(メイン写真説明)上の写真は社内にある会議室での、MVNを使ったモーションキャプチャの様子だ。頭身の異なるキャラクターをMotionBuilderに表示し、収録したモーションデータをリアルタイムに流し込んでいる。キャラクターとアクターの頭身が大きく違う場合は、重心の位置を変更する必要があるし、腕が顔に刺さってしまうこともある。収録時には常にMotionBuilderを確認し、不具合があれば、収録をやり直すか後工程でデータを修正するかの判断を行なっているそうだ

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 遊技機、ゲーム、アニメ、映画、研究など多様な分野で活用されているMVN。17個の慣性センサーを搭載したフルボディスーツを着用し、専用ソフトのMVN Studioでキャリブレーションなどを行うだけでセットアップできる手軽さから、日本国内でも導入する組織が増えている。PRIME WORKSでは2012年2月にMVNを導入し、遊技機案件をはじめ多くのプロジェクトで積極的に活用してきた。そんな同社スタッフに、MVNの活用事例を紹介して頂いた。

▼About Company

株式会社PRIME WORKS
パチンコ/パチスロ液晶、ゲーム、CM、PVなど幅広いジャンルの映像を手がける、大阪に拠点を置くCGプロダクション。大手ゲーム会社などで経験を積んだベテランと、成長著しい若手からなる約30名のスタッフが、一丸となってユーザの心に響く映像制作を追求している。

MVN導入で、迅速かつ柔軟なリテイク対応が可能となった

--お話を伺うのに先立って、PRIME WORKSさんでのMVN活用事例を実演して頂いたわけですが、クリスマスムード全開の歓迎に感動しました(笑)。

小野氏--当社は常時、こういうテンションです(笑)。記事が12月の公開と伺ったので、だったらサンタクロースになってお迎えしたいよねと、皆で気合いを入れました。

--MVNの導入を最初に提案したのは小野さんだそうですね。

小野氏--当社のスタッフに働きやすい環境を提供することも私の役割ですからね。アニメーターの福間と天達に「導入すれば、モーションを全て手付けする必要がなくなるよね。楽できる部分は楽しちゃおうよ」と提案しました。

--実際の使い勝手は如何でしたか?

福間氏--当社くらいの規模でMVNを導入している会社は少ないと思いますが、導入後の1年間で何度も活用しました。思い立ったら直ぐに収録できるメリットは大きいです。

黒崎氏--特に遊技機案件は発注元のメーカーさんと社内のチェックを繰り返しながら進めるので、リテイクが頻発します。MVNを導入したことで、従来以上に迅速かつ柔軟なリテイク対応が可能になりました。

--遊技機案件でMVNを使う場合のワークフローを教えて頂けますか?

福間氏--絵コンテやフローチャートを参照しながら必要なモーションを全て割り出して、MVNで一気に収録します。それをつなげてビデオコンテを作り、社内とメーカーさんのチェックを受けます。その後、リテイクを踏まえてMVNで本番用のモーションデータを収録し、それをブラッシュアップしていきます。

--ひとつの案件につき、ビデオコンテ用の収録とチェック後のやり直しの2回、MVNを使用するわけですね。

天達氏--10時間以上かけて、しっかり収録するのは2回ですが、その合間にもちょっとした収録をすることがありますね。

小野氏--スーツを着てセットアップを始めてから、2時間以内には収録を開始できる。しかも収録場所は社内の会議室や廊下ですからね。ディレクターやアニメーターが自分たちで判断して、柔軟に追加収録をしています。

Point 01  ダンス、壁登り、歩行など多様な動きを手軽に収録できる

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(写真左)小野氏がアクターとなり、ダンス、壁登り、歩行のモーションデータ収録を、PRIME WORKSの会議室で実演して頂いた。「思い立ったら、その場で直ぐに収録できる点が最大のメリットです。多様なモーションデータを扱うことで、アニメーターとしての引き出しが増えましたね」と福間氏は語る
(写真右)ダンスのような「その人にしかできない動き」に加え、長時間の歩行アニメーションなどの収録でも、MVNを活用するメリットは大きいと福間氏は語る。「長時間のモーションの全てを手付けすると、当然ながら時間がかかってしまいます。MVNでモーションのアウトラインを収録して、それを修正した方が制作時間を削減できます」

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その人にしかできない動きを手軽に収録できる

--今回の取材では、ダンス、壁登り、自転車など、小野さんに体を張って実演して頂きました(笑)。普段から、こういった使い方をなさっているのでしょうか?

天達氏--音楽系の遊技機案件では、オリジナルの振り付けを考えて、ダンスができる社内のスタッフに踊ってもらいましたね。

福間氏--僕のようにダンス経験のない人がイチから動きを付けていこうとすると、凄く時間がかかります。MVNで収録したデータを手直しすることで、制作を効率化できました。

天達氏--MVNでは指の動きが収録できないので、同時にビデオカメラでも撮影して、両方を参照しながら作り込んでいきましたね。ビデオがあると、個々のモーションデータがどんな動きを収録したものなのか、一目瞭然でわかるというメリットもあります。

小野氏--過去に制作したアクション系の遊技機案件の場合は、必殺技などの派手な動きを収録しましたね。光学式では、ダイナミックに動くとマーカーが外れてしまう場合があります。MVNならその心配がないので、思いきって動けました。

黒崎氏--その人にしかできない動きを手軽に収録できるので、活用の幅は広いですね。ビデオコンテを制作する際に、ディレクター自らがMVNを着用し、動きを実演しながらアニメーターに説明する場合もありますよ。

小野氏--MVNがもう1セットあると、活用の幅がさらに広がるでしょうね。追加購入する際にはサービスして頂けると嬉しいのですが(笑)。

--MVNの活用事例を具体的に教えて頂き有難うございました。クリスマス本番前に、まだまだMVNを活用する機会がありそうですね。

小野氏--スタッフ一丸となって頑張ります。この記事をご覧になっている皆さんも、素敵なクリスマスをお迎えください!

Point 02  公園での自転車やスケボーなど屋外での収録にも対応

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カメラやスタジオを必要としないMVNは、屋外での収録にも対応できる。今回は自転車とスケボーを使った収録に挑戦して頂いた。福間氏自作の画板を活用した作業台にPCを据え、MVNのモーションデータをリアルタイムに確認している。「フルボディスーツの上に普段着を着用できるのは嬉しいですね。ダンスにしろ自転車にしろ、身体に密着したスーツで演技するのは心理的に抵抗がありますから(笑)」と小野氏は語る

TEXT_尾形美幸