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第2回:工藤 忠(Sprite Animation Studios / Layout Artist, Animator)

第2回:工藤 忠(Sprite Animation Studios / Layout Artist, Animator)

今回はロサンゼルスにてレイアウトアーティスト/アニメーターとして活躍されている工藤 忠氏を紹介しよう。ハリウッドの日系アニメーション・スタジオの草分けとして有名なSprite Animation Studios(スプライト・アニメーション・スタジオ)。ここでは日本人&アメリカ人アーティストが独特のスタイルでアニメーション作品を手がけているが、そんな中で工藤氏は「自分の武器となるものを身に付けることが大切」と語る。

TEXT_鍋 潤太郎 / Jyuntaro Nabe

ハリウッドを拠点とするVFX専門の映像ジャーナリスト。
著書に「海外で働く日本人クリエイター」(ボーンデジタル刊)、「ハリウッドVFX業界就職の手引き」等がある。

公式ブログ「鍋潤太郎☆映像トピックス」



Artist's Profile

工藤 忠/Tadashi Kudou(Sprite Animation Studios)
青森県出身。2002年に北海道東海大学デザイン学科を卒業後、札幌のゲーム会社でCGデザイナーとしてキャリアをスタート。その後、ジャストコーズプロダクションでゼネラリスト、マーザ・アニメーションプラネットでレイアウトアーティストとして働いた後に渡米。2015年にロサンゼルスのRouge Productionsでの短期契約を経て、Sprite Animation Studiosに入社。8月4日(木・祝)に公開された映画『ルドルフとイッパイアッテナ』のアニメーションを担当し、現在は別プロジェクトのレイアウト制作中。



<1>大学時代に選択したCGアニメーション講座が子ども時代の夢を呼び覚ます

ーーまずは日本での学生時代について、お聞かせください。

工藤 忠氏(以下、工藤):大学生の頃は広告デザインを主に学んでいたのですが、3年時に選択した3DCGの授業が面白く、一気に3DCGにのめり込んでいきました。中学生の頃に観た『ジュラシックパーク』に衝撃を受け、その頃から3DCGに興味をもっていたのですが、「自分にでできるわけがない」と思い込んでいました。
ところが、その授業を受けたことでソフトウェアを使いこなせれば自分にも3DCG映像をつくれることがわかり、それからはコンピュータ室に籠って独学で勉強したり、非常勤で来られていた講師の事務所に遊びに行って、自分のつくったキャラクターモデルやアニメーションを見てもらっていました。当時はインターネットなどにはほとんど情報がなく、3DCG関係の本を見つけては集めていたので、その事務所にある資料は自分にとっては宝の山でした。結局、卒業研究もクラスのほとんどが広告デザインをテーマにするなか、キャラクターアニメーションをテーマにして1人だけ3DCGアニメーションをつくりました。今思うと、この頃からCG制作の中でも特にアニメーションが好きだったのだと思います。

ーー大学を卒業された後は日本でキャリアをスタートさせたのでしょうか?

工藤:大学卒業後は、札幌の小さなプロダクションでゼネラリストとして働き始めました。仕事は東京からの案件が多かったため、何度か東京のプロダクションへ長期出向に出たりもしていたのですが、それならば東京を拠点にした方が良いなと考え、ジャストコーズプロダクション(以下、ジャストコーズ)に転職しました。これを機にアニメーションとカメラレイアウトを中心に手がけていくようになりましたね。ジャストコーズの研修として、ロサンゼルスを拠点にハリウッド映画のVFX制作に携わっているThe Third FloorやBlur Studio、Naughty Dogsなどのゲーム開発会社を見学する機会があり、それを機に漠然と海外の現場で働くというキャリアに対する憧れを抱くようになりました。
ちょうどその頃に結婚したのですが、その後妻が勤務する会社のプログラムとしてアメリカへ2年間留学することが決まったのです。これはチャンスだと思い、まずは当時、北米スタイルの3DCGアニメーション映画案件に取り組んでいたマーザ・アニメーションプラネット(以下、マーザ)へレイアウト・アーティストとして転職しました。その案件は監督やCGディレクターが外国人というプロジェクトだったのですが、プリビズ、カメラレイアウトを専門にしている部署が国内にはあまりない中で、今まで知らなかった数多くのことを学ぶ機会をいただき感謝しています。そして1年半ほど勤務した後に、渡米しました。

ーー海外への就職活動についてお聞かせください。

工藤:妻が「J-2ビザ」(J-1ビザ保有者の配偶者および21未満の未婚の子ども向けに発行されるビザ)を取ってくれたおかげで、アメリカ移民局に申請をすれば労働許可をもらえるという幸運に恵まれたので渡米後すぐに申請しました。許可証が発行されるまで4~5ヶ月かかるということだったので、その間は英語学校に通いました。無事に許可証が届いたタイミングで、以前勤めていた会社の友人が勤めているRouge Productionsで折良く短期のアニメーターを募集していることを知り、そこで3週間ほど働く機会を得ました。
Rouge Productionsにて、モーションキャプチャ(MOCAP)データの編集アニメーターとして働いたときに、バスケットボールゲーム用のMOCAP収録に立ち会ったのですが、そのアクターが元NBAレイカーズの選手だったことに感動しました。僕自身大学生の頃はバスケ部に在籍していたこともあり、大のNBAファンだったので、その選手を実際に見れて、さらにその動きのデジタルデータを編集することができたというのは、ファン冥利に尽きるなあと(笑)。

ーーRougeの後はどちらでキャリアを重ねられたのですか?

工藤:契約が満期を迎えた後は、ちょうどLAで開催されたSIGGRAPH 2014の「Job Fair」に参加しました。そこでDreamWorks Animationのレイアウト・アーティストを募集しているのを見つけ、アプライしたところその日のうちに会場で待機していたスーパーバイザーと10分ほどの簡単な面接を受け、さらに本社で二次面接を受けることになりました。
二次面接は、5名のレイアウト・スーパーバイザーの方々と2回にわたり、合計1時間半ほどの長いインタビューを受けました。当たり前のことながら、全て英語、聞かれるであろう質問にはあらかじめ答えられるよう友人に協力してもらい、模擬インタビューの練習をした上で臨みました。実際のインタビューでは、最初は練習通り答えられたのですが、質問が専門的になるにつれて段々とボロが出始め、何度か聞き間違いや言い間違いを繰り返しながら終了、結果は不採用でした(苦笑)。

ーー不採用の理由は教えてもらえたのですか?

工藤: はい。そのとき言われたのが、「プリビズ、レイアウトの工程ではストーリー(演出)が何度も変わるので、それに柔軟に対応できるコミュニケーションン・スキルが必要になる。今のあたなの英語力ではそれは厳しいと判断したので、今回は見送らせてほしい」といったことでした。確かにそのとおりだと納得したのと同時に、それまではプリビズ、レイアウト・アーティストに絞って応募していたので、これでは受かる確率が低いだろうと判断。そこでアニメーター用のレジュメとデモリールも作成した上で就職活動を再開しました。
そして、偶然Sprite Animation Studios(以下、Sprite)の求人を見つけて応募したところ電話をいただき、面接というながれになりました。Spriteはディレクター、スーパーバイザーが日本人ということもあり、日本語で面接していただくことができました。そのおかげで非常にリラックスして受けるたことができたことを覚えています(笑)。

新・海外で働く日本人アーティスト 第2回:工藤 忠

手付け(キープフレーム)によるアニメーションを大切にするSpriteでの仕事は、日々やり甲斐と刺激を感じているとのこと

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<2>Sprite Animation Studiosのワークスタイル

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