©2014「STAND BY MEドラえもん」製作委員会

映画『STAND BY MEドラえもん』 全国で大ヒット上映中!
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藤子・F・不二雄生誕80周年を記念して製作された本作。シリーズ初の3DCGアニメーションとして注目を集めている。手がけたのは映画『friends もののけ島のナキ』(2011)を世に送り出した八木竜一氏・山崎 貴氏の両監督と白組の制作チームだ。今まで見たことのない新しい『ドラえもん』はどのように創られたのか? 

※この記事は、月刊CGWORLD 193号の第1特集『STAND BY MEドラえもん』からの一部転載になります

親しみ深いキャラクターを3DCGで描く

近年、ハリウッドでは映画『バットマン』や『スパイダーマン』シリーズなど、昔のアメコミを最新のVFXを駆使して現代に蘇らせた作品が高く評価されている。リアルな表現により、いっそうキャラクターの存在感が活きてきているのだろうか。「昔、ドラえもんを観ていた人にこの映画を観て面白いと思ってもらいたい。そのために皆の中にあるイメージを残したまま、キャラクターを進化させたい。それをどう表現するかを考えた結果、キャラクターが実在している感じを出すためにリアルさにこだわりました」とアートディレクター・花房 真氏。

もちろんデザインの大枠は藤子・F・不二雄氏の原作を忠実に踏襲している。その上で、原作のデザインに細かなディテールを付け加えることでリアルさを追求した。藤子プロにも協力してもらい、自由にデザインさせてもらったという。ながれとしては、まずデザイン画を描き、それを基にパイロットムービーを作成して方向性を探る。そして本編用にモデルを作り直し、キャラクターを仕上げていった。のび太が決まれば他のメインキャラクターも作れるだろうと考え、まずはのび太から制作にとりかかり、全体の方向性を模索した。次にドラえもん、そして、ジャイアンやスネ夫、しずかちゃんといった具合だ。

BG&アセットチームリーダーの竹内 義氏が参加したのは、パイロット版のムービーが完成してからだったという。パイロット版のモデルはまだ表情がきちんと動かない状態だったため、メッシュを張り替えることから作業を開始。「本編用の対応をするために、パイロットの時点からマテリアルやモデルを作り直しました。肌は透明感がほしいということでマテリアルにサブサーフェス・スキャタリングを採用しています」と語る竹内氏。また、フェイシャルターゲットについても、花房氏のスケッチに合わせて動きを作り、成立しているかどうかひとつひとつを確かめていったという。

©2014「STAND BY MEドラえもん」製作委員会

のび太の作成
~メガネや前髪の表現に注目~

キャラクターをデザインするにあたって、最初は原作どおりの顔や頭身を再現することも考えていた。しかし、原作ののび太はメガネと目が一体化しており、いわば"メガネが目"という状態。もちろん、リアルな人間にはありえない。

また、陰影のある立体モデルで4頭身ほどののび太を作るとギャグアニメにしか見えず、シリアスドラマを演じるには無理があった。「漫画的な表現とリアルな表現の両方をやるということで、頭身は悩んだところですね。目にしても"点目"だとリアルじゃないし、リアルすぎると気持ち悪いから、違和感がない程度に頭身を伸ばしました」と八木監督。

それでも顔がのび太っぽくならないことには悩んでいた。なんとか花房氏の納得のいくものが描け、それを基にパイロット版のモデルを作り上げたが、違和感が消えたのは本番用のモデルのセットアップが終わった頃だった。プロデューサーのひとりに「もうちょっと前髪が短い方がのび太っぽいよね」と言われたのだ。「試しに前髪を短くして眉毛が部見えるようにしたら、とぼけた間抜けさが加わってのび太っぽくなった。『これだ!』と言って、完成したんだよね」と花房氏。


デザイン画と表情集


上段がのび太の初期デザイン案。のび太のデザインについては原作の"メガネが目"をどう表現するかが最大の難問だった。「眼鏡の奥にちゃんと目があるキャラクターにするとのび太に似ない。目の大きさなどの微調整を繰り返しました」と花房氏。また、下段が完成した設定画と表情集の一例。のび太にはまつ毛が生えていないため、目をつむったときに一本線になっている表情を3DCG化させる上では、まぶたが閉じるのに合わせてポリゴンの色が暗くなるよう、マテリアルと連動させた


のび太 完成モデル

完成したのび太のモデル。4ヶ月ほどである程度まで作り上げられ、その後、リグを入れたりモデルを修正したりする作業が最終段階まで繰り返された。なお、ツールは3ds Max 2012。パイロット用に作成したモデルは服の布地が厚く、頭も大きくてミニチュアで作った人形のようだった。それを竹内氏が本番用に作り直し、服の布は薄くして、頭身もちょうど良く見える割合になるまで調節していった。ただでさえのび太は眼鏡をかけている上に坊ちゃんカットにしているから秀才に見えやすい。数ミリのちがいで、印象がガラッと変わってくる。慎重を期して、微妙な修正を行なっていった

映画『STAND BY ME ドラえもん』メイキング
アニメーション付けやクロスシミュレーションなどの詳しい解説は、CGWORLD193号をご覧ください