>   >  日本アニメCGの新たな原動力 Autodesk 3ds Max 2011×PSOFT Pencil+ 3:日本アニメCGの新たな原動力 Autodesk 3ds Max 2011×PSOFT Pencil+ 3(第3回)
日本アニメCGの新たな原動力 Autodesk 3ds Max 2011×PSOFT Pencil+ 3(第3回)

日本アニメCGの新たな原動力 Autodesk 3ds Max 2011×PSOFT Pencil+ 3(第3回)

ラインセットの復元

[シーン状態を管理]を使用したことのある方なら、ご存知かと思うが、前バージョンまでは本機能がなかったため、複数の素材を出力したりする際には、マテリアルの設定等を出力する画像分だけ再設定しなければならなかった。そのため、実に面倒な手続きが求められていたのだが、Pencil+ 3 で実装されたこの機能を使えば、まとめて設定変更ができるように。これにより、例えば「マットオブジェクト」と「通常時の色質感設定」とを切り替えるといった際も、一度で行えてしまうため重宝している機能だ。

メニューバー[ツール→シーン状態を管理...]で実行する

メニューバー[ツール→シーン状態を管理...]で実行する
 

Pencil+ 2 では、マテリアル単位で設定したラインの設定は戻らず、再設定を余儀なくされていた。しかし、最新版では新たにマテリアルとラインの情報の復元が行えるようになっている。その手順は、まずメニューバー[ツール→シーン状態の管理...]を選択し、任意の名前を付けて保存しておく。後は、必要に応じてリストにある任意の名前を選択するだけだ。復元する場合は、[環境と効果]パネルの効果タブ[基本設定]の右上にある四角い小さなボタン(赤マル)をクリックすると実行するか聞かれるのでOKを押すと、リンクが切れてしまったラインも復元される。

[シーン状態を管理...]によるライン設定の復元

[シーン状態を管理...]を使い、予め保存しておいたライン設定「01 - Default」を復元してみた。復元する場合は、[環境と効果]パネルの効果タブ[基本設定]の右上にある四角い小さなボタン(赤マル)をクリックするだけ
 

「マテリアル リスト更新」ウィンドウ

[基本設定]パネル右上にある四角形の小さなボタンをクリックすると、実行するかを確認するウィンドウが表示される
 

これまではマテリアルのところにリストだけは残っていたので、そのリストを削除し、再度マテリアルを選択することで解決していた。多くのオブジェクトやマテリアルになってくると非常に工数のかかる作業となるため、この改良はとてもありがたい。(文:サンジゲン・松浦裕暁)

導入事例②
『リタとナントカ』

2010年11月1日よりNHK教育で放送された、フランスの絵本を原作にした TVアニメ『リタとナントカ』 (制作:日本アニメーション)。一見、全編手描きアニメーションによって構成されていると思われがちな本作。実は『リタとナントカのおさんぽ』では、 Pencil+ 3 の機能を活用し手描き調にアレンジされたCGカットが紛れ込んでいるのだ。そもそものルックのコンセプトが、"ポストカードのように"でスタートしていた本プロジェクトは、まるで絵本の世界をそのまま動かしたかのような、柔らかさ、鉛筆の擦れ、筆圧の強弱の変化と、手描きならではの味が楽しめる作品であり、従来のCG表現とは真逆に位置すると言っても過言ではない。そんな"絵本アニメ"において、CG表現をいかにして馴染ませるかに一役買ったのが、Pencil+ 3 であった。一連の場面写真(下)をご覧になって頂ければお判りのように、キャラクター・背景ともに、極めてシンプルな色構成の中で、ルックの手がかりとなるのが様々な太さの「(輪郭)線」である。

『リタとナントカ』場面写真01 『リタとナントカ』場面写真02 『リタとナントカ』場面写真03 『リタとナントカ』3ds Maxデータ

© RITA & MACHIN PROJECT Based on the books originally published by Gallimard Jeunesse

いずれもフルCGのカットであることに驚いて頂けたのではないかと思う。これらの表現を生み出すにあたっては、Pencil+ 3 を駆使して、[ストローク]、[ストロークサイズの減衰]で筆圧の強弱を表現しつつ、[ゆがみ]にアニメーションを持たせることによって、コマ毎にランダムな線を出し、手描き独特の柔らかさを足することに成功したした。さらには[マップ]との組み合わせで、鉛筆の擦れも再現しているので、ぜひ作品をご覧頂ければと思う。
キャラクターを描く繊細な線。その下に落ちる影は、その存在をしっかり背景の中に捉えるために、鉛筆の腹で描いたような太い線。この多種多様な線を余すところなく表現してくれるのは、Pencil+ の最大の武器だ。あれもこれもと手描きっぽい表現を欲張り過ぎて、手では描ききれない情報量が、その一本の線の中に含まれてしまうなどといった失敗からは、どちらかと言うと作業をする我々の方が Pencil+ の潜在能力を引き出しきれていないせいなのではないかと反省してしまう。『リタとナントカ』では、ツールの機能を活かすも殺すも、作り手次第であることを痛感した。サンジゲンにとっては珍しい質感の作品になったが、通常の作画アニメでは得られないノウハウや表現への可能性を感じた実に有意義なプロジェクトであった。こうした挑戦は今後も積極的に行いたい。(文:サンジゲン・川端玲奈)

TEXT_サンジゲン

▼About Company

株式会社サンジゲン
3DCGによる日本的なリミテッド・アニメーション表現を得意とするCGプロダクション。アニメーション作品を中心に、モデリング・テクスチャ・リギング・アニメーション・コンポジットに至るまでトータルでプロデュースを行なっている。
 
<近年の代表作>
『機動戦士ガンダム00』シリーズ『映画ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー...ですか!?』『パンティ&ストッキング with ガーターベルト』『マルドゥック・スクランブル』『とある魔術の禁書目録Ⅱ』『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』『ラブライブ!』『アマガミSS』ほか多数
 

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価格:409,500円(通常版スタンドアロン、NetShop.Too価格)
問:株式会社Tooデジタルメディアシステム部
TEL:03-5752-2855
Tooデジタルメディアシステム部公式サイト

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