>   >  原作イラストの風合いを忠実に再現! 『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』
原作イラストの風合いを忠実に再現! 『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』

原作イラストの風合いを忠実に再現! 『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』

キャラクター誕生7周年を記念して製作された劇場長編アニメーション『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』。原作のかわいらしいイラストをアニメーション作品として忠実に再現するために2Dと3DCGの技法を効果的に織り交ぜ制作された。その舞台裏を紹介しよう。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 259(2020年03月号)からの転載となります。

TEXT_村上 浩(夢幻PICTURES
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada
©2019 日本すみっコぐらし協会映画部

『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』
原作:サンエックス/監督:まんきゅう /脚本:角田貴志(ヨーロッパ企画) /美術監督:日野香諸里 /アニメーション制作:ファンワークス / リード3DCGアニメーション制作:IKIF+/配給:アスミック・エース
sumikkogurashi-movie.com

大ヒットを実現した成功要因は少数精鋭&的確な2D/3Dの使い分け

現在もロングラン上映中の本作。映画化における最大の難関は、「原作のイラストイメージを崩さずにアニメーションさせることができるのか?」であった。アニメーション制作を務めたファンワークスは、2Dよりも3DCGの方がキャラ崩れが起きにくいと考え、様々な作品でタッグを組んできたアイケイアイエフプラス(以下、IKIF+)に協力を求めた。「絵本やイラストを原作としたアニメ化の成否の鍵は『原作キャラクターに似ているかどうか?』に尽きます。IKIF+さんに本企画の相談したところ、フル3DではなくMoho Proも利用することを提案していただきました」と、石原由加里氏(ファンワークス)はふり返る。Moho Pro(以下、Moho)は、イメージベースで高度なアニメーション作成が行えるツールで、キャラ崩れが起きにくいことに加えベクターデータも扱えるため解像度フリーで劇場作品にも柔軟に対応できる。「すみっコぐらし特有のまるくやわらかいデザインを追求する上では、3Dにこだわる必要はないと思いました。Mohoを活用すれば擬似3Dのような表現も可能ですし、登場の少ないキャラや衣装ちがいなどを中心に2Dも利用すれば、結果的に3Dのクオリティも高められるはずだと考えました」と、IKIF+の奥村優子CGプロデューサー。

〈前列〉右から、石原由加里アニメーション・プロデューサー、松井久美クリエイティブ・ディレクター(以上、ファンワークス)、熊倉ちあきCG Dir. 、服部笙太アニメーター/〈後列〉右から、奥村優子CG Pr.、濱中 裕CG Pr. 、渡部里奈モデラー、立石美紀PM、石田龍樹モデラー、山田桃子アニメーター。以上、IKIF+

すみっコたちは言葉を発しないという厳格なルールがあるため、キャラクターの感情を芝居で的確に伝えることが求められるなど、アニメーションの難易度は必然的に高くなり、試行錯誤がくり返された。「制作中は多くの課題や難題がありましたが、サンエックスさんは社内に本プロジェクト専門チームを設けてくれました。少数精鋭で良し悪しの判断が早く、修正指示の内容も明確だったので、風通しの良い環境で制作することができて感謝しています」(濱中 裕CGプロデューサー、IKIF+)。

<1>「このコたち、生きていたんだね」~ビジュアルデベロップメント~

できるだけ最終形に近い画でチェックしてもらうことが大切

アニメーション制作は、2018年秋にスタート。キャラクター開発は「ぺんぎん?」の3DCGモデルから着手。3週間ほど費やし、原作イラストをいかにして3DCGとして成立させるのかが追求された。「シンプルな形状なので当初は『ぺんぎん?』の目処がつけば、そのモデルをベースとして他のキャラクターたちを派生できると思っていました。ところが、作業を進めていくと各キャラごとにフォルムが微妙に異なることに気づきました。そこで、アニメーション制作を進める前に、すみっコ5体(しろくま、ぺんぎん?、とんかつ、ねこ、とかげ)をイチからつくり直しました」と、CGディレクターを務めた熊倉ちあき氏(IKIF+)はふり返る。モデル制作を進める際は、サンエックスからグッズ用の三面図なども提供してもらい、それらをリファレンスとしてディテールが詰められた。また、キャラクターの個性をつかむ上では原作に描かれた各キャラのポーズ集を作成することにしたそうだが、そのためには書籍をはじめとする様々なグッズの中から必要な絵を探し出す必要があった。「膨大な資料を前に作業が難航していたのですが、2018年12月25日にサンエックスさんから社内で使用されているスタイルガイドを提供していただけたのです。最高のクリスマスプレゼントでした!」(熊倉氏)。

当然ながら、リグ&セットアップもひと筋縄ではいかなかった。「2頭身で可動パーツも少ないためシンプルな構造で済むと思っていたのですが、カメラアングルやレンズのミリ数が変わるとキャラ崩れが生じやすいことが判りました。最終的には形状を細かく調整できるような複雑なリグが必要になったのですが、シンプルだからこそごまかしが利かないことを実感しました」(石田龍樹CGテクニカルディレクター、IKIF+)。アニメーション作業を進めるにあたっては、2019年2月にテスト試写を実施。台詞フォントの表示、キャラクターのラインや色味、背景美術の質感など、鍵となる表現の劇場スクリーンでの見え方が確認された。また、原作者であるサンエックスには最終ルックに近い状態でチェックしてもらうことを常に心がけていたそうだが、一連のチェック資料はデザインやフォントなども細部まで原作『すみっコぐらし』への敬意と愛を感じる仕上がりだ。「アニメーション制作のスタッフにとっては当たり前のことが、原作者の方々にも当たり前とはかぎりません。そこで最終的な画に近いかたちで確認してもらうことを心がけました。そして何を確認してもらいたいのかを明確に提示することも欠かせません」と、ファンワークスの松井久美CDは語ってくれた。

最終ルックにできるだけ近い状態でチェック

サンエックス向けに作成された初期のプレゼン資料より。3Dでどれだけ原作イラストを再現できるのか、プリプロ段階では3DモデルはR&D途中であったため、原作イラストを再現しやすい「Moho」の併用を提案することで、原作イラストをアニメーションとして再現できることをアピールしていた

2019年2月上旬に実施されたアニメーション制作チームの打ち合わせ資料より。3ds MaxとMohoを併用して作品を制作する体制について、IKIF+より改めて提案された。3DCGと2D、それぞれのメリットとデメリットがわかりやすくまとめられている


制作途中におけるモデルチェックの例



  • Moho



  • 3ds Max。スタイルガイドのポーズをどれだけ再現できるかモデルの形状やリグを調整しながら試行錯誤が重ねられた

3Dアニメーションテストの例。キャラクターの歩きやカメラの回り込みをはじめ、走る、立ち上がる、お茶を飲むといった、主に日常芝居の動きが検証された


2019年2月に実施された試写上映に関する資料より。台詞文字やキャラクター線の見え方に加え、背景美術の色味やスキャン方式(紙の質感をどれくらい残すか)などが検証された



  • 台詞の文字表示について



  • キャラクターの線(輪郭など)の見え方について

スタイルガイドを踏襲したキャラクターモデル

「しろくま」の3DCG最終モデル

「ひよこ?」の3DCG最終モデル

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<2>シンプルなキャラクターゆえに奥深い!~本制作~

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