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図柄表現のつくりかた<br />短期連載第最終回 「オーサリング(後篇)」

図柄表現のつくりかた
短期連載第最終回 「オーサリング(後篇)」

STEP02 エフェクト素材の合成とデータの整理

仕上げにも遊技機
ならではの注意点

前半の作業では「AEでエフェクトを作成し、連番ファイルとして出力する」までを解説した。後半では連番ファイルを図柄の変動データに合成し、余分なデータを整理して完成させるまでを解説していく。実際の作業は、これまでの総まとめといったもので、それほど複雑なものではない。はじめに左右図柄で合成を行い、続いて中図柄の合成を行う。その後、タイムラインには存在するが画面上には表示されないスプライトを修正すれば完了だ。
ただし、エフェクトが追加された分、その範囲に合わせてコンポジットのサイズを変更したり、場合によっては他の変動アクションの長さを調整したりといった作業が発生する。例えば、前述のようにこの作例でも「図柄停止アクション」向けのエフェクトのフレーム数が伸びたため、続く「揺れアクション」のフレーム数で調整している。また「コラップスをONにする」という、これまでの工程では発生しなかった、特殊な設定も存在する。
映像が作成できたら、実機への組み込み過程で何度もテストが行われる。これまでの連載で解説してきたとおり、ベースとなる変動アクションに対して「予告」や「煽り」などの様々な演出が、打ち手の操作に応じてリアルタイムに加えられていく。液晶の周囲に配置される役物(ランプの点滅など)の影響も見逃せない。そのため視認性や処理落ちの有無などについて、最後まで調整が行われるのだ。

01 変動開始アクション向けエフェクトの合成


①素材を配置して調整する
ここからは大元の通常変動データのAE上での作業となる。はじめにの「03_footage」の「image」フォルダに「ef_hen」というフォルダを作成して、その中に作成した連番画像ファイルを読み込ませる。[000-019.png]など、連番形式で登録されているのがわかるだろう。また、「02_nested」フォルダ内には「start_act」というフォルダを作成して、前回作成した「変動開始アクション」の変動データを登録しておく。その後、エフェクトの範囲に合わせてコンポジットのサイズを調整する。作例では魔方陣のエフェクトがピンクの範囲まで広がるため、最終的に黄色のサイズ(760×800pixel)でコンポジットを設定した


②上の階層のコンポジットサイズを変更
ひとつの階層のコンポジットのみサイズを拡大しても、その上の階層では再びエフェクトがはみ出して、断ち切れてしまう。そのため上位階層のコンポジットも全て同じようにサイズを変更していく。これでエフェクトが適切に表示されるようになるのだ。なお、「変動開始エフェクト」と「図柄停止エフェクト」は左右図柄も中図柄も共通して使用されるため、それぞれ一度の指定で全て対応できる。ただし、左右図柄と中図柄は変動データが異なるため、各コンポジットで個別にサイズの調整が必要だ

③コラップスをONにする
最後に各コンポジションで、「コラップス」のチェックボックスをONにする。各コンポジションには複数のエフェクトが配置されたレイヤーが含まれており、それぞれ加算モードで設定されている。この時、下位階層のコンポジットで加算モードになっていても、上位階層では設定が引き継がれず、エフェクトが反映されない。しかし、コラップスをONにしておくことで、上階層にも加算設定が引き継がれ、エフェクトが反映されるようになるのだ

02 図柄停止アクション向けエフェクトの合成


①キャラクター奥のエフェクトの配置
同じ手順で「図柄停止アクション」向けのエフェクトも合成していく。基本的には「変動開始アクション」向けの合成と同じ手順で進めていくが、2つの注意事項がある。まず、「図柄停止アクション」が15フレームなのに対してエフェクトが45フレーム分あるという点。そして、エフェクトがキャラクターの後ろから図柄全体の最前面に出てくるという点だ。このため「図柄停止アクション」の尺を15フレームから45フレームに変更する必要がある。今回、「図柄停止アクション」の後に続く揺れのループが30フレームのデータなので、その1ループ分を「図柄停止アクション」に盛り込むかたちで作成し直す


②キャラクター手前のエフェクトの配置
キャラクター手前のエフェクトである「hen_ef_stop_01_[000~044]」の素材は、前半15フレームはキャラクターの後ろに、後半30フレームは図柄最前面に出てくるように作成してあるので、前半後半に分割しそれぞれの位置に配置する。ここのエフェクトも「変動開始エフェクト」同様、図柄の動きにリンクするため、図柄の動きとエフェクトに親子関係の設定を施す。ただ、「図柄停止アクション」の尺を30フレーム伸ばしたことにより、その後に続く「揺れ」に食い込んでしまう。そこで、停止アクションの延長に合わせて、「揺れ」を30フレーム分短縮する。そのため、中図柄では「揺れ」ループが消失することになった

03 データを整える

表示されないスプライトを削除
最後にAEのタイムラインを確認して、画面に表示されない画像のスプライトを削除していく。処理落ちなどが発生しないように、基板の処理負荷をできるだけ下げるためだ。「通常は重複前提で作業を進めていき、最後に削っていきます。何かを加えるより、削除する方が作業としては簡単ですからね」(オーサリングデザイナーH氏)。なお、その後の工程でさらなるデータ削減が求められることもある。一例としては、エフェクト素材を基本サイズの4分の1のサイズで作成し、オーサリングデータ上で200%に拡大して表示しする場合もあるという。画像のクオリティが低下してしまうが、エフェクトなので表現によってはそれほど気にならないこともあるのだ



まとめ 遊技機向け映像の制作と図柄表現の魅力

これで遊技機における図柄演出の作り方は終了だ。コンセプト立案から始まって、2Dデザイン、3Dモデリング、オーサリング、エフェクトとひと通りの基本テクニックを紹介してきた。業界では人材不足が続く一方で、実際にどのような作業が行われるのか、これまで表に出ることは少なかった。何かの参考になれば幸いだ。本連載ではシンプルな構成での図柄演出の作り方を解説したが、実際の制作現場では少しでもクオリティの高い映像を作るために、日々研鑽が続いている。ともすれば閉鎖的だと思われがちな制作現場のイメージも徐々に変化しており、情報共有も始まってきた(本連載もそのひとつだ)。
最後に遊技機向け映像制作の魅力について、改めてポリゴンマジックのアーティストにコメントしてもらった。「ゲーム・映像業界などと異なり、自由度が高く、試行錯誤の余地が多いのが魅力ですね。最後の最後まで商品性を上げるべく妥協しない作業が続くため大変な面もありますが、その分だけ完成したときの喜びはひとしおです」(ディレクターA氏)。「遊技機に本格的な3DCG映像が求められるようになってまだ歴史が浅いため、まだまだノウハウが確立していません。クライアントが求めるものが遊技機としての完成度である点も『最終的に商品性が高まれば、どのような表現方法を選択してもいい』という自由な風潮につながっています」(オーサリングデザイナーH氏)。
遊技機業界では画像サイズの大型化や、タッチパネル等の新規デバイス導入など、常に技術革新が続いている。同社でも引き続き人材募集が続けられるとのことなので、興味をもった読者はぜひポリゴンマジックへの門を叩いてみてほしい。

TEXT_小野憲史

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ポリゴンマジック

1996年創業の老舗デベロッパー。コンシューマ機、ソーシャルゲーム、ゲームプラットフォーム、遊技機映像など、時流に応じたクリエイティブをつくり続けている。2012年6月には、グリーと共同出資によるソーシャルゲーム開発と運営を手がけるジープラを設立。

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