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第7回:若杉 遼先生(Sony Pictures Imageworks)

第7回:若杉 遼先生(Sony Pictures Imageworks)

全てのCGアニメーションの根底に、12の基本原則がある

2015年1月現在、Animation Aidの講師は3名で、全員が北米のアニメーションスタジオ勤務の現役アニメーターだ。「ほかの2人の講師も私も、海外のスタジオで就職するのに必用な基準を知っています。その基準を目指し、知識や技術を修得できるカリキュラムを組んでいることがAnimation Aidの強みだと思います。スタジオ情報や、海外生活・就職活動のコツなど、旬の情報、生の情報を伝えることも大切にしていきたいです」。

「先生に聞く。」第7回:若杉 遼先生

若杉氏たちが考えたカリキュラムは、Lecture & Demo、Animation Review、English & Animation Reviewという3種類のクラスで構成されている。Lecture & Demoのクラスでは、アニメーションの12の基本原則と、その原則の具体的な使い方をレクチャーする。さらに、講師による基本原則を応用したアニメーションのデモンストレーションも行われる。12の基本原則は『Disney Animation / The Illusion of Life』(1981)という書籍のなかで解説されている概念で、カートゥーンスタイルのアニメーションの共通言語のようなものだ。なお、本書は『生命を吹き込む魔法』(2002/徳間書店)というタイトルで日本語版も出版されている。

「SPIでも、Pixarでも、全てのCGアニメーションの根底には12の基本原則があります。この概念を理解しないままにアニメーションをつくることは凄く遠回りなうえ、実際の仕事でリードやスーパーバイザーから指示を受けても、その真意を理解できないのです」。12の基本原則は"単語"や"文法"のようなもので、しっかり修得することで、"会話"すなわち、リードやスーパーバイザーからのアニメーション・レビューに対する理解が深まるという。

「先生に聞く。」第7回:若杉 遼先生

Animation Reviewのクラスでは、【演技・セリフなし・120フレーム以内・キャラクター1人】などの具体的な条件に沿って受講生がつくったアニメーションを、1週間に1度のペースで、数回に分けて講師がレビューしていく。これはAcademyを始め海外の教育機関に広く浸透しているスタイルで、実際の仕事の流れを再現したものだという。「仕事では、おおまかな動きでアイデアを伝えるブロッキングを最初に行い、より滑らかな動きにするスプラインを経て、ポリッシュという仕上げを行います。その要所、要所で、リードやスーパーバイザーのレビュー、監督によるチェックがあるのです。クラスでも、似たようなステップを経てアニメーションの完成度を高めていきます」。

CGアニメーションの場合、キャラクターの瞬きのタイミング、目線の移動、指の動きなど、画面内のあらゆる要素をコントロールできる。そのため、全ての動きに意味をもたせ、なおかつ、その動きが見た目に面白いことが期待されるという。「アニメーションは、膨大な要素が複雑に組み合わさることで成立しているので、初心者はどこから手をつけて良いのかわからず、途方に暮れてしまうのです。

クラスでは、リードやスーパーバイザーの着眼点、大事なところ、考え方などを具体的に伝え、アニメーションをポリッシュし、最終的には就職用のデモリールに組み込むことを目指します」。さらにEnglish & Animation Reviewのクラスでは、前述のレビューを英語で行い、リードやスーパーバイザー、監督とスムーズに意思疎通するための英語力を磨いていくそうだ。

「技術もアイデアも、ほかの人にアニメーションを見せて意見をもらうことで、磨かれていきます。人に見せて意見をもらえることが、学校で学ぶ最大の価値です。​私も含め、多くの日本人アニメーターが海外で働き、自分たちにない価値観のなかで磨かれ、力をつけ、やがては日本に帰国して新しい勢いを生みだす。そんな未来が来ることを期待しながら、がんばります」。若杉氏とAnimation Aidの活動が今後どのように花開いていくのか、引き続き楽しみに見守っていきたい。

TEXT_尾形美幸(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充

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