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第4回:キャラクター制作

第4回:キャラクター制作

section 03 Technique
クリエイティブワークに専念するための取り組み

6つの段階に分かれて進められたキャラクター制作。一連のワークフローを有効に機能させる上では、「クオリティはレビュー数に比例する」という考えの下、様々なインハウスツールが開発、導入された。

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© LEIJI MATSUMOTO / CAPTAIN HARLOCK Film Partners

作業効率だけでなくチェック効率も高める

最後に、キャラクター制作を支えた主立ったインハウスツールと制作手法を紹介したい。『キャプテンハーロック』のキャラクターは全て同一のトポロジー上で制作がされている。こうすることでフェイシャルやUVデータを流用できるメリットがあるが、その半面、通常であればポリゴン数が多すぎて編集するのに手間がかかってしまうという問題が発生する。そこでMARZAでは「ミケランジェロリグ」と呼ばれるインハウスツールを開発。これは別のローモデルで形状を調整すればハイポリモデルにも適用できるというもので、顔、体のみならず口内、眼球、まつ毛等、個別のパーツ単位での調整もハイポリゴンモデルを直接編集せずとも調整を行うことが可能だという。

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インハウスツール「michelangeloRig」
(上)自社開発ツール「michelangeloRig」(ミケランジェロリグ)によるモデリング作業画面。ローモデルでハイメッシュの形状の調整を行なっているところ/(下)口内、眼球、まつ毛などの調整も可能。画像は口内の歯の位置を調整した例
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そして、MARZAでは前身であるセガVE研の頃からファーやヘア表現には強いこだわりをもっているが(第2回を参照)、その象徴が「veFur」である。これはシェーダはもちろんスタイリングも可能な総合的なヘアに関するツールとなっており、特にスタイリングはガイドカーブをスカルプトツールに近い感覚で調整できるようになっており、ブラシを使用した束っぽさの表現やパーマ表現が可能で、自然なコーミングやスタイリングが行えるという。いわばヘアとファー双方の長所を両立させたものと言えよう。

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インハウスツール「veFur」
(左)veFurによるコーミング(毛の造形を調整)UI/(右)veFurのシェーダ設定UI。毛の質感を調整する
© LEIJI MATSUMOTO / CAPTAIN HARLOCK Film Partners

また、「クオリティはレビュー数に比例する」という考えの下、チェックフローもしっかりと確立されている。チェックモデルは全身とバストショットの2アングルに定め、チェック用ターンテーブル動画を手軽に生成できるインハウスツールが用意された。そのチェック用ターンテーブルには18%グレー&全反射のスフィアとカラーチャートも自動的に配置されるのだが、これは立体感を保ちつつ、コンポジット時にねらった階調が残るよう(コントラストがニュートラルになるよう)にといった一連のクオリティラインを、常にぶれることなくチェックできるようにするための配慮だという。また、日々の制作物は、日付単位のフォルダ分けと、指定の形式とディレクトリに保存すると自動的に反映されるというHTMLライブラリを用意することで管理が行われた。

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プロップ制作のサポート
武器などのプロップ制作では、キャラクターに持たせてスケールやバランスなどの調整を行う。この作業はキャラクターチームが担当した(質感などはプロップチームが担当)。画像はハーロックが持つコスモガンの監督チェック用資料。各種設定に合わせて、前回(パイロット版)よりも15%ほど拡大されたことが判る
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全キャラクターのトポロジーを共通化
(上)ヤマ(ミッドモデル)のトポロジーを示した画像/(下)左からケイ、ヤマ、ヤッタラン(全てミッドモデル)/それぞれ共通のトポロジーで作られていることが窺える
© LEIJI MATSUMOTO / CAPTAIN HARLOCK Film Partners

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4Kサイズが標準のキャラクター用テクスチャ
(1段目)ヤマの肌テクスチャ例。画像はZBrushから書き出した32bitビットマップ。トーンカーブを絞って無理やり表示させたものだが、実際のデータはもっとハイディテールである
(2段目)ヤマの肌テクスチャの一部。目的に応じて1K(1,024×1,024)、2K(2,048×2,048)、4K(4,096×4,096)という3サイズで作成された
(3段目)〈左〉ディフューズカラー(4K)、〈中〉粗めのスペキュラ(2K)、〈右〉SSDカラー(2K)/ 3 ヤマが着るジャケット用テクスチャの一部。〈左〉ビットマップ、〈中〉ディフューズカラー、〈右〉スペキュラ、いずれも4Kサイズ
(4段目)ヤマの髪の毛テクスチャ例。ヘアテクスチャは頭皮に適用したもので、そこからテクスチャの色に応じた髪の毛が生える仕組みになっている
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TEXT_今泉隼介 ※section01/谷口充大(テトラ※section02~03
PHOTO_弘田 充

『キャプテンハーロック』

映画『キャプテンハーロック』

2013年9月7日(土)全国ロードショー
原作総設定:松本零士
監督:荒牧伸志
脚本:福井晴敏、竹内清人
アニメーション制作:東映アニメーション、MARZA ANIMATION PLANET
harlock-movie.com
© LEIJI MATSUMOTO / CAPTAIN HARLOCK Film Partners

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