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    こんにちは。Shotgun認定販売パートナーのボーンデジタルで、サポートを担当しているショットガン・トキトウです。前職ではCGプロダクションに勤務し、ユーザーとしてShotgunを使っていました。Shotgunの知名度が高まるのに合わせて、「そもそも、Shotgunって何ですか?」「"世界標準"のツールが、日本でどの程度役にたつのでしょう?」といったお問い合わせをいただく機会も増えています。そんな疑問にお答えするため、本連載ではShotgunの真価を数回に分けてお伝えしていきます。第1回目となる今回は、Shotgun導入がもたらすメリットを、【1】プロジェクト管理者 【2】制作スタッフ 【3】会社経営者 の3つの立場から見ていきましょう。

    Shotgunは、世界標準のプロジェクト管理ツールです

    Shotgun導入がもたらすメリットの前に、まずは"Shotgunとは何か?"をご説明しましょう。Shotgun とは、CG・映像制作における、タスク、スケジュール(進捗状況)、ショットなどを一元管理できるツールです。ハリウッドを中心に、世界各国で700社以上のスタジオが導入しています。日本でも、数百人規模の大規模スタジオから、数十人規模の小規模スタジオまで、各所で導入や検証がなされています。(具体的な導入・検証事例も、今後の記事で紹介予定です。お楽しみに!)。

    • ショットガン・トキトウ
    • ショットガン・トキトウ
      本名、時任友興(ときとう・ともおき)。1975年、宮崎県小林市生まれ。散弾銃"Shotgun"使いを父にもつ、株式会社ボーンデジタルのShotgun使い。リトルゲットーボーイのころから音楽とアートを愛し、気付けば30歳過ぎまでギタリストとして活動。都内CGプロダクションでコンポジター&ディレクターとして勤務した際にShotgunと出会う。2015年より現職。Shotgunに関する相談は、お問い合わせはフォームからお送りください!

    Shotgunはクラウド化されたツールなので、地理的に分散したメンバー間でも、共通のインタフェースやプロジェクトデータを閲覧できます。アップロードしたプロジェクトデータは、Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)、ならびにTierpoint(ティアポイント)というクラウドストレージサービスに格納されます。Amazon S3は最高レベルの安全性・耐久性を備えたサービスで、大手銀行・NASA・ペンタゴン(アメリカ国防総省本庁舎)なども利用しています。Tierpointも、Amazon S3と同レベルのセキュリティを備えています。Shotgun のセキュリティの詳細については、こちらをご覧ください。

    上はShotgunのインターフェィスです。情報がわかりやすく可視化されているので、誰がどんなタスクを担当しているか、進捗に遅れはないかといったことが直感的に把握できます。また、これらの情報はリアルタイムに更新されます。インタフェースのテンプレートは英語ですが、日本語への書きかえも可能です。ShotgunAPIを使用したカスタマイズもできますし、Pythonのソースコードが数多く公開されています。

    こちらもShotgunのインターフェィスで、ショットのレビューに使用します。ファイル名に加えサムネイルも表示されており、ここでも直感的な把握が可能です。各種情報の閲覧編集権限は管理者が細かく設定でき、プロジェクトのメンバー間はもちろん、クライアントとシェアすることも可能です。ログイン・操作ログ情報はすべて記録されます。Tweak Software社が開発した強力なデジタルレビューツールのRVが、1ライセンスにつき1本付属していることも大きな魅力です。このツールは、Pixar社を始め数多くのスタジオで使用されており、高解像度のショットデータであっても迅速な再生・レビューが行えます。再生したフレーム上にチェックバックを描き込んだり、メモを入力することもできるので、メンバー間の意見やアイデアも漏れなく迅速に共有されます。

    なお、Shotgun Pipeline Toolkitを使用すれば、作業データのバージョン管理も可能で、ほしいデータへ迅速にアクセスできます。日常的に使用する各種ソフトウェアとのデータのやりとりだって可能です。とっても便利なツールですが、フル活用するには技術的なハードルをクリアする必要があります。

    以上のように、Shotgunには情報のスムーズな共有を実現する工夫が満載されているため、メールの送受信、FTPによるデータのやりとり、Excelシートやフォルダによるデータ管理といった、煩雑な業務の大幅削減が可能となります。その結果、アーティストやマネージャーは、クリエイティブな仕事により多くの時間を費やせるのです。

    ▶︎次ページ:Shotgun導入がもたらすメリットとは?

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    Shotgun導入によって、問題の早期発見・対応が可能に

    続いて、今回の本題であるShotgun導入がもたらすメリットをご説明しましょう。最初に紹介するのは、プロジェクト管理者にとってのメリットです。Shotgunはプロジェクト管理ツールなので、タスクやスケジュールなどを管理するプロダクション マネージャー、ショットのクオリティを管理するスーパーバイザーなどは、そのメリットを最も享受できます。具体的には、Shotgunの導入で以下の仕事が効率化され、所要時間の短縮が可能となります。

    • ・制作スタッフへのタスクの割り振り、進捗確認
    • ・ショットのレビューと、チェックバック(ペイントオーバーや、メモなど)の作成
    • ・社外の協力会社が制作したショットデータの取得(ダウンロード、圧縮データの解凍、別フォルダへのコピーなど)
    • ・クライアントや監督からの、ショットに対する問い合わせへの対応
    • ・過去のメール、チェックバック、ショットデータの捜索
    • ・大幅な予定変更、方針転換への対応

    さらにShotgunの導入は、アーティストやエンジニアなどの制作スタッフにも多くのメリットをもたらします。具体的には、以下の仕事が効率化され、所要時間の短縮が可能となります。なお、前述の通りShotgunのインタフェースは自由にカスタマイズできるので、プロジェクト管理者はタスクの一覧を、制作スタッフは自分のタスクのみを閲覧するといった使い分けも可能です。

    • ・ショットに対する最新チェックバックの受信と、内容の確認
    • ・過去のメール、チェックバック、ショットデータの捜索
    • ・プロダクションマネージャーやスーパーバイザーへの連絡
    • ・プロジェクトの進捗状況や、クオリティラインの把握 

    つまりShotgunには、プロジェクト管理と情報伝達にかかる工数を可能な限り削減できるというメリットがあるのです。
    ではここで、20人規模のプロジェクトにShotgunを導入した場合にどの程度の工数が削減可能か、 シミュレーションをしてみましょう。今回は控えめに見積もって、1人1日20分の工数削減ができたと仮定します。

    • 1日あたりの工数削減:20人×20分=400分
    • 1ヶ月あたりの工数削減:400分×20日=8,000分=133.3時間=16.6人日(1日8時間勤務の場合)
    • 1年あたりの工数削減:16.6人日×12ヶ月=199.2人日=9.9人月(1ヶ月20日勤務の場合)

    日本の一般的なCG映像制作において、約10人月の工数削減が実現すれば、Shotgunの年間ライセンス20本分の金額がまかなえるのに加え、利益も見込めます。つまりShotgunの導入は、会社経営者にとってもメリットがあるのです。おまけにShotgunを使えば、プロジェクトに関する様々な情報を可視化して一元管理できるので、問題の早期発見・対応が可能となります。ショットデータの取り違え、情報伝達ミスなどの防止にも効果を発揮します。そのため前述の工数削減のほかにも、様々なメリットが享受できるのです。

    • ・プロジェクトの工数削減
    • ・クオリティラインの明確化による、クオリティの確保
    • ・スケジュールの明確化による、納期の順守
    • ・スタッフの適正な稼動
    • ・過度な残業の削減
    • ・人為的なミスの削減
    • ・メンバー間、メンバーとクライアント間のコミュニケーション不足によるトラブルの削減
    • ・業務委託スタッフ、新人スタッフがプロジェクトに参加しやすい環境の構築

    Shotgun導入の第一歩を、誰が踏み出すのか?

    前述のように様々なメリットが期待できるShotgun。とはいえ、ご自身のスタジオのカルチャーになじむのかどうか、実際のところは試してみないとわからないですよね。私自身、前職で初めてShotgunをさわったときには試行錯誤の連続でした。そんな当時の経験を思い出しながら、Shotgun導入の道先案内人を務めさせていただきます。ボーンデジタルでは、Shotgun無償トライアルサポートを実施中です。この機会に、ぜひShotgun導入の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。まずは、社内でプロジェクトを管理しているプロダクション マネージャー、スーパーバイザーなどの皆様が中心となって、基本操作を修得し、自社用のカスタマイズをなさることをお勧めします。

    次回の更新では、Shotgunの具体的な構造、基本操作、設定方法について解説していきます。お楽しみに!

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    TEXT&Illustration_ショットガン・トキトウ(ボーンデジタル)
    EDIT_尾形美幸(ボーンデジタル)