近年、韓国や台湾、インドをはじめ、アジア各国にCGやVFX、アニメーション制作会社が続々と設立されている。その中でも実績と規模の両面において最高ランクに位置するのが、中国のBase FXだろう。同社は『パシフィック・リム』(2013)、『トランスフォーマー/ロストエイジ』(2014)、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)といったハリウッド映画のなかでもVFX大作で力を発揮しており、ハリウッドの映画スタジオからの信頼も日増しに厚くなっているそうだ。拠点を中国に置きながらここまでの実績を上げているBase FXとは、どのようなスタジオなのだろうか。またいかにして現在の地位を確立したのか。今回、Base FXの中心的な人物であり、日本でも昨秋に公開された映画『スター・トレック BEYOND』にて、同社のVFXスーパーバイザーを務めたリー・ガン(李 赓)氏へインタビューを行う機会にめぐまれたのでここにお届けする。

※本記事は、2016年11月5日(土)に実施したインタビュー内容に基づきます。

INTERVIEW_奥居晃二 / Kouji Okui
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)
Special thanks to Base FX and The Foundry Japan



<1>ハリウッド案件をコンスタントに受注する秘訣とは?

ーー日本ではBase FXのことはよく知られていません。まずは、Base FXの成り立ちからお聞かせください。

Base FX・リー・ガンVFXスーパーバイザー(以下、リー): Base FXは、オーナーで創立者のクリストファー・ブレンブル/Christopher Brembleが2006年に北京で設立しました。彼はもともとハリウッドでシナリオライターとして活躍していた人物で、北米の映像産業に通じています。私たちはこれまでに多くの映画やTVドラマシリーズなどを手がけてきているのですが、参加プロジェクトの中にはエミー賞受賞作品が3つ、アカデミー賞ノミネート作品が2つあります。

中国のVFX業界が急成長中! 同国最大規模のBase FX流ハリウッド案件をコンスタントに手がける秘訣 〜映画『スター・トレック BEYOND』メイキング〜

リー・ガン(李 赓)/Li Geng
Base FX所属。『スター・トレック BEYOND』(2016)では、Base FXのVFXスーパーバイザーを務めた。近作では、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)ではVFXリードとして、『トランスフォーマー/ロストエイジ』(2014)ではリード・コンポジターとして参加。TVドラマでは、『Black Sails』(2014〜)や『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』(シーズン1)などにリード・コンポジターとして参加。現在は、『パシフィック・リム:暴動(原題:Pacific Rim: Uprising)』(2018)に携わっているとのこと。
www.base-fx.com


ーー制作規模はどのくらいですか。

リー:現在、北京の本社をはじめ3か所に制作スタジオをもっています(北京、無錫、廈門)。そしてマレーシアにも新スタジオをオープン予定です。LAにもオフィスはありますが、制作機能は有していません。スタッフ総数は500人ほどで、そのうち400人以上がアーティスト、半数以上が北京の本社で活動しています。

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Base FX北京スタジオの内観

ーー中国にいながらにして、どうやってハリウッドの大作のVFXを手がけるようになったのですか?

リー:実際のところオーナーであるクリスの存在が大きいですね。2010年からハリウッド映画のVFX制作にも携わりはじめたのですが、2012年5月にルーカス・フィルムならびにIndustrial Light & Magic(ILM)と戦略的提携契約(Strategic Alliance Agreement)を交わしたことが転機となりました。それ以降、ILMの案件を継続して請け負えているのですが、一度良い仕事をすると別のプロダクションにも興味をもってもらえるので、今では欧米の大手VFXスタジオから多くのオファーをいただけてます。

bfx_collection_2006-2015 from BASE FX on Vimeo.
2006年から2015年にかけてBase FXが手がけた代表作をまとめたデモリール


ーーどのようなVFX表現を得意とされていますか。

リー:どんな表現にも対応できる体制を構築しているつもりですが、ハリウッドではリアリスティックなクリーチャー表現が得意なスタジオだと認識してもらえているようです。そうした表現に不可欠なリアルなテクスチャ、自然に見えるアニメーションには大きな自信をもっています。実写合成も得意で、中国内の3スタジオ合計で約100人のNUKEコンポジターが在籍しています(※1)。

※1:The Foundryによると、Base FXは中国国内では最大規模のNUKEライセンス数を有しているという。

ーーNUKEが話に出てきましたが、その他にはどのようなDCCツールをお使いですか?

リー:アニメーション(ショットワーク)にはMayaを、エフェクトにはHoudiniを主に用いてます。ほかにも3DペインティングにはMARIを。また実写プレートのトラッキングにはSynthEyesを使っていたりするのですが、ILMからMARSという自社開発のトラッキングツールが提供されているので通常はこちらを使っています。パラメータが豊富にあって、正確なカメラのトラッキングを可能にしてくれるので重宝していますよ。あとは、プロジェクトの進捗管理にSHOTGUNを利用しています。

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ーーハリウッド作品に携わるということは、当然ながらハリウッド基準のハイクオリティなVFXが求められると思うのですが、アーティストの人材育成はどのように行なっているのでしょうか?

リー:Base FXでは3つのレベルのトレーニング・システムを設けています。外部から入社したアーティストのスキルや経験値に合わせてプログラムが適用されます。1つ目は十分な専門的なスキルをもっている方向け、約1週間のトレーニングで、社内のパイプラインやインハウスツールの使用法などを学んでもらいます。2つ目は一般大学の卒業者(業界未経験者)、あるいはDCCツールの技能や業務の経験値が不足している方向けの「BASEキャンプ」という名前のコースです。こちらは、約3か月の期間でBase FXのプロダクション・チームに在籍するアーティストから、ツール操作からはじめてプロとして必要な知識全般について教わることになります。そして、3つ目が「BASEアカデミー」と名付けた外部にも開かれたテクニカル・スクールで、ちょうど開講に向けて準備を進めているところです。

ーーILMをはじめ、欧米の大手スタジオと協業していくにあたって、Base FXではどのような体制を敷いているのですか?

リー:まずデータの受け渡しに関しては、社内に「I/O部門」という専門部署が存在します。Base FX社内ではパイプラインを一本化し、統一された仕様に基づいて制作を行なっているのですが、クライアント(欧米の大手スタジオ)では、それぞれ独自のパイプラインを構築していますよね。そこでI/O部門がデータの形式、ネーミングルール、フォルダー構造などを外部に合わせてコンバートする役割を担っているんです。またクライアントとのコミュニケーションは基本的に英語で行われます。当然ながら中国のスタジオにとっては大きなチャレンジですが、実はアーティストが英語コミュニケーションを求められることはまずありません。各案件の予算や進捗管理、営業などは「プロダクション・チーム」が担当していて、このチームのメンバーは全員が英語を話せるのです。もちろんアーティストでも自分のようなスーパーバイザーの場合はクライアントと直接コミュニケートする必要があるので相応の英語力が求められますけど。

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Base FX北京スタジオの作業スペース。北京スタジオには200名以上のアーティストが在籍しているとのこと



<2>ハリウッドと中国の架け橋を務める

ーーリーさんご自身は流暢な英語を話されますが、どのようなキャリアを歩まれてきたのですか?

リー:大学ではデジタル・メディア・アートを専攻しました。卒業後はクリスタルVFXというプロダクションに入社し、モーショングラフィックス・アーティストとして「北京オリンピック」(2008)向けの映像制作に携わったりしていたのですが、2〜3ヶ月後には縁あってBase FXへ移籍しました。その後はコンポジターとしてキャリアを重ね、現在にいたります。英語については、ごく普通に中学、高校、そして大学の授業で学んだ程度ですよ。英会話に苦手意識をもたずに済んだことが幸いなのかもしれません。

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ーーリーさんがハリウッド案件に携わる際に、ひとりのアーティストとして心がけていることを教えてください。

リー:VFX制作は実写素材がベースとなります。合成したものがいかに自然に見えるかが重要なわけですが、そのためにはどれだけディテールにこだわれるのかが決め手になるのではないでしょうか? リファレンスとなる資料や素材を集めることも大切ですね。以前に携わったハリウッド作品では、ある1ショットのコンポジット作業のリテイクが200回にも達したことがありました。コンポジットワークなので、CG工程に比べれば1回あたりの修正にはそれほど時間は要しませんが、それでも1ショットに3ヶ月も費やしました。裏を返せば、ハリウッド作品のVFXにはそれほどのハイクオリティが求められるわけです。

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Base FXはオーナーのクリス・ブレンブルがハリウッド出身である影響か、オフィス内の雰囲気はどこか欧米スタジオのそれと近いものが感じられる。広い施設、大きな試写室、またスタジオあげてのハロウィーンやメモリアルデーのパーティなども行われるなど、大規模なスタジオにも関わらずアットホームな空気に満ちているという

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着実に制作実績をかさねていくのに伴い、欧米の有力スタジオからBase FXへ移籍してくる人材も増えているとのことで(スーパーバイザークラスの大物もいるのだとか)、世界的にもビッグタイトルを手がけるのにふさわしい体制が整いつつあるようだ

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<3>『スター・トレック BEYOND』では、良質なインビジブルエフェクトを短期間で実現

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<3>『スター・トレック BEYOND』では、良質なインビジブルエフェクトを短期間で実現

ーーそれでは、本題の『スター・トレック BEYOND』プロジェクトについて聞かせください。Base FXとしては、どれくらいの規模で制作に臨んだのでしょうか?

リー:関わったアーティストはピーク時で260名以上、平均150名ほど。スケジュールとしては、全120ショットを約3ヶ月で完成させる必要がありました。

『スター・トレック BEYOND』ブルーレイ&DVD 予告編

ーー非常に短期間での制作になったようですね。

リー:そうですね。実は、われわれはポストプロダクションのかなり後期になってからの参加でした。当初担当する予定だった他社がやりきれないことが発覚し、Kelvin Opticalから、手伝ってほしいと相談をうけたのです。Kelvin Opticalは、本作のエグゼクティブ・プロデューサー J・J・エイブラムス自身のプロダクションBad RobtがつくったVFXスタジオになるのですが、Kelvin OpticalのVFXスーパーバイザーとやりとりするかたちで作業を進めました。打ち合わせやレビューの際はcineSyncを利用しました。

ーーどのようなVFXを担当されたのでしょう?

リー:大きくは4種類です。1つ目は、様々なキャラクターのフェイス・リプレイスメント。2つ目は、クラールのアジト(地下)のエンバイロンメントの制作。3つ目は、本作の敵となるクラール(イドリス・エルバ)が率いるロボット兵士、通称「マローダー(marauder)」のキャラクター・アニメーション。そして4つ目が、エンタープライズ号内部のセット・エクステンションです。特にフェイス・リプレイスメントは今回初めて取り組んだ表現だったこともあり、苦労しましたね。

ーー4種類のVFX制作について具体的に教えていただけますか。まずはフェイス・リプレイスメントからお願いします。

メイキング(1):フェイスリプレイスメント

リー:いくつかの難題があったのですが、最もシンプルだったのはジェームス・T・カーク船長(クリス・パイン)らメインキャストの顔の差し替えです。スタントマンが演じた実写プレートに対して、各キャストの3Dスキャンデータを基に作成したデジタルダブルで動きを合わせて顔を入れ替えていきました。デジタルダブルのモデルやテクスチャは、Kelvin Opticalから提供された素材をわれわれの方で適宜調整しています。一連のショットは大抵ワイドショットだったので、顔のディテールがはっきり見えることが少ないことに助けられましたね。逆に難しかったのが、CGで何らかの要素を追加する必要のあるキャラクターです。顔の一部を変形させる、顔だけでなく頭部全体を3DCGのものに入れ替えるといった類です。シル少尉(メリッサ・ロクスバーグ)というキャラクターは後頭部に甲殻類のような指(足)が付いているのですが、撮影時にガイドとなった特殊メイクによる指をペイントで消して、3DCGで作成した動いている指に置き換えなければなりませんでした。また、スールー(ジョン・チョウ)がクラールの特殊能力によって生命力を吸いとられる表現では、顔に血管が浮き出る効果をCGで加える必要がありました。

ーーひとくちにフェイス・リプレイスメントといっても、多岐にわたったわけですね。

リー:後半にU.S.S.エンタープライズ号の乗組員がクラールに生命力を吸い取られた瀕死の状態で倒れているというシーンが登場するのですが、これもまたデジタルダブルの顔に置き換える必要がありました。ですが、メインキャストではないため、その俳優の顔の3Dスキャンデータがなかったため、写真からモデルを起こす必要がありました。細かく動く目の表情を全てデジタルダブルで置き換えるのは大変だったので、目の部分だけは実写素材を活かしています。

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image courtesy of Base FX
劇中後半に登場する、U.S.S.エンタープライズからの脱出をはかるクラールに生命力を吸い取られて瀕死状態で廊下に倒れているクルーのフェイスリプレイスメント。(左図)実写プレート/(右図)リプレイスメント処理を施した完成形


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  • 俳優の写真素材を元にイチから手作業で作成した頭部の3DCG素材の例
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リー:フェイス・リプレイスメントの中で最も苦労したのが、クラールの顔がCGの頭から実写の特殊メイクの顔へと徐々に変化していく表現ですね。完全にエイリアンの風貌(CGの顔)、俳優のスキャンモデルに写真から起こしたテクスチャを貼って形状を調整した途中段階のもの、生身の俳優に特殊メイクを施したものという、3段階で徐々に変化させるのですが、そのアニメーションが自然に見えるよう細かな調整を繰り返しました。ジャスティン・リン監督からは、顔全体が同時に変化するのではなく、部位ごとに段階が異なっているという複雑な変化を求められたので、予め3つの状態で動きの合った素材を用意し、どの部分がどの段階にあるかをコントロールするためのマスクをエフェクトチームで作成。そのマスクを使ってNUKE上で変化の段階を細かく調整しながらコンポジットしました。

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特殊メイクアップが施されたクラール役のイドリス・エルバに演技指導を行うジャスティン・リン監督

メイキング(2):敵アジトの3DCG環境

ーー続いて、クラールのアジトの3DCG環境(Environment)の制作についてお聞かせください。

リー:実は、この制作のためにBase FXとしては初めてエンバイロンメントの専門チームを起ち上げました。背景アセットについてもKelvin Opticalから提供されたものをベースに、モデラー3名体制で2〜3週間かけてブラッシュアップしていきました。岩や橋などのモデルが非常に精密だったことに加え、いずれもClarisse iFXで作成されていたため、われわれもClarisseベースのパイプラインを構築しました(これもまた初めてとのこと)。Clarisseでは、数千単位の膨大なモデル数を扱ったシーンであってもリアルタイムでプレビューできるのが利点ですね。とは言え、導入した当初は問題もありました。例えば、Base FXが通常カラーグレーディングに使っているCDLフォーマットが非対応だったり、十分な数のレンダリング用ライセンスを確保できなかったりと......。そうした問題については、制作を進めながらひとつひとつ解決していきました。

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image courtesy of Base FX
クラールのアジト地下の環境はフルCGで作成された。(左上)実写プレート/(右上)3DCGで作成した環境/(左下)Houdiniのcrowd機能による群衆表現/(右下)完成形


リー:囚われたエンタープライズ号のクルーたちの群衆表現には、Houdiniのcrowdを利用しています。アニメーターがデジタルダブルでアニメーション・サイクルを作成し、それをライブラリ化したものをHoudiniで配置しました。全部で32ショット制作したのですが、そのうちの1ショットはまるまる1ヶ月かかったものもあります。フェイスリプレイスメントに次いで多くの時間を費やしましたね。

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メイキング(3):敵兵たちもフルCGで作成

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メイキング(3):敵兵たちもフルCGで作成

ーーフルCGで作成したという「マローダー」たちの制作についてはいかがでしたか?

リー:マローダー(クラールの兵士たち)は全てCGアニメーションで仕上げています。キャラクターモデルは提供されたものですが、バリエーションを出すためにテクスチャについてはBase FXで作り直しました。23ショット分をアニメーター約10名とロト・ペインター約30名で分業しました。実写プレートはマローダー役のスタンドイン込みで撮影されているので、全てロトスコープやペインティングでクリーンアップする必要がありました。またキャラクターアニメーションについては、今回はモーション・キャプチャではなく、全て手付け(キーフレーム)で作成しています。

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  • image courtesy of Base FX
    (左)実写プレート/(左下)クリーンアップした撮影にCGアニメーションを配置/(右下)エフェクトを合成し、ルックを整えた完成形


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メイキング(4):エンタープライズ号のセット・エクステンション

ーー4つ目のセット・エクステンションについてお聞かせください。

リー:エンタープライズ号内部のセット・エクステンションの一部を担当したのですが、全部で62ショットを制作しました。大きくは2種類あって、ひとつは冒頭のクラールたちがエンタープライズ号に乗り込んでくるという強襲シーン。もうひとつはエンタープライズが撃破され、謎の惑星に不時着した後、夜になってからカーク船長たちが船内に戻ってくるシーンです。こちらでは、カラーラ(保護した異星人)が実はクラールとつながっていたことわかり、戦闘がはじまるのですが、激しいアクションを伴うためスタントマンが演じています。そのため、フェイスリプレイスメント処理も施す必要がありました。こうしたセット・エクステンションも、Base FXが得意とするところだったりします。

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  • image courtesy of Base FX
    不時着したエンタープライズ号内部にカーク船長たちが潜入するシーンのセット・エクステンション。(上段・左)実写プレート。危険なアクションを伴うため、図中のチェコフ(アントン・イェルチン)はスタントマンが演じている/(上段・右)クリーンアップされた実写プレート/(中段・左)スタントマンの顔周りに、アントン・イェルチンの3Dスキャンデータから作成したフェイシャル・アニメーションを合成/(中段・右)背景CGを合成し、CGと実写素材を馴染ませる/(下段・左)ルックを整えた完成形


ーー今回VFXスーパーバイザーとして参加されしたとのことですが、プロジェクトをふり返っていかがでしたか?

リー:非常に短い期間で多くのことをやりとげる必要があり、これまで私の関わった作品の中では最も複雑でチャレンジングなプロジェクトになりましたね。ですが、苦労しただけ成長できたと思います。

中国のVFX業界が急成長中! 同国最大規模のBase FX流ハリウッド案件をコンスタントに手がける秘訣 〜映画『スター・トレック BEYOND』メイキング〜

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© 2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED. STAR TREK AND RELATED MARKS AND LOGOS ARE TRADEMARKS OF CBS STUDIOS, INC.

作品情報

  • 中国のVFX業界が急成長中! 同国最大規模のBase FX流ハリウッド案件をコンスタントに手がける秘訣 〜映画『スター・トレック BEYOND』メイキング〜
  • 映画『スター・トレック BEYOND』
    2017年2月22日(水)Blu-ray&DVD発売(予定)


    <ブルーレイ+DVDセット>
    価格:3,990円+税/品番:PJXF-1075
    ※その他のパッケージも複数ラインナップ(詳しくは公式サイトを参照)

    監督:ジャスティン・リン
    脚本:サイモン・ペッグ&ダグ・ユング
    キャラクター原案:ジーン・ロッデンベリー
    製作:J・J・エイブラムス、ロベルト・オーチー、リンジー・ウェバー、ジャスティン・リン
    プロダクションVFXスーパーバイザー:ピーター・チャン
    VFX制作:Double Negative、Atomic Fiction、Kelvin Optical、Rodeo FX、Base FXほか

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