映画『逆転裁判』
幅広い手法で表現する虚実入り乱れた法廷推理劇
今回の VFX アナトミーは、2月 11 日(土)公開の三池崇史監督の映画『逆転裁判』を紹介したい。本作は株式会社カプコンから発売されたゲーム『逆転裁判』を原作として作成された映画であり、多くの VFX カットがちりばめられたエンターテインメント作品となっている。VFX を担当したのは映画『忍たま乱太郎』や『一命』など三池作品の VFX を多数制作している株式会社オー・エル・エム・デジタル。今回は長く三池監督とタッグを組んでいる CGI ディレクターの太田垣香織氏とコンポジットスーパーバイザー橋本 聡氏、チーフ CG デザイナーの浅山文秋氏に話を伺った。
本作の VFX 作業は 2011 年9月から始まり、トータルで約3ヶ月で 350 カット程のカットをコンポジット 10 名、3DCG 10 名の計 20 人程度のスタッフで制作している。主な VFX カットは、法廷に登場する投影機や空中に立体表示されるスクリーン、照明の都合などでセットが組まれていない法廷の天井や壁、湖に設置されたトノサマンのバルーン、降霊術におけるビジョンの表現などが挙げられる。また、この他にも背景の合成など多岐に渡り VFX が使用されている。主な使用ソフトは 3DCG では Autodesk Maya、ZBrush、コンポジットでは Flame、Nuke、トラッキングには Boujou および SynthEye が、3DCG のレンダリングには mental ray を使用しているという。
通常ゲーム作品を映像化する場合には世界感の統一など原作とのすりあわせ作業に時間を取られることも多いが、本作においてはそのような打ち合わせがほとんどなく、新たな『逆転裁判』の世界が構築されている。「今回の映画は結構大作感があるのですが、ほとんどの VFX に関してはこれまで蓄積したノウハウで作成しているので制作上大変だったということはあまりありませんでした。かなりベーシックなテクニックを使って画を作っていますよ」と太田垣氏は言う。作成する世界感の方向性についても「美術の林田氏がイメージボードの段階で作り込んできているので制作する表現に迷うということはほとんどありませんでした」(太田垣氏)とのこと。また監督からの指示も事前に細かい指示があるわけではなく、できた映像に対して若干の修正指示がある程度だったそうだ。「長年一緒にやっているので制作した映像を監督に見せたらどういう反応があるかは見せる前から分かります。監督がどのような映像を求めているか会話しなくても分かるので制作時点で対応しています」と橋本氏が言うように監督と制作現場が阿吽の呼吸でシーンを構築しており、手間のかかる VFX ショットも効率よくハイクオリティに仕上げられている。
それでは、本作の代表的な VFX のブレイクダウンを紹介していきたい。
TEXT_大河原浩一(Bit Pranks)
PHOTO_大沼 洋平
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CGWORLD 2012 年3月号 vol.163







