁寧に解答する両名に親近感の湧くセッションであった。なお、本セッションのメイキングにはマウスコンピューターの"Intel Core i7-4700MQ"搭載高スペックモバイルPC「MB-P9150X-WS」が用いられた。本機でモーショングラフィックスを中心としたMV案件を一本仕上げたという、斉藤氏によるCINEMA 4D&After Effectsを用いたレビュー記事も合わせて参照してもらいたい。

『ape』では、日本のアニメでよく使われる"コマ落ち"に似た手法が使われているという。 (画像・上)を見ていただくとわかるように、1コマ1コマづつAfter Effects上でフレームを再分割している。「ワニがジャンプするシーン(画像・左下)に関して話すと、実際には3フレームほどしか用意していなくて、各フレームの間をエフェクト素材(画像・右下)で埋めています。それが意外にも功を奏したようです」(斉藤氏)。本作の詳しいメイキングは、月刊CGWORLD191号に掲載されているので、気になる方は是非チェックしてほしい

画龍セッション
『若き龍』

株式会社画龍:【左から】石野 雄氏(アニメーションスーパーバイザー) 、齊藤 篤氏 (モデリングスーパーバイザー)、早野海兵氏(会長)

圧倒的な美しさを誇る、画龍の企業デモリール

最後のセッションを飾ったのは、本誌CGWORLD『画龍点睛』で長く連載を担当する株式会社 画龍だ。登壇したのはアニメーションスーパーバイザーの石野 雄氏、モデリングスーパーバイザーの齊藤 篤氏、そして会長の早野海兵氏の3名。セッションスタートと同時に流された同社デモリールは圧巻の美しさで、参加者一同息を飲んだ。画龍がこれまで携わって来たCMをはじめとするクライアントワークやショートムービーの一部を繋げたもので、5分弱とデモリールとしては比較的長い部類に入るものではあったが、「もう少し観ていたい」と時間を忘れてしまうほどクオリティの高い作品の連続であった。

息を飲むほどに美しい、画龍による3DCG映像作品の数々。最近は比較的CMや映画の仕事を引き受けることが多い画龍だが、「ゲームやTVのタイトルバック、ミュージックビデオなど3DCG業界にもブームがあるんですが、画龍は3DCGに関する全般に関わっています」と早野氏は語る。早野氏は、本誌月刊CGWORLDの『画龍点睛』で長く連載を持つなど、画龍の活動範囲は非常に広い

進化し続けるテクノロジーと映像業界の遷移

まず始めに早野氏は、映像技術の進化とともに標準が変化し続けるテレビの画面解像度の遷移について分かり易く解説した。「PlayStationが出たばかりの時代から4Kそして8Kと、画面解像度は飛躍的に大きくなりました。映像の仕事をする上で重要ですのでよく理解しておいてください」(早野氏)。早野氏の言葉に加えて石野氏は「当然ですが、画面解像度が上がった分だけギャラも比例して上がるというわけではなく、解像度が大きくなったことでより制作コストが一層かかってしまうという頭の痛い問題が浮上しました」と語った。
あわせて早野氏は「現在はスマートフォン最盛期ですが、私が3DCGの仕事をはじめた20年前はコンシューマゲームが全盛でした。ゲーム背景ひとつを作って何百万円というギャラが貰えた時代です」と、経済面を含めた映像業界全体の変化について言及した。3DCG・映像制作案件において作業負荷や求められるクオリティと単価とが必ずしも釣り合うわけではない状況の中、いかに最新の3DCG技術を習得し、効率的にハイクオリティな作品を作り続けていくかが重要だという。第一線で活躍するクリエイターの言葉の端々に、ズシリとした重みが感じられた。

画面解像度の移り変わりがひと目でわかる図。ツールやハードなどテクノロジーの進化にともない、クライアントから求められるクオリティはますます上がる一方である。これまで通りの作りかたでは対応できないため、日々新しい技術習得していくことが映像業界で働く上では必須条件と言えるだろう

セッションの後半では、画龍が携わる映像作品のメイキングが披露された。紹介された作品はスイス ヌーシャンテル ファンタスティック映画祭に招待上映されるという、群馬県桐生市の町おこしショートムービー『KI・RYU』。
メイキング解説の前に、この日プライベートで会場に足を運んだという監督の川上信也氏が紹介され、川上氏は「今後は長編映画に挑戦しようと考えていて、その際はまた画龍と映画が作れたらと思います。みなさんが画龍に入社したあかつきには、是非一緒に映画を作りましょう」とコメントした。劇中に登場する龍のモデリングとアニメーションは、より効率的でより美しく仕上げるための工夫があちこちにちりばめられていた。また早野氏は根っからの3ds Max愛用者であるらしく、「最近では3ds Maxの利用者が減少しているようなので少し寂しいですね(笑)。今日はせっかくなので3ds Maxのことをあわせて紹介したいと思います」と話し、進化著しいプラグインを駆使することと、3DCG技術に関する情報収集の重要性を説いた。

「チクチクと作るよりも、ボタンひとつでポンと作る感じ」だと早野氏。ショートムービー『KI・RYU』に登場する龍に付けるアニメーション作業画面。一体の龍に対して、角度や動きによってリグを変えたものをパターン別に制作したとのこと。「蛇状のものを動かす際は、どこを起点に動かすかでリグを組み直す必要があるのですが、龍を板状に簡略化させたものにアニメーションを付け、それに龍のモデルをくっつけることで、自由自在な動きを再現させることができます」(石野氏)

TEXT_UNIKO
PHOTO_大沼洋平

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CGWORLD Entry Live vol.2

開催日:2014 年10月 5 日(日)
会 場:ベルサール九段
主 催:ワークスコーポレーション