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コロプラ流 『白猫プロジェクト』、『白猫テニス』を支えるエフェクト制作テクニック

コロプラ流 『白猫プロジェクト』、『白猫テニス』を支えるエフェクト制作テクニック

『白猫テニス』のエフェクト表現と制作手法

スポーツゲームならではのテンポを損なわないエフェクト

『白猫プロジェクト』のキャラクターが登場する対戦テニスゲームとして、この夏に配信が開始された『白猫テニス』。本作でも、エフェクトはキャラクターの魅力を引き立たせる重要な役割を担う。デザイナーのK.M氏は、前職はプリレンダーのCG映像制作会社にてアニメーションディレクターを務めていた。2015年にコロプラに入社し、現在はエフェクトを中心に監修・実制作を行なっている。「入社時からモーションを担当しています。前職でディレクション等の経験があるため、現在はマネージャーとしてメンバーを取りまとめる役割も担っています」(K.M氏)。本作に携わっているデザイナーのうち数名がエフェクトを担当しているが、やれる作業があればなんでもやるという体制。多様性が求められる現場だとK.M氏も実感したという。

  • K.M氏
    (サービス統括本部 デザイナー)


本作はオンライン対戦もあるスポーツゲームということで、いかにユーザビリティを保ちつつゲームを楽しんでもらうかが最重要視された。K.M氏によれば「エフェクトが原因でプレイのテンポが損なわれるようなことは絶対に避けねばなりません。そこは徹底してやっています」とのこと。プレイ中のスピード感を維持しながら仕上げていくのは、映像系CGにはない、スポーツゲームならではの難しさだという。そうした制約の中で、エフェクトの視認性やリッチ感を模索しつつ調整がくり返された。「ゲームの性質上できることは限られてきますが、シンプルな手法を使ってアイデアを落とし込んでいく楽しさがあります」とK.M氏は話す。

また、エフェクト制作ではよりリッチに仕上げることに集中してしまいがちだが、派手にしすぎても視認性が低下してしまうため、形状はできるだけ見やすく、画面内でメリハリがあり、かつリッチに見えるよう仕上げていく必要がある。「エフェクトは通常は加算で重ねられますが、これをくり返すと色味が損なわれて白く飛んでしまいます。素材段階ではできるだけ濃く彩度の高い状態にしておき、実機で細かくチェックを重ねました」とM氏。加えて、ひと目でショットの効果がわかるような表現になっているかどうかもシビアにチェックされる。

さらに、テニスゲームである一方、前身として『白猫プロジェクト』が存在するため、そのキャラクターをきちんと演出することも望まれる。すでに紹介した通り『白猫プロジェクト』のエフェクトは非常に自由度が高く、本作においてもその気風は継承されている。個性的なエフェクトのアイデアが『白猫テニス』へどのように活用されているか、担当した各エフェクトデザイナーの工夫もまた楽しみどころと言えそうだ。

分割テクスチャで構成する魔法陣

▲分割した魔方陣のテクスチャをエフェクト作成時に再構成することで容量を削減する方法は『白猫テニス』でも活用されている。<A>は『白猫テニス』のオリジナルキャラクター「アイラ」のスーパーショット着弾時エフェクト。多数の要素から構成されているが、そのうち4種を1枚のテクスチャ<B>でまかなっている。<C>は完成した魔法陣

モデルを含んだエフェクト表現

▲板ポリゴンにテクスチャを貼ったエフェクトだけでなく、『白猫プロジェクト』と同じくモデルを使った演出も存在する。龍<A>や火の鳥<B>が打ち出されるスーパーショットのほか、10月のイベントに合わせて配信されたキャラクターのスーパーショットでは、ハロウィンに合わせてかぼちゃとお化けをモチーフにしたエフェクト用モデル<C>も登場した

スーパーショット以外のエフェクト

▲エフェクト班はスーパーショット以外にも様々なエフェクトを制作する。対戦勝利時やタワーの最上階到達時などに表示されるUIエフェクトもそのひとつだ。タワーの最上階に到達したときのエフェクトでは、<A>のようなスプライトのみならず星型のモデル<B>も使用してリッチに仕上げられている。<C>はエフェクトを含む各要素の位置関係を3D空間上でわかりやすく示したもの。<D>は実機画面上での見映え。このほか、ステージごとに背景で発生する煙などもエフェクト班が制作している

色味調整による視認性の向上

▲コートの色は標準的な緑(グラス)<A>のほかに、赤(クレー)<B>、青(ハード)<C>が存在し、エフェクトはそのどれに重ねられても過度に飽和することなく発色する必要がある。特に「氷」属性のエフェクトはそもそも白や淡い青が基調となるため飽和しやすく、調整が難航したという。図は調整済みのもの。また、コートとエフェクトの色合いが似てしまう場合はどうしても明快な印象が損なわれてしまう。そんなときは事前に影を乗算してからエフェクトを重ねることで、単純に重ねた時よりもメリハリの利いた結果が得られる。<D>影なし/<E>影あり

ユーザーへ効果を提示する演出の工夫

▲スーパーショットには様々な効果が存在するが、ゲームのテンポ感を損ねずその見た目でユーザーに効果を察知してもらう必要がある。短い時間で的確に内容を伝えつつ、キャラクターの個性を魅力的に提示できるか否かはエフェクト担当者の腕の見せどころだ。<A>はコウモリと蜘蛛の巣をモチーフにしたスーパーショットの仕様書。「豪華」というルックへの指示があるが、完成エフェクト<B>では蜘蛛の巣に薔薇をイメージした装飾が施され、また打った瞬間には薔薇の花びらが舞う。もともとアニメーションディレクターを務めたK.M氏の経験値に裏打ちされた演出力が光る仕上がりだ

作画アニメーターによるエフェクト

▲映像系、広告系などゲーム業界に限らず様々な経歴のデザイナーが集まるコロプラだが、こちらはアニメ業界出身のデザイナーが担当したエフェクトの事例。<A>炎エフェクト、<B>ビームエフェクト、<C>水エフェクトの各素材。それぞれUVアニメーションとして用意されており、テクスチャサイズは炎が128×128、ビームが256×256、水が512×256となっている。小さい面積の中に作画アニメーターとしての職人技が光る。<D>は炎エフェクトの完成画像。先ほどの素材に煙、大きな火の玉、波動状の各素材が組み合わせられ、手描きの風合いが迫力と共に独特の雰囲気を演出している

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クリエイティブの部長・マネージャーに聞く エフェクトデザイナーに求められる素質

Profileプロフィール

コロプラ/colopl

コロプラ/colopl

K.M氏(サービス統括本部 デザイナー)、大山 源氏(サービス統括本部 部長)、C.Y氏(Kuma the Bear開発本部 デザイナー)、M.M氏(Kuma the Bear開発本部 マネージャー)

http://colopl.co.jp/

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