業界全体が注目する毎年恒例の定点観測、『プリキュア』シリーズのエンディングムービー。2021年10月に公開された劇場版を含め、今期の『トロピカル~ジュ!プリキュア』の制作を担ったのは男性アイドルものの経験値があり、自社キャプチャスタジオをもつダイナモピクチャーズだ。伝統の「かわいさ」を継承し、どのように改良を加えたのか。その制作の裏側にせまる。

記事の目次
    • 『映画トロピカル~ジュ!プリキュア 雪のプリンセスと奇跡の指輪!』
      2022年2月23日、Blu-ray&DVD発売予定
      2021.precure-movie.com
    • 『トロピカル~ジュ!プリキュア』
      ABCテレビ・テレビ朝日系列にて毎週日曜あさ8時30分より放送中!
      www.toei-anim.co.jp/tv/precure
    「トロピカル~ジュ!プリキュア」エンディング主題歌「トロピカ I・N・G」(ノンテロップver)
    「トロピカル~ジュ!プリキュア」後期エンディング主題歌「あこがれ Go My Way!!」(ノンテロップver)
    【本予告】『映画トロピカル~ジュ!プリキュア 雪のプリンセスと奇跡の指輪!』

    モデル制作から一貫して担当しリアルタイムの生配信にも対応

    TVアニメ『トロピカル~ジュ!プリキュア』(以下、トロプリ)前期・後期、『映画トロピカル~ジュ!プリキュア 雪のプリンセスと奇跡の指輪!』のエンディングムービーは、全てダイナモピクチャーズが担当している。基本的には東映アニメーションからは制作資料やダンスの振付を提供し、プリキュアの3Dモデルからモーションキャプチャ、アニメーションやコンポジットなど、ムービー制作全般をダイナモピクチャーズが担った。東映アニメーションのCGプロデューサー・野島淳志氏は「ダイナモピクチャーズさんは社内にモーションキャプチャスタジオの設備も整っており、キャプチャから地続きで映像制作まで一気通貫でお願いできますし、男性アイドルキャラクターのダンスムービー制作経験も豊富。安心しておまかせできました」とその経緯を語る。

    東映アニメーションから本作の制作に関するオファーを受けたとき、ダイナモピクチャーズのキャラクターモデリングアーティスト・浜崎 恵氏は、「『プリキュア』は誰でも知っている作品ですし、3DCGを用いた過去作のエンディングも拝見していたので、とてもモチベーションを高く臨むことができました」と制作に携わった印象を話す。また、フェイシャルを担当したCGアニメーターの足立奈緒子氏は、「とても有名な作品なので、非常にプレッシャーを感じました。制作が決まった後は『プリキュア』のいろいろな映像を観て、どういう表情の動かし方をしているのかなどをかなり調べてから実制作に挑みました」とふり返る。

    左から、CGラインプロデューサー・今井克尚氏、リードCGアニメーター・平井絵美氏(劇場版ED)、エンディング演出・松瀬 勝氏、キャラクターモデリングアーティスト・浜崎 恵氏、CGプロダクションマネージャー・坂本真祐氏、コンポジター・高村 智氏、CGアニメーター・足立奈緒子氏、写真なし:リギングスーパーバイザー・小椋 玲於奈氏(以上、ダイナモピクチャーズ)

    また、リアルイベントとして行われていたプリキュアショーがコロナ禍の影響で縮小傾向にある中、2021年はオンラインの生配信イベントという選択肢を模索していた。ここでもダイナモピクチャーズのキャプチャ設備と知見が活かされ、本作のキャラクターをリアルタイムで動かす生配信は『プリキュア』シリーズの新たな試みとして成功を収めている。

    <1>シリーズの伝統を継承したキャラクターモデル

    東映アニメーション仕様に合わせたモデル制作

    『トロプリ』で使用されているキャラクターモデルは、ダイナモピクチャーズで新規制作したモデルが使用されている。今回『プリキュア』シリーズで初めてキャラクターのモデリングから東映アニメーション社外にまかせることになり、東映アニメーションから過去シリーズのモデルデータが提供され、ダイナモピクチャーズはその仕様に合わせてモデリングを行なっていくこととなった。本作では、MayaをメインツールとしてArnoldPencil+ 4を使ってレンダリングされているため、東映アニメーション側の仕様に合わせつつ自社の環境で同じようにレンダリングできるようモデルを整えていく作業を行なった。特に劇場版では過去作の『ハートキャッチプリキュア!』(以下、ハトプリ)のキャラクターが登場するが、こちらは東映アニメーションから支給されたモデルであり、レンダリングしたときのルック調整以外にも、『トロプリ』のキャラクターとの頭身合わせなど、セットアップされた状態でのモデル調整に手間がかかったという。

    「提供いただいたキャラクターモデルは、東映アニメーションさんの仕様でAスタンスから少し腕を曲げた状態がデフォルトになっているので、まずはそれをベースにボディを作成していきました。今回難しかったポイントは髪の毛で、髪のボリュームが非常にあるキャラクターだったので、増やしても増やしてもなかなかOKが出ず、自分の感覚の2倍くらいの勢いで作成しました。衣装に関しても東映さんの指針に沿ってめり込みなどに注意しながら、可能な限りサンプルモデルに寄せるようにモデリングしていきました」と浜崎氏。

    また、顔のモデルについてもなるべく全方位から見て可愛く見えるように、頬やおでこの輪郭ラインの形状や目尻のまつげの方向など、細かく調整されている。頬などの輪郭ラインの調整は、デフォルトの形状に対してシェイプを作成してア二メーターに配布し、その都度シェイプブレンドを使って調整できるようにしているという。そのおかげでフェイスラインの調整などもカットごとに行う手間が少なくなり、後調整の工数削減につながった。

    顔モデルのアングルごとの調整を減らす工夫

    アニメ調のレンダリングされたキャラクターモデルでよく問題になるのが、斜めや横からのショットで顔の輪郭や口の位置などが、作画的に崩れてしまうこと。本作のキャラクターモデルでは、そのような斜めになったときの輪郭調整を極力減らすため、眼球を後ろにずらし、おでこと頬を前に出して顔の輪郭に凹凸ができるようにシルエットを整えている。このようなシルエット調整を施したおかげで、ア二メーターがカットごとに輪郭を調整する箇所が顎部分程度となり、アニメーターの負担軽減になっているという

    • 調整前のモデル
    • 調整後のモデル。前期エンディング制作中に東映アニメーションからさらに顔の凹凸を付けてほしいというオーダーを受けて修正したモデルだ
    • Pencil+でレンダリングした状態。角度を変えても顔のシルエットの破綻がないことがわかる

    ボリューム感を意識した髪モデル

    本作のキャラクターモデルの作成において、非常に手間がかかったのがボリューム感のある髪の毛だ。図は全キャラクターをレンダリングして並べたものだが、ボリュームだけではなく、キャラクターごとに非常に特徴のあるシルエットの髪型になっている。これらの髪の毛のモデルは、作画設定の三面図から3Dモデルを起こしていったという。「可能な限り三面図に描かれているラインを再現することに徹しました。印象よりも1.5倍くらいの感覚でモデリングしてちょうどいいか、もしくはさらにボリュームを増やすようにと東映アニメーションの方からオーダーがくるほど、『プリキュア』のキャラクター表現においては髪のボリューム感をいかに表現するかが重要です」と浜崎氏

    『プリキュア』シリーズの仕様に合わせた衣装モデル

    前述のように、モデルはこれまでの『プリキュア』シリーズの仕様に合わせて制作されている。後で別作品のキャラクターと一緒に扱われることを想定して、データ仕様を大幅に変えないようにという意図からだという

    キュアサマーのワイヤーフレーム。スムース処理は素体には東映アニメーションの内製ツール「gmxPolySmooth」を使用し、その他はMayaのスムースメッシュプレビューを適用している
    • 同じく内製の「hitTraceSet」を使った例。これにより、テクスチャに依存せず顔の固定影や模様を表現できる。キュアコーラルのチークもこのツールを使って位置調整が施されている
    • 衣装は基本的に厚みを付けず、衣装が重なる部分は頂点同士を合わせてめり込ませないのが基本仕様だ
    • キュアフラミンゴのタイツの例。タイツのラインは脚のポリゴンを網目状に制作し、Pencil+でマテリアルの境界にラインが出るように設定されている

    <2>自社のノウハウを結集したリグ&アニメーション

    モーションキャプチャに強い独自のリグ構築システムを活用

    『トロプリ』のキャラクターモデルのセットアップは、東映アニメーションのリグを踏襲せず、自社で開発したリギングツール「OgRig」を使用してセットアップが行われている。そのため、劇場版では『ハトプリ』と『トロプリ』のキャラクターでリグのしくみが2種類混在することになり、アニメーション作業時は多少煩雑になったという。OgRigはヒト型のリグを簡易に生成することができるように開発されたリグの構築システムで、ベースとなるボーンに対して、後から追加でリグを足しながらリグを生成できるようなしくみになっている。リードCGアニメーターの平井絵美氏によれば、OgRigはモーションキャプチャのデータをリグにベイクする処理が非常に速く、頻繁にモーションが変更されても、ストレスなく更新できたという。

    セットアップで特に難しかったのは、キャラクターの髪の毛を動かすためのリグ構築。髪の毛の揺れは基本的にはシミュレーションで行なっているが、各キャラクターのヘアスタイルは非常にボリュームがあり複雑な形状をしているため、どのように動くのかリガーの方で判断が難しく、アニメーターと意見交換しながらセットアップが行われている。フェイシャルリグに関しては、基本的にシェイプブレンドをコントローラで操作しながらアニメーションが付けられるようになっており、デフォルトのシェイプでは対応できないような表情の場合には、シェイプを新たに作成して追加しながら対応した。リファレンスのなかった前期では口の開きが一定の表情が多かったそうだが、後期になると本編を参考にキャラクターごとの表情のちがいを表現し、キャラクター性が際立つようなアニメーション付けになっているという。

    ダンスアニメーションはモーションキャプチャをベースとして作成。自社のスタジオで収録され、MotionBuilderを経由してMayaに読み込んで利用されている。モーションをキャプチャする際には同時に振り付け動画が撮影されており、アニメーターはこの動画を見ながら細かい動きのニュアンスを付けている。「今回のキャラクターは手鏡を持っていたりするので、ポーズごとの鏡の角度について動画を見て参考にしたりしました。特に今回は手の指の仕草にポイントが置かれていたので、動画を見ながらなるべく柔らかい指先の動きになるようにアニメーションを付けています」(足立氏)。

    軽量かつ直感的な操作が可能な内製リグ

    ダイナモピクチャーズで作成されたモデルは、インハウスツールの「OgRig」を使ってセットアップされている。リギングスーパーバイザーの小椋 玲於奈氏が社内アニメーターの要望やリグの標準化、生産効率を上げるために制作したものだ

    OgRigでは【画像】のようなヒト型のボーンのテンプレートが用意されている。このテンプレートはスタイル骨と呼ばれ、Mayaの標準ボーンにリグを生成するためのアトリビュートが与えられている
    アトリビュートの形は【画像】のようにPart(部位)、Ns(補助ネームスペース)、Side(L,R,Cなど)、CompType(生成するリグのタイプ)、ParentSpace(親)などがある。ヒト型テンプレートでは、背骨、首、腕、脚などの各リグが生成されるスタイル骨の集合となっており、練度によらず同じクオリティでセットアップを行うことができるようになっている
    ダイナモピクチャーズはモーションキャプチャスタジオが併設されているため、OgRigで生成されたリグは簡単にMotionBuilderへ書き出せるようになっており、【画像】のようなMotionBuilderからMayaのCTLへベイクするツール「MCBakeTool」も備わっている

    SIMベースの髪揺れ

    ショットごとにリグにシミュレーション用のリグをアタッチし、CTLへベイクするツール「OgSim」。各アセットのどこを揺らすのかをあらかじめassetPresetを使って決めておき、動きの強さなどによってプリセットを調整することが可能で、似たようなショットがあれば動きをプリセット化して流用することができる。シミュレーションのパラメータはsimPresetである程度基準を作成していくことができる。もともとはセカンダリリグにシミュレーション機能を内包することが多かったが、アセット数が多い案件やリガーが足りない状況においては、アニメーターがシミュレーション作業をできるようにした方が効率的ということで開発されたツールだ

    ビューポートでラインを確認できる内製ツール

    「dpViewportEZ」はMayaのビューポート上でラインが確認できるインハウスツールで、レンダリングしなくても最終結果に近い状態をビューポート上で確認しながら作業を進めることができる。ラインの確認はアニメーション作業だけではなくモデリング作業でも頻繁に行うため、アニメ案件では必須のツールとなっているという。前期のときはフェイシャルのみにラインが表示されるようになっていたが、『プリキュア』のキャラクターは衣装の装飾も多く、めり込み修正の取りこぼしが多かったため後期からは全身対応になり、アニメーション工程ではかなり効率アップにつながった

    • Viewport 2.0で表示した状態
    • dpViewportEZで表示した状態

    かわいらしさを追求したフェイシャル

    フェイシャルは基本的にブレンドシェイプで、提供モデルと同じターゲットを作成し、必要と判断されたターゲットが新たに追加されている

    ターゲット一覧
    • ブレンドシェイプのコントローラ。ベーシックな表情はこのコントローラだけで作業が行える
    • フェイシャルリグ。コントローラでおおまかな表情を作成した後に、フェイシャルリグで細かい表情を調整する
    • まつげをブレンドシェイプだけで閉じた状態。先端がカメラに向いていて見映えが悪い
    • 横顔専用のターゲットシェイプを作成し、まつげの方向を調整したもの。カメラから見て自然なまつげの形状になっている
    • フェイシャル調整前。口パクのアニメーションのみが入った状態
    • 調整後。カメラの角度に対する口や眉の位置、あごなどの輪郭の形状、目線の向きなど、細かい調整を行う
    キャラクターらしさの表現。個別に目と眉の距離、開き口の大きさ、眉毛の角度、閉じ口の幅などを調整していく

    自社スタジオを活用した生配信

    2021年、キュアサマーの誕生日8月1日と劇場版公開日の10月23日に、キュアサマーのモデルを使用した生配信が行われた。自社スタジオのモーションキャプチャ設備を使ったUnityによるリアルタイムレンダリングシステムの改良を兼ねたこの生配信は、作品のアセットを利用した新しい展開として注目を集めている。「特徴的なポニーテールはシミュレーションで対応しているのですが、別の生き物のように暴れてしまう挙動を上手く制御するのに苦労しました」(CGラインプロデューサー・今井克尚氏)

    • 8月1日に配信された生配信より、ワイプでの生振り付け解説
    • 10月23日生配信より、視聴者からのコメントに答えるキュアサマー
    • 生配信に使用したキャプチャツール、Shogun
    • MotionBuilderでの配信プレビューの様子
    Unity上でのCamera Selectの画面

    <3>『プリキュア』に新たな息吹を吹き込む画づくり

    スペシャルカットではこれまでにない表現を追求

    『トロプリ』は作品のモチーフとして海とコスメの2つが基本の柱となっており、特に後期は学校を舞台にした学園もので部活動を扱う作品となった。そのため野島氏は、後期のエンディングは学園祭的な雰囲気をもつものにしてほしいとダイナモピクチャーズにリクエスト。それを受けてダイナモピクチャーズでは、後期に関しては学校の思い出の場所をチョイスしながらダンスを組み合わせていくという演出プランを練っていった。

    一方で劇場版のエンディングは自然がモチーフとなっており、四季の移り変わりを表現できるような内容に演出されている。劇場版エンディングで画づくりとして印象的なのは、冒頭のラメールの独唱シーンだ。エンディングとしては非常に長いカットだが、指輪の光の演出やキャラクターへの光の照り返しの表現など、これまでの『プリキュア』シリーズにはない新しい印象になっている。「上手くいくかわからなかったのですが、キャラクターの仕込みにはない、キャラクターへの光の照り返しでできる演出的な影を一度コンポジット班の方で組んでみて、東映アニメーションさんへ提案させていただきました。このような演出影はCGの影として生成すると汚くなるというがわかっていたので、多用はできないとは思いつつもスペシャルカットの数カット程度であれば対応できると思って使ってみました」とコンポジターの高村 智氏は語る。

    レンダリングされた影はやはり輪郭があまり綺麗にならなかったそうだが、平井氏がAfter Effects上で9割方を手描きで修正して、現在の印象的なショットとして完成させたという。「セル調の作品では必ず影の問題が出てきます。これまでの『プリキュア』はほぼ順光のライトでキャラクターをライティングしているので影が出ず、他の作品であるようなマスクを使った影の修正はほぼないのですが、このようなライト素材を出力するのであればマスク処理は必須なので、平井に何とかがんばってもらいました」と浜崎氏。ほかにも後半の花畑など、なかなかディテールの盛り込みに満足いくことができず納品の2時間前まで粘って修正するなど、ダイナモピクチャーズの画づくりへのこだわりが見てとれるカットが満載の劇場版。ぜひ2022年2月23日にリリース予定のBlu-ray&DVDで確認してほしい。

    キャラクターと背景のコンポジット素材

    キャラクターのコンポジット素材。本作のキャラクターはArnoldをベースレンダラとして使用し、Pencil+とRGBライト素材のみMaya Softwareでレンダリングしている。hitTraceを使用している箇所やシェーダでリムライト表現を行なっている髪の毛などのマスク素材はMayaからRGBマスクとして出力し、その他の素体や衣装のマスクはCryptomatteから抽出している。キャラクターのベースコンポと最終コンポは分けられており、作業担当者も完全に分業されている
    • カラー素材
    • 髪グロー素材
    ライン素材。キャラクターのレンダリングとコンポジット担当のキャラクター班からは、上記3つの素材が出力されコンポ班へ渡される
    背景のコンポジットに使用されている素材。背景は前期、後期、劇場版でそれぞれBG班が主要なAOVsを出力後、コンポ班が必要に応じて素材が追加されていく

    キービジュアルでのルックデヴ

    劇場版のルックを模索するため、指針となるキービジュアルが作成された

    • 前半の雪山では、まず背景とキャラクターを仮組みしてレイアウトを作成し……
    • ダイヤモンドダストなどキラキラとしたパーティクル要素を加える
    • さらにポストエフェクトでのライティングエフェクトを追加。当初はArnoldのフォグライトなども検討されたが、スケジュールを考えコストパフォーマンスの良いTrapcode LuxとOptical Flaresを使用している
    • 樹氷の森のライトアップは、Mayaから追加でライティング素材を出力してAfter Effectsで合成した
    • 後半の野原では派手な前半に負けないように、仮組みしたコンポ【画像】に対して……
    • 入射光や舞う花びら、光の粒子など各種エフェクトを付け加えている【画像】。背景についてもさらに華やかにすべく、平井氏がMELを活用しながら手作業で花をカットごとに盛った

    劇場版冒頭のラメール独唱ブレイクダウン

    エンディング演出の松瀬 勝氏による絵コンテ
    完成映像からの抜き出し。「ラメールの独唱を盛り上げるために、カメラがゆっくり回り込む20秒の長回しに挑戦しました。CGキャラクターは角度によって可愛く見えないアングルが発生するので、普通はカットを割るなどして避けるのですが、後期エンディングの出来がかなり良かったのであえてトライしました」(松瀬氏)。特に指輪の発光シークエンスを印象的に見せるため、様々な工夫が施されている。指先がカメラから綺麗に見えるように手のシェイプを調整したり、キャラクターに落ちる演出影をMayaから追加でライティングして出力し、影の形状が汚くなる部分を1フレームずつ影の形状をAfter Effectsで綺麗に整えるなど、他のカットに比べてかなり手間をかけたスペシャルカットとなっている
    • 手の形状調整前
    • 調整後
    • 指輪発光時の陰影調整前
    • 陰影調整後

    絵コンテからレイアウト作成時の工夫

    モーションキャプチャを使った作品の場合、絵コンテ通りにつくっても演出の意図どおりにならなかったり、見映えが悪くなってしまうことがある。そこで本作ではレイアウト作業の段階で、ア二メーター側から演出へ様々な提案をしながらカット制作を行なった

    【上画像】の絵コンテでは上手からの横PANだったが、氷の結晶の上に乗っているという状況説明や、特徴的なキャラクターのモーションの強調、BGMのテンポに合わせたダイナミックな動きを表現した方がより効果的な演出になるのではという理由で、下手から回り込みをしつつPANしながら寄っていくという【下の4画像】の演出を平井氏が提案した
    また、【上の3画像】のようにキャラクター単体のショットでは、アングルやレイアウトがアニメーターにお任せになっているショットが多いため、動きやポーズを見ながら可愛く映えるアングルを探っていったという
    例えばキュアブロッサムは「花」、キュアサマーは「太陽」というように、そのキャラクターのもつイメージやコンセプトに象徴されるレイアウトが施されている

    TEXT_大河原浩一(ビットプランクス)
    EDIT_藤井紀明/Noriaki Fujii(CGWORLD)、山田桃子/Momoko Yamada
    © ABC-A・東映アニメーション © 2021 映画トロピカル~ジュ!プリキュア製作委員会