>   >  「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2014」VFXイベントレポート<1> 京楽ピクチャーズ.PRESENTS スタジオカラー&開田裕治氏トークセッション
「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2014」VFXイベントレポート<1> 京楽ピクチャーズ.PRESENTS スタジオカラー&開田裕治氏トークセッション

「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2014」VFXイベントレポート<1> 京楽ピクチャーズ.PRESENTS スタジオカラー&開田裕治氏トークセッション

開田流怪獣の描き方

「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2014」の会場で開催されていた「ART OF KAIJYU 怪獣絵師 開田裕治 原画展」にあわせて行われたトークセッション「開田裕治を囲む会」。同セッションでは、アニメ・特撮研究家の氷川竜介氏がMCをつとめ、金子修介監督(『ガメラ』シリーズほか)、田口清隆監督(『ネオ・ウルトラQ』ほか)、そして『ウルトラマン』や『ゴジラ』シリーズなどのイラストを手がける"怪獣絵師"開田裕治氏が、怪獣映画にまつわる裏話を披露し、盛り上がりをみせていた。


左より、氷川竜介氏、金子修介監督、開田裕治氏、田口清隆監督

中でも興味深かったのが、開田氏による怪獣の質感表現についての話。今回の展覧会で、開田氏の絵を改めて見たという金子監督が「開田さんの怪獣の絵は、ラバーの質感じゃないですよね?」と質問すると、開田氏はリアルの中に"怪獣らしさ"を見せる、独自の表現方法について答えてくれた。
「怪獣という、実際には存在しないないものを絵にするわけなんですけど、手がかりがないと絵にすることができないですよね。だから、僕の場合は絵を描く時、きぐるみの質感を手がかりにしています。とは言え、きぐるみを忠実に再現してしまうとリアルさが損なわれてしまうので、あくまでも怪獣っぽいゴツゴツとした質感は意識しつつ、例えばシワの入り方なんかは、きぐるみを参考に、イメージをふくらませていく場合が多いです」(開田氏)。
さらに話は、"開田氏はウルトラマンの覗き穴(目玉のような部分)をなぜ描かないのか?" という少々マニアックな話題に。じつはこの覗き穴については、『エヴァンゲリオン』の庵野監督にも怒られたことがあるという開田氏だが、そこには意外なこだわりがあるのだとか。「あの丸い覗き穴は、最初、ウルトラマンのデザインにはなかったものだったんです。実際に現場できぐるみを着ると視界が悪かったので、急遽、無理やり穴を空けたという裏事情がありまして。僕はその由来を知っていたので、であれば、デザイナーの意思を尊重して描いた方がいいなと思いました」(開田氏)。きぐるみは参考にしつつも、あくまで"宇宙人"としてどうリアリティを持たせるか......その絶妙なバランスが、開田氏の描く魅力的な怪獣たちを作り上げているようだ。


たくさんの怪獣映画ファンが集まり、盛り上がりを見せていた会場。壇上の4人の熱い怪獣トークに、笑いがおこることも

今年は怪獣映画の当たり年!?

『ガメラ2 レギオン襲来』(金子監督作品)ほか、多数の怪獣映画にエキストラとしても参加するほど熱心な怪獣映画ファンという開田氏を中心に怪獣談義は続き、話題は"これからの怪獣映画"の話に。金子監督によると、最近はスカイツリーなどの有名なランドマークを映画に登場させることが権利上難しい場合があり「大人の事情で怪獣映画が撮りにくくなってきた」というが、そんな現状でも開田氏は「観客の傾向が、良い方向に変わってきている気がする」と言う。
「昔は怪獣映画を好きな女性なんてまず見かけなかったんですが、最近では僕の展覧会にも女性のお客さんが増えてきてます。『パシフィック・リム』にしても、女性客のウケが良かったという話を聞きますよ」(開田氏)。これは、これまで一部のコアなファンのものだった怪獣映画の魅力が、一般客にも伝わってきた兆しなのかもしれない。「なかなか映画館に来てくれないんですけど......怪獣映画は"観れば面白い"んです」(開田氏)。
最後に、今後の怪獣映画への期待について開田氏は、次のように語っていた。「怪獣映画は、今、本当に雰囲気がよくなってきていると思います。今度の『3Dゴジラ』(ハリウッド版『ゴジラGODZILLA』 )も面白い映画であってほしいですし、これをきっかけに日本でもすごい怪獣映画が出てくることを期待しています」(開田氏)。
今年はハリウッド版『ゴジラGODZILLA』 が公開されるほか、国内作品でも『進撃の巨人』、『寄生獣』、『実写版パトレーバー』など、怪獣が登場する映画が多く公開される年。長年培われてきた日本ならでは"怪獣魂"と最新技術が融合し、2014年は新たな怪獣ブームが巻き起こるかもしれない。


「ART OF KAIJYU 怪獣絵師 開田裕治 原画展」会場の様子。開田氏による怪獣イラストが40点ほど展示されていた

TEXT_山田桃子
PHOTO_弘田 充

『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2014』

『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2014』

開催期間:2014年2月27日(木)~2014年3月3日(月)
会場:アディーレ会館ゆうばり(旧夕張市民会館)、ゆうばりホテルシューパロ、夕張市内会場
主催:ゆうばり国際ファンタスティック映画祭実行委員会、特定非営利活動法人ゆうばりファンタ
公式サイト:http://yubarifanta.com

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