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CGや映像の制作で利用するPCを選ぶ際に、「CPU」や「GPU」を優先する人は多いだろう。場合によっては「メモリ」や「ストレージ」の性能を妥協し、CPUやGPUの性能をワンランク上げるケースもあるかもしれない。もちろん、それはPC選びの選択肢としては間違いではないが、メモリやストレージのスペックが作業効率や使い勝手に与える影響は、実は小さくない。

そこで今回は、人気の高いメモリ/SSDブランドであるCrucialの製品を使用し、性能や使用ツールなどによる違いをチェック。自らもCrucialユーザーだという khaki横原大和氏 に、Cinema 4DAdobe PremiereSubstance PainterArnoldといった普段使用しているDCCツールを用いて検証してもらい、Crucial製品の実力とメモリ/SSD選びのポイントを探った。

TEXT_近藤寿成(スプール)
EDIT_池田大樹(CGWORLD)

▼INDEX

・メモリ・ストレージの役割と主要タイプ
・khaki作業環境
・メモリ比較検証
・ストレージ比較検証
・まとめ

メモリやストレージの役割と主要なタイプについて

まず初めに、Crucialやメモリ、SSDの概要などについて触れておこう。

Crucialは、世界最大級のメモリメーカーである「Micron Technology」が展開するコンシューマ向けブランドである。Micron Technologyは1978年設立の歴史あるメーカーで、メモリの本体ともいえるDRAMチップを現在も製造する数少ないメーカーの1つであり、SSDの主要部品であるNANDフラッシュメモリも製造している。つまりCrucialは、メモリやSSDの「中心パーツを製造するメーカーのブランド」というわけだ。


その意味で、他社から提供されたパーツで製品を提供する他のブランドとは一線を画す「信頼性」がポイントと言える。さらに、Crucialは製品の各パーツに厳しいテストを実施することで、品質管理にも取り組んでいる。そのため、実際の使用時の安定性にも定評があることから、ワンランク上の信頼性が魅力といえるだろう。

次に、メモリとSSDの概要や性能の違いについて簡単に説明する。メモリは、PCで利用するデータを一時的に保存するパーツだ。何らかの処理を行う際には、メモリ上にデータを展開して実行されるため、メモリ容量が大きければ大きいほど、スムーズに処理できるようになる。これについては、ご存知の人も多いだろう。

一方で、メモリの性能は「DDR4-2666」「DDR4-3000」「DDR4-3200」といった感じで表記されることがある。このうち、"DDR4"はメモリの規格を表すもので、前の世代には"DDR3"などがあるが、現在はDDR4がメインとなっている。

そして、その後ろの数字は「メモリクロック」を示しており、簡単にいうと「メモリクロックの数字が大きくなるほど、より多くのデータ転送が可能になる(=高性能メモリ)」といったイメージだ。ただし、CPUのクロック数などと違い、例えば「メモリのクロック数が10%上がると、それに比例して処理性能も10%上がる」のかというと、そう単純ではない。そのクロック数のデータ転送量を上限まで使い切るような処理でないと効果が出にくいため、その点には注意が必要だ。

SSDは、HDDと同様にストレージの一種で、データの保存に利用されるパーツだ。HDDよりも「データ転送速度が劇的に速い」のが特徴であるほか、HDDのような回転する磁気ディスクがないため「衝撃に強い(=故障しづらい)」という点も大きなメリットとなる。半面、HDDよりも圧倒的に「コストが高い」という点がデメリットである。

また、SSDに関係するいくつかの用語についても補足説明しよう。まず「M.2」はSSDを接続する端子の規格で、従来の「SATA」のようなケーブル接続ではなく、本体をマザーボードなどの専用端子に直接差し込むタイプとなる。

次に「NVMe」は、SSDなどのフラッシュメモリ向けに最適化された通信プロトコルのこと。PCIe 3.0 x4と組み合わせることで、理論上のデータ転送速度は最大40Gbps(5GB/s)まで対応する。SATAは6Gbps(750MB/s)が最大となるため、大幅な性能アップが期待できることになる。

なお、今回の検証ではCrucialのメモリ「Ballistix 32GB Kit (2 x 16GB) DDR4-3600 Desktop Gaming Memory」(以下Ballistix 32GB)、

SSDには、「Crucial P5 1000GB PCIe M.2 2280SS SSD」(以下P5 1000GB)を使用した。価格はBallistix 32GBが約2万3000円、P5 1000GBが約1万9000円となる。

Ballistix 32GBは、アルマイト処理済みヒートスプレッダーを装備した上位モデルで、ゲーミング向けにオーバークロックにも対応。DDR4-3600はBallistixシリーズとしては最上位にあたり、Crucialブランドのメモリ全体としてもDDR4-4400、DDR4-4000に次ぐ3番目のハイスペック仕様となる。
またP5は、Crucialブランドで最上位のSSDで、M.2のNVMe(PCIe 3.0 x4)接続に対応。シリーズとしては1TBの他に250GB、500GB、2TBが選べる。

メモリは信頼性でCrucialを選択
ストレージはHDDからSSDへ

今回の検証は、KhakiでCGゼネラリスト/CGディレクターを務める横原大和氏にお願いした。Khaki は、CMやミュージックビデオ、イベントの大型映像から、VRや映画まで、さまざまなコンテンツを制作するCGプロダクション。最近では、人気漫画『約束のネバーランド』の実写映画において、劇中に登場する鬼を中心としたVFXのリードプロダクションを担当した(※)

(※)VFXアナトミー「若手が中心となり"鬼"を創り出したハイクオリティなVFX、映画『約束のネバーランド』」を参照


  • 横原大和氏


    khaki 取締役

さまざまなCGに携わる仕事柄から、Substance Painter、Photoshop、Houdini、Cinema 4D、ZBursh、Arnoldなどの多彩なツールを使いこなす横原氏。自身が利用するPCは、CPUが「AMD Ryzen Threadripper 3970X」(32コア / 64スレッド / 3.70GHz /最大ブースト・クロック4.5GH)、GPUが「GeForce RTX 3090」、ストレージが「Samsung 970 EVO Plus 2TB」(M.2 / NVMe)、メモリが128GB(DDR4-3200)となっており、"個人的な趣味"と言いながらもかなりハイスペック仕様のマシンに仕上がっている。

社内で導入しているPCについては、これよりも「1ランク落ちる感じ」とのこと。優先されるのはやはりCPUやGPUで、「メモリやストレージは犠牲になりがち」だそうだ。また、GPUレンダラーを利用するのであれば「CPUのコア数はあまり必要ない」ためGPU寄りの構成になる一方で、横原氏自身は「Redshiftと合わせて、CPUベースのレンダラーArnoldも併用するので、32コアのCPUを選んだ」という。

メモリは、32GBでは足りないので「基本は64GBにしたい」と考えており、社内PCについてはスペックアップを検討中。また自身のPCは、シミュレーションやHoudiniでの利用、さらにはマルチタスクでの作業効率を踏まえ、昨年の導入時に128GBまで増設した。ちなみに横原氏は、メモリのクロック数についてはあまり気にしたことがなかったが、メーカーについては以前から「Crucialを気に入って使っていた」そうだ。その理由は「ブランドに安心感があるから。また実際の使用で不具合が起きていないので、個人的に信頼性がある」と語った。
一方ストレージについては、社内でもまだHDDのニーズはあるという。なぜなら、SSDでは「容量を確保するためのコストが高すぎる」から。長尺のデータを膨大に書き出したりすると1TBや2TBでは保存できないケースもあるため「RAID のHDDで容量とスピードを確保しながら利用している」そうだ。ただ、長らくRAIDのHDDも併用して運用してきた横原氏も、2020年に満を持してすべてSSDに移行。「あきらかに作業効率は良くなった」と実感している。

これらの背景を踏まえ、今回は既存のベンチマークや横原氏が実際に行う作業を想定したテストを実施。Crucial製品とスペックの異なる製品を比較しながら、製品ごとの実力や状況による処理性能の違いを検証した。

メモリ比較検証

メモリの検証では、クロック数の異なる3種類(DDR4-3600/DDR4-3200/DDR4-2666)で比較した。DDR4-3600はCrucialのBallistix、DDR4-3200は横原氏のPCで使用しているメモリ、DDR4-2666はBIOS設定でクロック数を抑えたBallistixとなる。

CPUの処理性能を計測するベンチマークプログラム「CINEBENCH R23」のマルチコアスコアで比較したところ、DDR4-3600は22957pts、DDR4-3200は22929pts、DDR4-2666は22798ptsとなり、クロック数がベンチマークの処理に及ぼす影響はほとんどなかった。 また、Arnoldで自主制作作品「サイバーパンクガール」をレンダリングした場合でも、DDR4-3600は8分42秒、DDR4-3200は8分45秒、DDR4-2666は8分51秒となり、大きな差にはならなかった

■検証 Arnoldレンダリング速度比較(サイバーパンクガール)

  • DDR4-3600
  • 8分42秒
  • DDR4-3200
  • 8分45秒
  • DDR4-2666
  • 8分51秒

全体でも1~2%程度の差となるため、横原氏は「CG関連のソフトはあまり影響がないのかもしれない」と分析するが、性能が下がるようなこともなく同等のパフォーマンスが得られた安定性を評価。また、ゲーム関連では今回のテストよりも明確に差が出るケースもあるため、「Unreal Engineであれば差が出てくるかもしれない。5%でも変わってくれば意味はある」と補足した。

ストレージ比較検証

ストレージではP5に加えて、横原氏が以前使用していたSATA接続SSDとHDDの3種類で比較した。

まずはSubstance Painterを使用し、8K解像度のファイル(26GB)の初回保存にかかる時間を計測した。その結果、P5は1分26秒、SATA接続SSDは1分50秒、HDDは9分5秒となった。基本的な性能通りに、SSDがHDDよりも圧倒的に速いことが見て取れる。なお、今回のHDDは単体での使用となるが、横原氏によれば「RAIDのHDDでも5分はかかる」とのこと。SSDの方があきらかに快適であることは明確だ。

■検証 Substance Painter 8Kファイル保存テスト(26GB)


  • P5(NVMe SSD)
  • 1分26秒
  • SATA SSD
  • 1分50秒
  • HDD
  • 9分5秒

次にAdobe Premiereを使用し、4Kの非圧縮TIFFデータを同一ディスク上に書き出す際にかかる時間を計測した。こちらではその差がより明確になり、P5は1分45秒、SATA接続SSDは6分8秒、HDDは20分となった。SSDとHDDの差が大きいのはもちろんだが、同じSSDであってもP5(=NVMe)とSATAで約4倍の差がついた点は注目だ。

■検証 Premiere 4Kの非圧縮TIFFデータ書き込みテスト


  • P5(NVMe SSD)
  • 1分45秒
  • SATA SSD
  • 6分8秒
  • HDD
  • 20分
さらにプレビューにおいても、P5は滑らかに再生してくれるのに対して、SATA接続SSDはコマ落ちする場面が多く、HDDに至っては満足に再生できない状況だった。

■検証 Premiere 4K非圧縮TIFFデータ プレビュー再生テスト

P5(NVMe SSD)


SATA SSD


HDD

同様に、Cinema 4DのプラグインであるTurbulenceFDを使用した流体シミュレーション(高解像度256MV 1F 3GB前後 90f)に要した時間でも、P5は4分9秒、SATA接続SSDは8分29秒、HDDは16分57秒という結果が得られた。Adobe Premiereはストレージにデータを直接置くため如実に違いが出るほか、TurbulenceFDもフレームごとにストレージへ書き込みに行くため、このようなケースでは「性能の違いがリニアに反映される」と横原氏は解説する。

■検証 TurbulenceFD シミュレーションテスト


  • P5(NVMe SSD)
  • 4分9秒
  • SATA SSD
  • 8分29秒
  • HDD
  • 16分57秒

P5のようなSSDで作業全体が快適に! コスパも踏まえて「十分な選択肢となる」

今回の検証を終えて、横原氏が改めて強く感じたのはNVMe接続SSDのスピード感。コンテンツ制作において「作業全体が快適になる」と太鼓判を押す。

とくにデータの保存において、HDDを使っていた時代はオートセーブ機能を利用するとそのたびに待ち時間が発生していたため、横原氏はその機能をOFFにして作業していたそうだ。そのため、作業中にPCが固まってしまうと当然そこまでの作業はやり直し。「リスクを取るか、作業スピードを取るかの二択を迫られていた」と苦い思い出を回想する。そのような呪縛から解き放たれる意味でも、P5のようなNVMe接続SSDを活用する意義は大きいと結論付けた。

メモリについては、「最近はUnreal Engineを使うようになってきており、クロック数の高いメモリを選ぶ意味はある」とのこと。また、Crucialブランドについても、「信頼性や安心感で気に入っている」ことに加えて、コストパフォーマンスにも注目。品質と価格のバランスを踏まえて、「十分な選択肢になり得る」と語った。

問い合わせ

マイクロンジャパン株式会社
https://www.crucial.jp/