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図柄表現のつくりかた<br />短期連載第4回 「オーサリング(中篇)」

図柄表現のつくりかた
短期連載第4回 「オーサリング(中篇)」

ポリゴンマジックによる遊技機向け映像の制作を解説する短期連載。前回では、素材を準備してAfter Effectsに読み込むまでを解説したが、第4回目からは、いよいよオーサリングの肝である動きを付けていく。どういった動きに仕上げられていくのか、詳しくみていこう。

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"変動開始アクション"から"図柄確定"まで
一連の動きを付けていく

遊技機の「顔」である図柄(液晶画面などに表示される数字や絵柄のこと)の制作ポイントを解説していく本連載。ポリゴンマジック自体をモチーフにしたパチンコ台向けの図柄を制作し、同社のデザイナーに実際の工程に即して説明をしてもらうという企画だ。前回はオーサリングの前段階として、基になる画像素材をAfter Effectsに読み込むまでを解説した。今回はいよいよ実際の動きを作成していく。
言うまでもなくパチンコおいて、遊技者の興味は回転する図柄がどのような演出を経て停止するのか(そして図柄が揃うのか、揃わないのか)に集中している。この動きの演出をつくり出すのがオーサリングデザイナーだ。その重要性は「これまで用意してきた画像素材に命を吹き込む、非常に重要なパートだと言えますね」(ディレクターA氏)と語られるほど。その仕事ぶりは何度も映像を確認しながら、最も心地よい動きを付けていく、映像演出の職人とも言える。一方で実機組み込み用のデータを作成していく、アーティストとプログラマをつなぐ仲介役でもある。
今回は動きの中でも、最もシンプルな、「1」から「8」までの図柄を液晶画面で3列に配置し、各々が縦に回転して停止するまでの動きを作成する。わずかこれだけの動きの中にも、遊技機ならではのノウハウが隠されているのだ。

ワークフロー図
図柄制作のワークフローを図示したもの。なお図柄デザインの特徴などをわかりやすくするために、今回はあえてシンプルにまとめており、実際の制作はより複雑な工程となっていることをご了承いただきたい



STEP01 ネストデータの準備

素材をグループ化して
管理を簡略化

前述のように作例では「1」から「8」までの図柄が回転し、停止するまでの動きを作成していく。ポイントは遊技者が見ていていかにその動作がとても気持ち良い動きになっているかだ。そこで動き出しと停止時に、キャラクター絵で表現された魔法使いの少女が軽くバウンドするなどの動作が追加された。わずかこれだけの動きで、ただの一枚絵を動かすよりも、遊んだときの印象が大きく異なるのだ。
これ以外にも作例ではキャラクター絵の前後で異なるエフェクトの追加が予定されており、図柄は図柄手前パーツ、図柄キャラパーツ、図柄背面パーツという3種類の画像ファイルに分割されている。AEでは、このように複数の素材が組み合わさってコンポジットが構成される場合、各々の素材をグループ化(ネスト化)して管理することができる。これらはネストデータと呼ばれ、後述する図柄の半透明処理などもまとめて設定できる。「ときには素材が十層以上にもなったり、ネストデータが階層構造をとったりするなど、複雑になることもありますが、ひとつにまとめることで、一枚絵として処理できるため、扱いが簡略化できます」(オーサリングデザイナーH氏)。
今回作成するのは「開始アクション」、「停止アクション」、「組み(複数のパーツを組み合わせて一枚絵として扱う専用のデータ)」という3種類のネストデータだ。作業はAEを用いて行なわれ、はじめに上下移動と回転移動を組み合わせてキャラクター絵の動きを作成しておく。次に図柄手前パーツ、図柄キャラパーツ、図柄背面パーツのファイルを読み込み、「開始アクション」、「停止アクション」、「組み」のそれぞれで、ネストデータとして登録する。それぞれの動きに対して「1」から「8」まで、合計24種類のネストデータが作成されることになる。


「開始アクション」の作成
「開始アクション」ではキャラクター絵である図柄キャラパーツが20フレームでわずかに上下・回転移動して、バウンドするように動く。そのデータは図柄手前パーツ、図柄背面パーツのファイルと共に[02_nested]→[start_act]フォルダ内に「start_act_zu01」から「start_act_zu08」まで、ネストデータとして保存されている。なお同社ではAEに素材ファイルを組み込む際にテンプレートを作成し、作業の効率化を図っている。詳細は前回を参照してほしい


「停止アクション」の作成
「停止アクション」でも同様にキャラクター絵に上下・回転移動が追加されてバウンドするが、「開始アクション」とは異なり動きが止まるような印象を受けるように、タイミングが調整されている。その後、同様に「teishi_act」フォルダ内に「teishi_act_zu01」から「teishi_act_zu08」というネストデータとして保存される


「組み」の作成
「組み」は図柄手前パーツ、図柄キャラパーツ、図柄背面パーツという3つのパーツが組み合わさった、動く箇所がいっさいない、パッと見て一枚絵にしか見えないコンポジットのことだ。1フレームだけでコンポジットされている。その後、後述するタイムリマップで任意のフレーム数に伸ばして使用する。あえてネストデータ化する必要はないようにも思えるが、作業の終盤になって急遽、動きが追加されるなどの場合に備えて用意されている

STEP02 動きを付ける

左右と中の各図柄に
ひと通りの動き付け

ネストデータが完成したら、いよいよ図柄の動きを付けていく。前回で解説したとおり、事前に用意されたタイムチャート(=演出の設計図に相当)に沿って動きを付けていくことになる。
タイムチャートを見ればわかるように、作例の動きは左・右・中央の各図柄が、「1」から「8」まで縦の動きで変動をして、それぞれ左・右・中央の順序で停止するというシンプルなものだ。このような場合、「1」から「8」までの図柄を縦に長く連結した画像ファイルを作成し、入賞(玉がチャッカーに入ること)に合わせて、ドラムのように図柄を縦回転させればそれで済むようにも思える。「しかし、それでは基板によっては処理負荷が高くなりすぎてしまいます。また、今回の作例では扱いませんでしたが、図柄の拡大・縮小やY軸回転といった複雑な動きを作成する案件もあるので、それらに対応するのが難しくなります。そこで近年では、動きの各ステップ別に異なるコンポジションを行い、プログラム側で組み合わせて再生する例が一般的です」(オーサリングデザイナーH氏)。
なお、ひとつの動きがコンポジションされたら、遊技機の限られたスペック上で処理負荷軽減をはかるため、プログラム側で図柄データを差し替えながら再生する例が一般的だ。また、実作業では「1」図柄をメインに作成することが多いが、作例では便宜上「7」図柄を中心に解説されているので、注意してほしい。


タイムチャートの確認
今回のタイムチャート。作例では通常変動における一連のながれが390フレーム(13秒)で図柄が変動し、30フレーム(1秒)で確定停止が行われる、という動きが指示されている。入賞すると開始アクションが同時に発生し、左図柄→右図柄→中図柄の順に減速して図柄が停止していく様子がわかるだろう

図柄のサイズの確認
はじめに実機の液晶サイズ(作例では1,024×768pixel)上で図柄を配置し、最終的な位置決めを行う。前回、作成した仮配置に基づいて、最終的な位置と素材の縮小率を確認していく。作例では左右図柄・中図柄ともに高さ374pixel目に基本位置が指定された。別途UIなどが表示される場合は、それらの配置もふまえて最終決定が行われる。また中図柄については左右図柄を70%縮小したものが使用されている。今回は左右図柄(1つのデータを左右共通で使用)を416×768、中図柄を296×768のコンポジションサイズで作成していく。コンポジションサイズは図柄が表示されるエリア全てを含む必要があるため、場合によってはかなり大きく作成しなければならないこともある



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