福岡の雄、KOO-KIが、オリジナルの短編3DCGアニメーションシリーズ『SUSHI POLICE』を展開中だ。過去2回にわたり木綿達史監督と河原幸治プロデューサーに、いわゆる受託制作とは似て非なる面をもつオリジナル作品の商業制作について率直に語ってもらった。本短期連載の最終回(第3回)は、CGアニメーション制作に参加した総勢9社から成るパートナーたちにも同席してもらい大いに語り合ってもらった。

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INTERVIEW_村上 浩(夢幻PICTURES) / Hiroshi Murakami(MUGENPICTURES
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)



『SUSHI POLICE』Official Trailer #3
監督:木綿達史/脚本:楠野一郎、安藤康太郎/企画:中沢敏明/プロデューサー:厨子健介、河原幸治/プロダクションマネージャー:中石賢悟/キャラクターデザイン:塗壁、イチノミヤモトヒロ、TOBI TOREBURUYA/美術:オカモト、河村翔太/音楽:稲岡 健、高木公知/編集:U2/制作:セディックインターナショナル、KOO-KI/製作:"SUSHI POLICE" Project Partners

© "SUSHI POLICE" Project Partners


<1>制作当初から参加した4プロダクション

ーー今日はよろしくお願いします。まさか、ほぼ全てのプロダクションさん(※1)に同席していただけるとは!?

※1: 『SUSHI POLICE』の3DCG制作には、KOO-KIの下で9社(後述)が参加した。今回(第3回)の取材には、BIGFOOTを除く8社に同席していただいた(改めて感謝)。

ーーKOO-KI・河原幸治プロデューサー(以下、河原Pr.):みなさん、今日のインタビューを楽しみにしてくださっていたんですよ。CGWORLDの記事に載るのは、われわれにとって名誉なので!

ーー恐れ入ります(汗)。それでは、まずはじめに皆さんの簡単な自己紹介と、参加された経緯をお聞かせください。

Strobolights・宮脇 瑛一氏(以下、ストロボ・宮脇):Strobolights(ストロボライツ)の宮脇です。Storobolightsは第2、3、11、12話のアニメーションをTriFさんと分業しています。それに加えてモブキャラのモデリングとリギングなども担当しました。



  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会
  • 1.Strobolights
    左から、和田泰明アニメーター、宮脇瑛一アニメーター、稲葉道信モデラー


TriF Studio・麻生秀一氏(以下、TriF・麻生):TriF Studio(トリフ・スタジオ)代表の麻生です。TriFは、アニメーション以外にデザイン、モデリング、背景(2D)、コンテを担当させていただきました。TriFは自主制作映画サークルが発端で2013年に映像制作集団として活動しはじめたばかりなのですが、以前からお付き合いのあったStrobolightsさんに声を掛けて頂いてパイロット版の制作から参加させてもらいました。



  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会
  • 2.TriF Studio
    (後列)左から、麻生秀一マネージャー、オカモト2Dチーフデザイナー、塗壁アートディレクター、河村翔太3DCGディレクター
    (中列)左から、小田憲和ディレクター、佐藤沙友里2Dデザイナー、宮野頌子3DCGデザイナー、密野祥平3DCGデザイナー
    (前列)左から、大目貴之3DCGデザイナー、中村俊介3DCGデザイナー


KOO-KI・木綿達史監督(以下、木綿監督):Strobolightsさんは、TVシリーズの3DCGアニメーションもコンスタントに手がけていらっしゃるので、今回はぜひその知見を活かしていただきたいと考えていました。実際にStrobolightsさんとTriFさんがいなければ『SUSHI POLICE』は陽の目を見ることはなかったかもしれません。

ストロボ・宮脇:ありがとうございます。ですが、自分たちとしてもオリジナルコンテンツに興味があったので参加できて良い勉強になりました。

ーー過去2回の取材を通しても、特にTriFさんはかなりの大役を務められましたよね。

木綿監督:麻生さんに相談すると何でもひき受けてくれるので僕らもすごいスタジオが現れたと思っていました!

TriF・麻生:いやいや(汗)! 面白い作品なので調子に乗ってひき受けてしまったんです。そのせいで今(※2)はマズい状況に追い込まれていますけど(苦笑)。
※2:本取材は2016年2月下旬という、同年1月から3月までのテレビ放送向け制作が佳境の最中に行われた。

一同:(爆笑)

exsa・西田陽一氏(以下、exsa・西田):exsa(イクサ)株式会社福岡スタジオの西田です。当社は第1話のアニメーションを担当させていただきました。現場のスタッフもモチベーションが高くてもっと多くの話数を担当したがっていたのですがスケジュールなどの都合で担当できなくなってしまったのが残念ですね。exsaでもオリジナル作品を制作しているのですが、完成させたものをどのように展開させていくのかが課題だったので、KOO-KIさんを取り組みを間近で拝見させていただくことでいろいろと勉強させてもらっています。



  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会
  • 3.exsa
    (図・左)福岡支社。左から、森竹 諒デザイナー、西田陽一ディレクター、東 絢彦デザイナー
    (図・左下)東京本社。左から、矢﨑 茜デザイナー、有沢包三モーションディレクター
    (図・右下)名古屋支社。深谷 峻デザイナー

  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会
  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会


木綿監督:exsaさんとは福岡市主催のセミナーでお会いしたのがきっかけでしたね。以前から質の高いアニメーションを制作しているのは知っていましたし、オリジナル作品に興味のあるスタジオさんに依頼した方が良いと思って相談したんです。

BAMBOO MOUNTAIN・小ヶ倉伸行氏(以下、バンブー・小ヶ倉):BambooMountain(バンブーマウンテン)は第7、8話のアニメーションと絵コンテを担当しています。



  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会
  • 4.BambooMountain
    (後列)左から、竹山良一氏、石原 学氏、高嶋稔生氏、西海治幸氏
    (前列)左から、吉武豊紋氏、小ヶ倉伸行氏


木綿監督:8話は一番作業負荷が大きい話数でして、展開も早くカット数が多いので背景を描くのも大変なんですよね。竹山さん(竹山良一 代表取締役社長)もフルスロットルで絵コンテを描かれていました。

バンブー・小ヶ倉:そうですね。竹山もメチャクチャ乗り気で「採算度外視でやる!」と言ってましたから(笑)。普段から竹山が好きに描いた絵コンテをいかに具現化させるかというスタンスでやっているので、僕らは慣れてはいましたけど。



短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会

BambooMountainが参加した、第7話『フリー寿司運動、勃発』より
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<2>助っ人として参戦した5プロダクション

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<2>助っ人として参戦した5プロダクション

木綿監督:実はプロジェクトがスタートした当初はこちらの4社さんと一緒につくりきるつもりだったのですが、脚本の遅れなどもあって当初組んでいたスケジュールもズレてしまい、、、さらに5社のプロダクションさんにも参加してもらうことになりました(汗)。

ーーそうでしたか。それでは、急遽招集されたという(笑)、5社のみなさんも自己紹介をお願いします。

Digital Meida Lab.・瀬戸本 勉氏(以下、DML・瀬戸本):デジタル・メディア・ラボの瀬戸本です。KOO-KIさんとは7、8年来の付き合いなのですが、中洲の飲み屋で話を聞いて二つ返事でひき受けました(笑)。スケジュールや予算も確定していない状況だったので、隣にいる前田(知宏)くんは悲鳴を上げていましたが、かなり自由につくらせてもらったので楽しく作業ができました。

木綿監督:飲みの席で瀬戸本さんに相談すると、いつも快諾していただけるんです(笑)。瀬戸本さんご自身も「自由」とおっしゃいましたが、僕の予想以上に自由な絵コンテだったので驚きました。

DML・瀬戸本:(笑)。パンクな気分で絵コンテを描き上げたのでやり過ぎた感は多少あるかもしれませんが、『SUSHI POLICE』の世界観は意識して演出していますよ。

DML・前田知宏氏(AG)(以下、DML・前田):DMLは第6、9話のアニメーションと絵コンテを担当させていただいたんです。メインの制作チームは大阪スタジオのメンバーだったのですが、瀬戸本たち東京のスタッフも巻き込んで制作しました。



  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会
  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会

5.Digtal Media Lab.
(図・左)瀬戸本 勉ディレクター/(図・右)左から、大宮守敬CGデザイナー、内田崇裕CGデザイナー、山村祐也CGプロデューサー(AG)



i-mage・野方大輔氏(以下、アイメージ・野方):i-mageの野方です。自分たちは第4、5話のアニメーションと小道具(プロップ)のモデリングを担当させていただきました。実は僕は以前にKOO-KIさんでアルバイトをしていたので本作のオファーをもらったときは再びKOO-KIのみなさんと仕事ができることを嬉しく思いました。ですが、exsaさんが担当された第1話を観て、クオリティの高さから不安にもなりました(苦笑)。

木綿監督:ところで野方くんは、今日のためにパーマをかけてきたの?

アイメージ・野方:いいえ、地毛です(笑)。って、KOO-KIさんでアルバイトをしていたときにも同じことを聞かれましたよ!

一同:(爆笑)

  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会
  • 6.i-mage
    左から、伊藤了太郎CGディレクター、野方大輔CGデザイナー、雪家総一郎CGデザイナー、永田健人CGデザイナー


RAEN・中野皓太氏(以下、ラエン・中野):RAENの中野です。ラエンは第4話のアニメーションを担当させていただきました。当社は3Dプリンティング事業も行なっているのですが、今日はスシポリスたちのモデルを立体出力したものを持ってきました(手元から立体出力したモデルを取り出す)。

一同:おお、すごい!



短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会

映像用キャラクターモデルを、中野氏が3Dプリント用に調整の上、立体出力したもの。フィギュア化を期待したいところだ

  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会
  • 7.RAEN
    左から、福田奈美デザイナー、城戸幸一代表取締役、中野皓太CGデザイナー


REDOT・横山智人氏(以下、REDOT・横山):REDOT(レドット)の横山です。自分たちは、第10話のアニメーションを担当させてもらいました。ただ、社内のアニメーターを確保しきれなかったのでBIGFOOTの熊本周平さんにもご協力していただきながら制作しました。

ーーBIGFOOTさんとの作業分担はどうされたのですか?

REDOT・横山:REDOTのスタッフはアニメーション経験が浅かったので熊本さんに自分たちでも対応できそうなカットをピックアップしてもらい、それ以外のカットは熊本さんにお願いしました。ですので作業ボリュームは熊本さんの方が断然多いですね(苦笑)。

木綿監督:REDOTさんもBIGFOOTさんも以前からお名前は知っていたのですが、今回初めてご一緒させていただけたのは嬉しい出来事でした。



  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会
  • 8.REDOT
    左から、横山智人氏、福原康仁氏


  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会
  • 9.BIGFOOT
    熊本周平CEO、CGアニメーター


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<3>今だから言いたいこと、聞きたいこと

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<3>今だから言いたいこと、聞きたいこと

ーー制作が終わりつつある今だから聞いてみたいこと、言いたいことがあれば、ぜひ教えてください!

木綿監督:(挙手しながら)はい! exsaさんが担当した第1話の完成度が非常に高かったことから他の方々から「やり過ぎじゃないのか!?」と言われました(笑)。当事者であるexsaさんとしては、どういうお考えだったのでしょうか?

exsa・西田:ええ!? 「もっと! もっと!」と、クオリティアップを求めたのは木綿監督じゃないですか(笑)!

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会

exsaが参加した、第1話『スシポリス参上!』より
© "SUSHI POLICE" Project Partners


木綿監督:まぁ、そうなんですけどね。テイクを重ねる度にどんどんクオリティが上がっていくので思わず......。

一同:(爆笑)

exsa・西田:第1話は、作品やキャラクターの方向性を定める役割も担っていたので、その落としどころを探る必要がありました。スケジュールがタイトな中で木綿監督が求める表現をいかにして具現化するかという課題もあったのですが、カット単位で作り込むのではなく、まずは全カットのキーポーズを作成していき、その段階でシルエットで見映えとして成立するカットは止め絵にしてしまうといったかたちで全体的なコストとのバランスをとることを心がけました。その上で、作り込みたいカットは最大限追い込んでいったのですが、動きについては(日本のアニメCG的な)リミテッドというよりは海外のカートゥーン的なメリハリの利いた表現が求められていたので、この手法が適したと思います。

木綿監督:exsaさんのおかげで高い基準ができたので監督としてはとてもありがたいことなんですが、おかげで他のプロダクションさんたちは本当に大変だったと思います(汗)。

TriF・麻生:とにかく『SUSHI POLICE』は世界観もキャラクターもぶっ飛んでいるので(笑)、日頃のアニメーション制作とは異なる表現が求められました。ですが、それを追求するのが面白いんですよね。

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会

TriFとStrobolightsが参加した第2話『誇りを賭けたガサ入れ』より
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ーー確かに海外のカートゥーン・アニメーションとも異なる独特の表現ですよね。

木綿監督:企画の当初はカートゥーン調を目指したのですが、制作条件や自分たちが得意とする技法を組み合わせた結果、独特な動きが完成したと言えます。これもまた『SUSHI POLICE』らしさなんですよ。型破りな作品なので海外のスタジオで制作されていると思っている方も多いみたいです(笑)。

アイメージ・野方:語弊があるかもしれませんが、一般的なアニメファンに媚びてないので「受け容れられるかな?」と不安になったりもしました(笑)。自分としてはそこが気に入っているのですが、実写映画のパロディ的な要素も多いのでアニメよりも映画ファンの方が楽しめるのかも知れません。

木綿監督:いわゆるアニメ好きの方々に媚びれるものなら媚びたいのですが、そもそも媚び方がわからない(苦笑)。どうしたら良いのかわからないので、ひとまずサラの胸だけは揺らしてみました。

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会

RAENが参加した、第4話『サラへの寿司尋問』より。木綿監督こだわりの乳揺れカットが数多く登場する
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ーーベタですね(笑)。他の方々は第1話をご覧になられて、どのような感想を抱かれましたか?

アイメージ・野方:とにかくハイクオリティだったので何度も見返しました。本作のようなメリハリのある動きを付けるのが初めてなのですが、上司からは「真似て、超えろ」と。そこで第1話の動きを真似ることから始めました。普段はMayaを使っているので、3ds Maxに慣れるのにも苦労しましたが、KOO-KIの中石(賢悟プロダクションマネージャー兼コンポジター)さんが丁寧に教えてくださったので今では3ds Maxの方がアニメーション作業には適しているようにも感じています(笑)。

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会

i-mageが参加した、第5話『摘発せよ、超高速宅配寿司』より
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ラエン・中野:僕も3ds Maxを扱うのが初めてでした。それ以上にアニメーション作業も初めてだったのですが、担当するのは僕ひとりだけという......。

木綿監督:えっ!? それは危険だなぁ。。

ラエン・中野:そうですよね、僕も不安な気持ちでいっぱいでした。ですが、城戸(幸一氏、ラエン代表取締役)が「これくらいできるだろ」と言ってきかないんですよ。「この人は何を言ってるんだ?」と、なかば怒りのような感情を抱えながら暗中模索の日々が続きました。

一同:(爆笑)

RAEN・城戸幸一氏(以下、ラエン・城戸):(出入り口のドアが開いて)お疲れ様でーす。

一同:......(なんとなく静まり返る)。

ーー絶妙なタイミングでいらっしゃいましたね。

ラエン・城戸:え、そうですか(笑顔)?

ーーちょうどラエンさんが担当されたパートについて中野さんにお話をうかがっていたところだったんです。中野さんは今回初めてアニメーション作業を担当されたそうですね。

ラエン・城戸:もちろん、中野がどの程度できるのか算段をつけた上での決断でしたよ。

一同:おお〜。

ラエン・中野:......。

ラエン・城戸:もちろん不確定な要素もありましたが、試行錯誤の過程自体も大切なものです。不確定要素にどう対応するかがスキルの向上につながると思うんです。そして、ひき受けたからには責任もあるので「できませんでした」と、クライアントであるKOO-KIさんに言うことは許されません。

ラエン・中野:......。

ーー確かに、映像制作にかぎらず、ものづくりには常に新たな技術や表現への対応が求められますよね。

ラエン・城戸:中野は確かに今までモデラーとして活動してきましたし、3ds Maxを扱うも初めてでしたが、操作要領さえ覚えてしまえば何とかなるものなんですよ。

ラエン・中野:......。

ラエン・城戸:むしろ、演出の経験が少ないので絵コンテの意図を汲みとるのに苦労してましたね。まずは実際に自分で演技やポーズをとらせてアニメーションの参考にさせたり、第1話を何度も見返して各キャラの性格などを研究しながら作業するようにとアドバイスしました。

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会

RAENが参加した、第4話『サラへの寿司尋問』より
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ラエン・中野:アニメーションの参考としていただいた3ds Maxのシーンデータを開いたときはとても感動しました。キーフレームの置き方など、他のアーティストさんの作業内容を見る機会は滅多にありませんから。結果的にたくさんのことを学べたので今は参加できて良かったと思っています。

木綿監督:「やったことないので無理」ではなく、まずは「チャレンジしてみろっ!」ということですね。

ーーパイロット版の制作時と比べるといかがでしたか?

TriF・麻生:その頃は1話あたり約50カットの想定だと、木綿監督からうかがっていたのですが、本制作では平均70〜80カットになったのが......。

木綿監督:(カットイン)言い訳を今からしますけど、シナリオの段階で想定尺を2分もオーバーしているんです。つまり、5分想定の内容をなんとかして3分に収めなければと......これでもけっこう削ったんですよ。結果的にテンポを大切にすることで何度も見直しても飽きがこないような構成に仕上げることを心がけました。

DML・瀬戸本:たしかにシナリオ通りに絵コンテを描き、仮音を当てると絶対に尺が足りなくなるんです。そこで木綿監督に相談するのですが、セリフ回しなど様々なアイデアを反映させながら再構築してみると不思議と収まるんですよね。木綿マジックを目の当りにして感動しました。

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会

DMLが参加した、第6話『ルーツをめぐる死闘』より
© "SUSHI POLICE" Project Partners


TriF・麻生:木綿さんの編集テクニックって刺激的で何度見ても飽きないし見返す度に発見があるので勉強になります。

アイメージ・野方:納品したムービーと完パケを見比べるとカットが入れ替わっていたり、新しいカットが追加されていたりすることが往々にしてありました。実はそれを見つけるのが楽しみになっていたりもします。

木綿監督:やっと、ほめられたぁ~。

一同:(爆笑)

木綿監督:監督としての爪痕を残さなければという思いもあるのですが、面白いアイデアが浮かぶとそれを盛り込まないともったいないと考える性分なんですよね。そこでカットを入れ替えるなど最後までねばっています。セリフを変えたり、カット尺を変えることも多々あるので音響さんにはいつも怒られっぱなしですが(苦笑)。

DML・瀬戸本:OP、EDもハイセンスですよね。各話ごとにEDのアニメーションが微妙に異なるといった遊び心も趣きがあって好きだなあ。海苔巻きでデザインされた「To Be Continued」の文字が特に気に入ってます。

木綿監督:こう見えて、モーショングラフィックスがわりと得意なんですよ。

一同:(爆笑)(※3

※3:われながら野暮な注釈であるが、KOO-KIは創立当初からハイクオリティなモーショングラフィックスに定評あるスタジオとしてもよく知られている

木綿監督:OPはイチノミヤ(モトヒロ)くんに描いてもらったアメコミ調のイラストを素材として作成しています。EDでは、いつも「寿司雑学」というパートを設けているので、よりシンプルなイラストを用いてアニメーションと解説を両立できるように配慮しています。OPもEDも本編のように3DCGベースで制作するのはコスト的に厳しいという事情もあるのですが、一般的なアニメ作品との差別化を図るという意味でも自分たちの強みのひとつであるモーショングラフィックスを利用しました。

  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会
  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会

  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会
  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会

第7話のEDより。各話のEDには「寿司雑学」というミニコーナーが設けられており、寿司の食文化にまつわる蘊蓄がユーモラスなモーショングラフィックスで解説される

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<4>『SUSHI POLICE』第2シーズはあるのか!?

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<4>『SUSHI POLICE』第2シーズはあるのか!?

ーー一連の制作をふり返ってみていかがですか?

木綿監督:最終的に9社ものプロダクションさんにアニメーションを分担していただくことになりました。当初は話数ごとに動きのバラつきが出るかもと気にしていたのですが、exsaさんによる第1話が確かな指標になってくれたことで、最初からかなり高い水準でキャラクター性や動きが統一されていたのは驚きでした。

ーーまさに百聞は一見にしかずですね。

木綿監督:どのエピソードも作品に対する愛情が感じられる仕上がりになっていたのが本当に嬉しかったですね。とても良いチームだと思うので、セカンドシーズンが決まったときにはひき続きご協力お願いします!

河原:もちろん今回のような予算やスケジュール感にはならないようにしますので。ただ、1話あたりの尺は長くなるかもしれません......この取材の後にご意見お聞かせください!

ーーぜひ実現させてください。参加されたみなさん的にはいかがでしたか?

REDOT・横山:自分は3DCGよりAfter Effectsの方が得意なので次回はコンポジットなどで関われたら嬉しいです。

ーーえ、アニメーションはもうやりたくありませんか?

REDOT・横山:できれば、やりたくないですね(笑)。

一同:(爆笑)

木綿監督:それじゃ、EDを一緒にやりましょうよ!

REDOT・横山:ぜひ!

REDOT・福原康仁氏:REDOTでは、実写VFXの案件が多いのでアニメーションについて学べたことは良かったです。次も参加できるのなら、モデリングやリギングなどにも関わりたいですね。

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会

REDOTとBIGFOOTが参加した、第10話『黒幕の正体』より
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ストロボ・宮脇:パイロット版から参加させていただいたのですが、自分の付けたアニメーションが指標になるというのはとても刺激的な経験でした。最近は福岡発の作品が増えているので当社からも発信していければと思っています。

TriF・麻生:TriFが本格的にアニメーションを制作するのは初めての経験だったので、"芝居をつける"ことになにかと苦労しましたね。以前よりも何でも観察する習慣が自然と身につきました。KOO-KIさん初のアニメーションシリーズ企画にプロジェクトの初期から携われたことは貴重な体験でしたし、光栄に思います。

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会

TriFとStrobolightsが参加した、第11話『巨大怪獣スシラとの戦い 前編』より
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exsa・西田:第1話という重要なパートを担当させていただけて光栄でした。うちのスタッフたちにとっても良い勉強になりました。exsaでもオリジナル企画を進めているので、KOO-KIさんには製作委員会やコンテンツの展開の仕方についてお酒を飲みながらより深くお聞きしたいです。

木綿監督:ぜひ(笑)。KOO-KIとしても製作委員会に加わってみて、プロモーションなど実制作以外にどのような業務が必要になるのか身をもって知ることができたのは良い経験でした。外部パートナーさんを含めた現場のスタッフたちにはより良い条件の下で画づくりを進めてもらいたいので、今回得たノウハウをフィードバックしていきたいと考えています。

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会

exsaが参加した、第1話『スシポリス参上!』より
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DML・瀬戸本:キャラクターが本当に個性的で、自分たちも感情移入してしまいました。DMLとしてもぜひ次回作にも参加できればと思っています。

DML・前田:個人的にオリジナル作品に携わる機会が少なかったので、作品をつくりあげる過程をダイレクトに体験できたのが良かったです。トップダウンというよりはスタッフと意見を交わしながらボトムアップしていくという、『SUSHI POLICE』の手法は今後の仕事にも活かしていきたいですね。

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会

DMLが参加した、第9話『スシポリス包囲網』より
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バンブー・小ヶ倉:普段はAEでモーショングラフィックスやコンポジットワークを主に手がけているので、ひさしぶりにキャラクターアニメーションにがっつり取り組むことができて良い気分転換にもなりました。本作のようなオリジナル作品に携われる機会が増えていくと嬉しいです。

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会

BambooMountainが参加した、第8話『激突!スシポリス VS パスタポリス』より
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アイメージ・野方:全力を出しきったつもりでしたが、完成した本編を見返すとまだブラッシュアップできる余地があったと思えてなりません。そうした意味でも、ぜひセカンドシーズンにも参加させていただきたいです。

ラエン・中野:『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』が好きだったことから、この仕事につきました。ですが、今まではなかなかアニメーションを手がける機会が巡ってきませんでした。今回はキャラクターアニメーションについて、イチから学びながら死にものぐるいで制作したのですが、キャラクターたちに愛着をもって動きを付けているので、そうした想いがご覧になってくれた方々に少しでも伝わると嬉しいです。

ラエン・城戸:中野がここまで夢中になってくれるとは思っていなかったので嬉しいですね。また、福岡を中心にほぼ九州のCGプロダクションという体制でしたが、九州からオリジナルのシリーズ作品を世に送り出すことができるのだと勇気がもてました。ラエンとしても体制を拡充させた上でセカンドシーズンにも参加できればと思います。

木綿監督:今回得たノウハウやアセットがあるのでセカンドシーズン実現の際は、もう少しスムーズなスタートがきれるはずだと思っています。もしかしたら劇場長編として、なんてこともあるかもしれませんよ!

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会

第13話(最終話)『新たな看板』より。はたして続編は誕生するのか!?
© "SUSHI POLICE" Project Partners


CREW

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会

『SUSHI POLICE』中核スタッフ
(前列・左から)阿部晋之介氏、木綿達史監督、野方大輔氏、河原幸治プロデューサー、麻生秀一氏、中石賢悟氏
(中列・左から)川越洋輝氏、横山智人氏、西田陽一氏、中野皓太氏、城戸幸一氏、小ヶ倉伸行氏
(後列・左から)告畑 綾氏、福原康仁氏、和田泰明氏、宮脇瑛一氏、前田知宏氏、瀬戸本 勉氏


Info.

  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会
  • 『SUSHI POLICE』劇場公開決定
    全13話をつなげた特別編集バージョンが、 劇場公開版として7月9日(土)よりレイトショーにて、1週間限定公開。
    上映劇場:109シネマズ二子玉川、109シネマズ大阪エキスポシティ
    鑑賞料金:一律1,000円
    7/9(土)劇場公開初日に、109シネマズ二子玉川にてティーチイン付き上映決定! キャスト・スタッフが『SUSHI POLICE』制作秘話やここだけの裏話等を語り、観客の皆様からの質問にもお答えします(詳しくは109シネマズ×SUSHI POLICE特設サイトを参照)

    出演(声)ホンダ:山下 晶/スズキ:イフマサカ/カワサキ:岡本ヒロミツ/サラ:菊地由美

    監督:木綿達史/脚本:楠野一郎、安藤康太郎
    制作:セディックインターナショナル、KOO-KI
    製作:"SUSHI POLICE" Project Partners
    © "SUSHI POLICE" Project Partners

    sushi-police.com


  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第3回:プロダクション座談会
  • 『SUSHI POLICE』DVD・Blu-ray7月20日(水)発売
    【Blu-ray:『SUSHI POLICE 特上』】
    価格:3,480円(税別)
    本編:全13話(約45分)
    言語:日本語
    字幕:英語字幕
    <映像特典(約67分)>劇場公開版(全13話特別編集+オリジナルエンドロール)(約45分)/ティザームービー(予告編)/109シネマズスペシャルムービー『お寿司の作法』/マナームービー/幻のSUSHI POLICEパイロット版/人気の3エピソードの方言吹替バージョン(関西弁・名古屋弁・博多弁)/SUSHI POLICE映像資料集(キャラクターデザイン/メカデザイン/イメージボード/Vコンテほか)

    【DVD:『SUSHI POLICE 並』】
    価格:1,980円(税別)
    本編:全13話(約45分)
    言語:日本語
    字幕:英語字幕
    <映像特典(約51分)>劇場公開版(全13話特別編集+オリジナルエンドロール)(約45分)/ティザームービー(予告編)/109シネマズスペシャルムービー『お寿司の作法』/マナームービー

    www.amuse-s-e.co.jp/sushi-police/