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クラフト感を"デジタル"で高める、デンソー 紹介映像『会社編』

世界有数の自動車部品メーカーとして知られるデンソーが今年1月から公開している紹介映像『会社編』。ミニチュア造形をストップモーション撮影したかのように見えるが、実は全編フルCGアニメーションであり、よく見ると3DCGならではの表現が随所に込められている。クラフト感あふれる力作の制作舞台裏にせまる。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 250(2019年6月号)からの転載となります。

TEXT_大河原浩一(ビットプランクス) / Hirokazu Okawara(Bit Pranks
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada



デンソー 紹介映像『会社編』
クリエイティブディレクター:田中 淳(デンソー)、アニメーション制作:白組、ディレクター:吉田裕行、アートディレクター:勝又典子、プロデューサー:小池 学
www.denso.com/jp/ja/about-us/
© DENSO CORPORATION. All rights reserved.


ストップモーションの醍醐味をCGアニメーションに活かす

ストップモーション風のクラフト感あふれる本作は、同社のブランドスローガン「Crafting the Core」を象徴する内容となっている。実際にミニチュア造形をコマ撮りしたかのように見えるが、全編3DCGアニメーションで構成されており、白組がキャラクターデザイン等のビジュアルデベロップメントから本制作まで一貫して担当した。「2014年に制作した当社の紹介映像を刷新するにあたり、『Crafting the Core』を象徴する映像表現としてストップモーションを思いつきました。白組さんには近年、プロモーション映像などの制作をコンスタントにお願いしているのですが、白組さんにお願いすれば良いものができるだろうと今回もまずは相談したのです」と、本作のクリエイティブディレクターを務めたデンソーの田中 淳氏はふり返る。

〈前列〉左から、奥山光太郎リードVFXデザイナー、吉田裕行ディレクター、田中 淳クリエイティブディレクター(デンソー)、小池 学プロデューサー、勝又典子アートディレクター/〈後列〉左から、溝田颯士PM、吉村 亮リードアニメーター、田原敬大PM、矢野 剛TD、石田裕太郎VFXデザイナー
shirogumi.com


田中氏から企画の相談が舞い込んだのが、昨年6月のこと。「白組はミニチュア撮影や特撮からスタートしたプロダクションですし、調布スタジオにはコマ撮り撮影用のスタジオもあるので実際にストップモーションで制作することも可能でした。ですが、モビリティというキーファクターを考えたときに、修正の容易さや自由度の高さからコマ撮り風のCGアニメーションとして制作することをこちらから提案させていただいたのです」とは、本作のディレクターを務めた白組の吉田裕行氏。田中氏はこの提案を快諾し、昨夏からプリプロダクションがスタートした。「今回は、田中さんが自らCinema 4Dを使われてビデオコンテを作成してくれました。描きたいストーリーや世界観を具体的に示していただけましたし、CGについても深い造詣をおもちなので終始スムーズに制作を進めることができました。アーティストたちが画づくりに注力できたことが、このクオリティにつながっています」(吉田氏)。実際に好評とのことで、先日開催された「上海モーターショー2019」では、本作の世界観を踏襲した新作も披露されている。

Topic 1 ビジュアルデベロップメント&キャラクター制作

目指す世界観と制作効率を両立させる

まずは田中氏から提示されたビデオコンテに込められた、「十数年後の近未来の地球、世界中でデンソーのモビリティ技術が人々の生活に役立っている」というコンセプトを基に、勝又典子アートディレクターを中心にアートワークの制作が行われた。登場するサービスカーのデザインやキャラクターデザインなど、PVに登場する具体的な要素をイメージボード化し、田中氏にチェックを受けながら制作するアセットのプランニングを行なっていった。「グローバルな世界観が求められたので、様々な人種かつ老若男女から成るバラエティに富んだキャラクターを、いかに効率良く作成するかもポイントになりました」(勝又氏)。そこで男性、女性、子供の3種類を素体として作成。その際に、身体の各部位を7~8パーツに分けて、それらを任意に組み合わせることでバリエーションを増やすというアプローチが採られた。具体的には、矢野 剛テクニカルディレクターが、Googleスプレッドシートで作成したバリエーション表からMAXScriptを使って自動的にキャラクターのアセットが作成されるしくみを開発。最終的に55種類のキャラクターが制作された。

キャラクターモデルは、クラフト感とバリエーションのつくりやすさを両立させるため、デザイン的なルールが明確にプランニングされている。「実際のストップモーション作品に用いられているミニチュアっぽさを出すためには、どのようなサイズ感が良いのか、その一方ではクルマに乗って運転したりもするので、クルマのサイズとの対比などをBipedなどを使って試しながらデザインを行なっています。質感については、なるべくSSSなどの透け感のあるものは使わず、スペキュラをオーバーに設定するなどして、メリハリのある質感にすることでハンドクラフト感を出しました」と、勝又氏。キャラクターの配色についても同様に、髪や肌が単色で設定することで、ミニチュア造形らしさと同時にバリエーションのつくりやすさにも配慮されている。キャラクターのリグ&セットアップはCATをベースに作成。素体ごとに共通のリグになっている。

ビデオコンテ

田中氏から提供されたビデオコンテを基に作成した絵コンテの例。ビデオコンテは田中氏自身がCinema 4Dで作成したものであり、アニマティクスといっても過言ではないほど骨子がしっかりとしている

イメージボード

各シーンのイメージボード例。勝又ADを中心に、白組2D班の加藤未起子氏と共同で作成された

キャラクターデザイン&アセット

キャラクターデザイン決定稿。ハンドクラフトとしての表現と親和性が高く、視聴者が親しみを感じるものとして、人形的なものやイラスト調など複数パターンを模索した結果、図のようなデザインにまとめられた

キャラクターリスト(抜粋)。キャラクターモデル1体を7~8パーツに分けて管理しておき、それらを任意に組み合わせるMAXScriptを矢野TDが作成することで効率的にバリエーションがつくり出された。最終的に55種類のキャラクターがPV中に登場する

キャラクターモデル



  • 素体(リグとシェーディングを表示させた状態)



  • 最終モデルの例(リグとシェーディングを表示させた状態)

【右上画像】(最終モデルの例)のレンダリングイメージ

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Topic 2 ショットワーク

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