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第5回:レイアウト

第5回:レイアウト

section 02 Technique
レイアウトアドバイザーによる監修と3Dベースの立体視作業

他のチームと同様に、レイアウト作業においても様々なインハウスツールが活用された。しかし、レイアウトという作業工程の確立にこそ最大の意義があり、その中ではレイアウトアドバイザーによる監修といった画期的な試みが行われている。

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© LEIJI MATSUMOTO / CAPTAIN HARLOCK Film Partners

日本のCGアニメーションを"映画"として発展させていく

本作では『ハリーポッターと賢者の石』(2001)のリード・キャラクター・アニメーターなどを務めたPepe Valencia/ ペペ・バレンシア氏(BARABOOM! Studios)がレイアウトアドバイザーとして参加。カメラワークやキャラクターの配置、現実のフィルムカメラの特性をMayaのアトリビュートに反映させるといった適確なアドバイスをしてくれたという。また、立体視作業については当初、全カットを2D/3D変換で行う予定だったが、液体の透過など3Dベースでないと難しいカットについてはレイアウトチームが対応した。こうした一連の活躍が認められ、本プロジェクトの終了後にはレイアウトチームが正式に発足された。「すごく嬉しいことですが、レイアウトは全ての要素を一気につくる工程であり、後に続く各チームとの役割分担に加え、バジェットやスケジュールとの兼ね合いについては課題があるので、これからが正念場です」(木瀬氏)。「日本のCGアニメーションはゲーム映像として発展してきた背景があると思います。その意味では、映画としての3DCGの発展はまだこれからなので、レイアウト監修のような"映画"としてCGアニメーションを発展させていく取り組みに今後も力を注いでいきたいですね」(竹内氏)。

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レイアウトアドバイザーによる監修
(上左)レイアウトアドバイザーを務めたぺぺ氏による、cineSyncを用いたレイアウトチェック時のドローイング例(その1)。「このタイミングでメインのキャラがフレームインしてくるべき」等のタイミングに関する指示もあったという/(上右)ぺぺ氏によるドローイング例(その2)。動線に対して、カメラをどのように置き、何に関する情報がないと観客に演出意図を伝えることができないかを示した図。ここでは、階段の要素は少しでもいいから入れ込むべきだといったアドバイスがなされた/(下)『キャプテンハーロック』で実際に用いられたカメラ設定の例。ぺぺ氏のアドバイスに基づき、プリセットされたレンズパッケージやフィルムバックのサイズなど、実際のカメラの特性がMayaのアトリビュートに設定された
© LEIJI MATSUMOTO / CAPTAIN HARLOCK Film Partners

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3DCGベースの立体視作業
(上)Maya上での立体視作業の例。元々はS3D作業は工程に含まれていなかったため特別なツール等はなく、Maya標準のStereo CameraをLayoutで作成したカメラと同じ設定にして視差調整を行なったという。「Parallelで素材を出力しますが、作業時は目にかかる負担を考慮して、Off-axisで立体感を決めたら大まかなスクリーン面の位置を調整し、アナグリフで確認していました」(堺井洋介氏)。必要に応じてBGとキャラでカメラを分けてIneraxial Separationの数値をそれぞれ変えて立体感を調整したり、素材をレイヤー分けして次の工程でキャラクターと背景の距離を疑似的に変えたりといった処理もも行われた/(下)AEによる作業例。スクリーン面をどこに置くかの調整(飛び出し・奥行き、距離感の調整)が行われる。アナグリフである程度の調整を行い、さらに素材の不備等がないかを確認をした上でスクリーンでの確認を行なったとのこと。作業時・チェック時の効率とレンダリングの効率化を図るべく、素材をずらした数値をエクスプレッションで自動でテキストに表示させて1つのコンポジションで作業を完結できるようにしてある。「このショットはキャラとBGがレイヤー分けされており、さらにキャラとBGでカメラが異なるというショットになっています。理由としてはキャラとBGの距離が離れているので1つのカメラではBGの立体感があまり感じられなかったため、キャラクターとは別のカメラで立体感を強めに設定したからです」(堺井氏)
© LEIJI MATSUMOTO / CAPTAIN HARLOCK Film Partners

TEXT_谷口充大(テトラ)
PHOTO_大沼洋平

『キャプテンハーロック』

映画『キャプテンハーロック』

2013年9月7日(土)全国ロードショー
原作総設定:松本零士
監督:荒牧伸志
脚本:福井晴敏、竹内清人
アニメーション制作:東映アニメーション、MARZA ANIMATION PLANET
harlock-movie.com
© LEIJI MATSUMOTO / CAPTAIN HARLOCK Film Partners

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