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映画『天空の蜂』(VFX制作:エヌ・デザイン)

映画『天空の蜂』(VFX制作:エヌ・デザイン)

<2>ビッグBのルックデヴ

表現の難しい銀色の機体

ビッグBの機体は、モデリングによる造形部分の困難さに加えて、マテリアルやライティングなどルックの制作も難しい作業になったという。ビッグBはディテールが細かい分、テクスチャの量も多く、700枚近いテクスチャが作成されている。テクスチャはディフューズやリフレクション、バンプなどひと通りの要素に加えて、デカールのテクスチャやマスクが別に作成されている。テクスチャやシェーダの設定は不破氏を中心に作業が進められ、最終的なルックに関しては阪上氏を中心に調整が進められた。

「ビッグB単体でのルック調整では上手く表現できていても、実際のショットに合成するとスペキュラの反射や強さが上手く表現できないショットが多く、試行錯誤が続きました。真夏の晴天のIBLをベースとしていますが、ビッグBはジュラルミンのような質感をしているため、ライティングの状態次第で見え方が大きく変化し、当たりすぎると白く飛び、弱いとハイライトが上手く出ない。そのバランスをとるのが難しかったです」と阪上氏は語る。
シーンの状況によって大きくルックが変化してしまうので、本作ではIBL用のHDRを切り替えて使用されている。

なお、HDR素材などシーンリニア環境の構築にはロゴスコープの亀村文彦氏の協力を得ることで、精度の高い検証を行うことができたという。

ビッグBの機体に使用されたテクスチャの一部。

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▲<1> (左)鋼板部カラーテクスチャ/(右)鋼板部グロッシー用テクスチャ

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▲<2> (左)デカール用テクスチャ/(右)デカール用マスクテクスチャ

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▲<3> Mayaによるマテリアル設定。上部がデカール用シェーダの設定で下半分がベース質感のシェーダ設定。このようにデカール用とベースで2つのUVチャンネルに分けられている

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▲<1> 最終ショットで使用した標準的なライトセット

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▲<2> 地上のHDR

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▲<3> 上空のHDR

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▲<4> 新陽上空でのホバリング時に使用したルック

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▲<5> 新陽を消して敦賀湾環境にしたルック

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▲<6> 地上メインのルック

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▲<7> 格納庫内の扉が閉じているときのルック

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▲<8> 格納庫の扉が開いているときのルック

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