>   >  KOO-KIが企画・制作した超没入型インタラクティブシアター『Universe of Nikon ニコンがひらく世界』
KOO-KIが企画・制作した超没入型インタラクティブシアター『Universe of Nikon ニコンがひらく世界』

KOO-KIが企画・制作した超没入型インタラクティブシアター『Universe of Nikon ニコンがひらく世界』

<2>Maya上に投影空間を再現する

先述の通り、様々な展示映像の技法をリサーチした結果、最も没入感が得られる手法ということで選ばれたのが3Dプロジェクションマッピングであったが、その投影環境についても強いこだわりが込められた。
「映像制作と同時並行で投影環境となる空間デザインについても検討していきました。本作では、"映像で視野を埋める"ということを徹底的に追求しようと思い、たどりついたのが、われわれの間では『ホリゾントスクリーン』と呼んでいたこの環境になります」(上原氏)。
ニコンと聞くと一般的にはカメラメーカーと思われがちだが、同社の光利用技術と精密技術は、半導体露光装置というミクロの世界から人工衛星に搭載された天体望遠鏡まで幅広い。そうしたニコン企業活動を映像を通して来場者に体感してもらうことによって、いわば"百聞は一見にしかず"をねらったのだと言えよう。

  • 3Dプロジェクションマッピングによる映像没入型インタラクティブシアター『Universe of Nikon 日本のひらく世界』(KOO-KI)
  • 3Dプロジェクションマッピングによる映像没入型インタラクティブシアター『Universe of Nikon 日本のひらく世界』(KOO-KI)
  • 3Dプロジェクションマッピングによる映像没入型インタラクティブシアター『Universe of Nikon 日本のひらく世界』(KOO-KI)
  • 3Dプロジェクションマッピングによる映像没入型インタラクティブシアター『Universe of Nikon 日本のひらく世界』(KOO-KI)
  • 3Dプロジェクションマッピングによる映像没入型インタラクティブシアター『Universe of Nikon 日本のひらく世界』(KOO-KI)
  • 3Dプロジェクションマッピングによる映像没入型インタラクティブシアター『Universe of Nikon 日本のひらく世界』(KOO-KI)

『人体』篇の一部シーンをスクリーン正面から捉えた写真。ホリゾント型(曲面)のスクリーンを採用することでシームレスに床面まで映像が投影されるため、KOO-KIがこだわった"映像で視野を埋める"というコンセプトを効果的に実現

『Universe of Nikon』の投影面は、120度の半円形の空間だが、ホリゾントという名の通り壁面と床面との境界は丸みを帯びた曲面に仕上げられている。さらに、床下の本来は電源等の配線スペースまで利用することで来場者の立ち位置よりも15cmほど低い面にも投影できる仕様となっているのだが、つまり投影面が非常に複雑な形状であり、キャリブレーションの難易度が自ずと高くなるものであった。
「ホリゾント型は制作の難易度が上がることはプロジェクトの初期からわかっていました。実のところ自分も最初はホリゾントスクリーンに対して否定的だったのですが(苦笑)、通常の壁面と床面が垂直なスペースと、ホリゾント型とで試写をしてみたところ、壁と床面の境界が目立たないホリゾントの方が圧倒的に没入感が高まることがわかりました。これは挑戦するしかないなと」(池田氏)。

最終的に関氏のプランニングによって、直径6.7m×高さ3.5mというホリゾントスクリーンに対して、横面用に3台と地面への投影用に天面から1台という計4台のプロジェクタ(1台あたりフルHD(W1,920×H1,200ピクセル)の解像度)で投影するという方式に決定。また、複雑な投影面へのキャリブレーションについては、一般的な2Dベースの調整では追い込めきれないことがわかっていたため、Mayaの3D空間内に実際のホリゾントスクリーン環境を再現することが同じく関氏の提案で決まった。

「既存の建造物などに3Dプロジェクションマッピングを行う、といったことはこれまでに経験済みでしたが、スクリーンから自分たちのアイデアが盛り込まれるというのは初めての試みでした。その意味でも関さんには大変お世話になりました」(上原氏)。

Mayaのシーン内に3Dプロジェクションマッピング環境を再現|『Universe of Nikon』メイキング動画<1>

実寸サイズのホリゾントスクリーンを模したオブジェクトを作成して、投影空間を再現。実際のスクリーンをMaya上に構築する。スクリーン向かい側の カメラは鑑賞者の視点で、このカメラから映像を投影。赤く表示されている4つのカメラは各プロジェクタの位置にあり、これらから見えている画をレンダリングして、実際のプロジェクタから投影するというしくみだ


ホリゾントスクリーン、さらに床面から15cmの深さにまで投影するという条件に対して関氏も当初は難色を示していたそうだが、今までの経験を活かし、各プロジェクタから出力される映像の境界面のズレや曲面に対する歪みなどを極限まで軽減することができたという。
「3Dプロジェクションマッピングの場合、制作時にいかに最終的な投影環境に近い環境を用意するできるのか、ということも成否の鍵となります。そうした面でもGAさんには大変お世話になりました。関さんたちのオフィス(GA CG-STUDIO)内に以前は通販商品用のショールームとして使われていたスペースがあったのですが、そこの壁面が楕円になっていてホリゾントスクリーンに仕立てるのにおあつらえだったのです」(河原幸治プロデューサー)。

  • 3Dプロジェクションマッピングによる映像没入型インタラクティブシアター『Universe of Nikon 日本のひらく世界』(KOO-KI)
  • 3Dプロジェクションマッピングによる映像没入型インタラクティブシアター『Universe of Nikon 日本のひらく世界』(KOO-KI)

(左)GA CG-STUDIO内にある壁面が楕円のスペースが折良く空いていたことから、そこに実際の環境を模したホリゾントスクリーンを設営。ホリゾントスクリーンは模造紙を使って自作/(右)約80%のサイズであり、手配できたプロジェクタの台数(横面×2、床面×1)も限られた。しかし、ホリゾントスクリーン上での見え方を、作業を進めながらその場で確認することができるメリットは計り知れなかったという(福岡と東京という距離の問題も大幅に軽減されたのは言うまでもない)

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Profileプロフィール

空気/KOO-KI

空気/KOO-KI

〈前列〉左から、河原幸治プロデューサー、池田一貴ビジュアル・ディレクター/〈後列〉左から、秋山 優PM、高村 剛インタラクション・ディレクター、上原 桂クリエイティブ・ディレクター(以上、KOO-KI)、山下裕次郎デジタルアーティスト(エージェントプラス

KOO-KI/ゼネラルアサヒ/インビジブルデザイン

KOO-KI/ゼネラルアサヒ/インビジブルデザイン

左から、生嶋 就ビジュアル・ディレクター(KOO-KI)、関 直之テクニカル・アドバイザー(ゼネラルアサヒ)、中村優一コンポーザー(インビジブル・デザインズ・ラボ

スペシャルインタビュー