>   >  「アーティストとしての本分をまっとうしたい。」バーチャルヒューマンプロジェクト『Saya』、中核メンバーたちが思いの丈を語り合った。
「アーティストとしての本分をまっとうしたい。」バーチャルヒューマンプロジェクト『Saya』、中核メンバーたちが思いの丈を語り合った。

「アーティストとしての本分をまっとうしたい。」バーチャルヒューマンプロジェクト『Saya』、中核メンバーたちが思いの丈を語り合った。

<2>ネガティブな意見は、期待の高さの裏返し

ーー「CEATEC JAPAN 2016」にて、ついに動くSayaが初公開されました(※1)。その反響はいかがでしたか?

※1:2016年10月3日(月)から7日(金)まで幕張メッセで開催された「CEATEC JAPAN 2016」。そのシャープブースにて、8K規格のCGアニメーション『la robe bleue』(青い服の少女)の一部パートが上映された。
www.sharp.co.jp/corporate/event/ceatec2016/

友香:今回にかぎりませんが、ポジティブな意見とネガティブな意見のどちらもありましたね。Twitterなどインターネットからいただくコメントはいつも気にしていますよ。プレッシャーに感じたり、落ち込むこともありますけど、エンターテインメントにおいてはそうした容赦のない声は付きものですよね。もちろん建設的なご意見もいただくので、自分たちの創作を客観的に補正するという意味でも大切にしてます。

晃之:わたし自身はSNSをやってないので、ネットの声を知る術がないというか(笑)。とは言え、友香を介してだいたいのところは把握しています。人の考え方や好みは千差万別なので、全ての意見をダイレクトに受け容れるべきではないと考えています。ただ、何かひっかかるものを感じたときは、自分たちなりの解釈を加えながら消化してますね。

友香:お互いにアーティストとしてのこだわりや信条もあるので、制作中はよくふたりでケンカもするんですよ(笑)。実は、そんなときにネットの声がわたしの味方になってくれるという利点もあるんですよね。「ほら、こういう意見もあるじゃん!」的な。

一同:(笑)。

晃之:そうなると、わたしとしても対応せざるを得ません。客観的な根拠ですから(笑)。また、今こうした活動に取り組めているのは、様々な意見を取り入れてきたからだという自覚もあります。無下に反論するのでは不毛ですし、色んなご意見を聞かせていただければと思います。

友香:とにかく、『Saya』への期待は大きなものだと改めて感じます。わたしたちのために時間をとって意見を寄せてくださっているわけなので、批判的なものは期待の裏返しなんだと前向きに受け止めるようになりました。

亀村:ネットの反響はどうしてもバイアスがかかりがちになるので、受け手側で補正しながら役立てていくのが良いですよね。貴重な意見になると思います。

ーーみなさんのポジティブさは、ハンパないですね。

亀村:昨年10月に、3枚の静止画を初公開したときから、エンタメとしてだけではなく介護ロボットなど、"未来のライフスタイル"的な意見も上がっていたんですよ。一般の方にもそうした想像をふくらませるほどのコンテンツ力を『Saya』が秘めているのだと実感しました。そんな『Saya』が動画になり、さらにAIを積んでよりインタラクティブでヴァーチャルリアリティ的なものとして日常生活にも浸透していくのかもしれない。そんな未来を垣間見た気がします。

友香:コンテンツが多くのものを引き付ける原動力になっているのだと思いました。最初は小さな取り組みだったものが、様々な意見を交えながらわたしたちの背中を押すことで成長していくというのがとても面白いですね。『Saya』の可能性は無限大だと思います。

「アーティストとしての本分をまっとうしたい。」バーチャルヒューマンプロジェクト『Saya』、最新状況を中核メンバーが語り合った。

Sayaを演じた吉良愛実氏は、ツークン研究所に在籍するCGデザイナーである。「彼女がアクターを演じるのは初めてのことでしたが、日頃はキャプチャ業務やアニメーション制作を手がけているので勘どころが良く、効率的に収録することができました」(三鬼氏)

ーーところで、今年の4月から『Saya』の制作に専念されているとのことですが、TELYUKAさんの一日には「何時に起きる、寝る」といった決まりがあるのですか?

友香:オフはほとんどありません(笑)。ずーっと作業しているので、土日の感覚もないですね。

晃之:休みたくて休むのではなくて、疲れて倒れちゃう的な(笑)。

友香:それ以前も仕事をしながら、土日や余暇を自主制作に割り当てていたのでスタイルとしては変わらないんですよ。ふたりともつくることが好きなので、CGがライフスタイルの中心になってしまっているんです。

晃之:ただ、仕事の合間をぬっての自主制作だと、どうしても不完全燃焼になってしまっていたんですよね。その意味では、現在の『Saya』に専念するというスタイルは、本当に自分の好きなものに注力するという、自分たちに投資をしている感覚ですね。

友香:実は、わたしから見て主人の健康状態や精神状態を考えると、会社に勤めるよりもフリーランスとして自宅で好きな創作に集中することで収入を得られるスタイルを確立した方が良いのだと思ったんです。

ーーそうした働き方もありますよね。

友香:そもそも"つくりたい"と思って3DCGを始めたはずなのに、キャリアを重ねていくと画一的に(個人の資質や志向は考慮されずに)管理職として実作業に携われなくなってしまうという慣習的なものに対して疑問があります。一番技術が潤ってて、適切な判断もできる時期につくれないというのは実作業に携わり続けたいと思っているアーティストには酷だと......。そうした想いもあってのTELYUKAなんです。こうした仕事スタイルを成り立たせられないのかなと。

「アーティストとしての本分をまっとうしたい。」バーチャルヒューマンプロジェクト『Saya』、最新状況を中核メンバーが語り合った。

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<3>『Saya』プロジェクトの展望

Profileプロフィール

『Saya』プロジェクト中核メンバー/Virtual Human Project "Saya"

『Saya』プロジェクト中核メンバー/Virtual Human Project "Saya"

左から、亀村文彦氏(ロゴスコープ)、石川晃之&友香氏(TELYUKA)、三鬼健也氏、木下 紘氏、高橋沙和実氏(以上、ツークン研究所

バーチャルヒューマンプロジェクト『Saya』

スペシャルインタビュー