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シリーズ初のUnreal Engineでフィニッシュ!『ヒーリングっど♥プリキュア』後期ED

シリーズ初のUnreal Engineでフィニッシュ!『ヒーリングっど♥プリキュア』後期ED

『プリキュア』シリーズのエンディング(以下、ED)映像は、『フレッシュプリキュア!』(2009)以降、3DCGアニメーションで制作されており、毎シリーズごとにファンのみならずアニメCG制作者からも注目をあつめるコンテンツとなっている。現在、クライマックスをむかえているTVシリーズ『ヒーリングっど♥プリキュア』。その後期ED『エビバディ☆ヒーリングッデイ!』アニメーションは、シリーズ初のUnreal Engine 4によるリアルタイムCGによって仕上げられた。アニメーション制作を担当したGUILD STUDIO中核スタッフに話を聞いた。

TEXT_坂本剛一(亡霊工房) / Gouichi Sakamo(Boureikoubou)
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
Special thanks to 竹下和広(コンフィデンス) / Kazuhiro Takeshita(Confidence)



2月21日(日)とうとう最終回!
ABCテレビ・テレビ朝日系列にて毎週日曜あさ8時30分放送中!
www.toei-anim.co.jp/tv/precure/
『ヒーリングっど♥プリキュア』後期エンディング主題歌『エビバディ☆ヒーリングッデイ!』
© ABC-A・東映アニメーション


<1>プリキュアIPのマルチ展開を見すえたリアルタイムCG制作

『プリキュア』シリーズのEDにとって、全編をリアルタイムCGで仕上げた初の作品となった『ヒーリングっど♥プリキュア』後期ED『エビバディ☆ヒーリングッデイ!』。アニメーションを制作したGUILD STUDIOは、ゲームタイトルの受託開発を中核事業にしており、社内にはアートやディレクションを担えるスタッフも在籍しているため1タイトルのアセット制作からマスターの作成までをワンストップで行える体制をかまえている。ノンゲームのコンテンツ制作を手がけたのは今回が初めてとのことだが、本作のディレクターを務めた角田徳秀氏(執行役員、シニアアーティスト)が、映像畑出身であり、東映アニメーションにも在籍していた経歴をもつことから白羽の矢が立てられたという。

『ヒーリングっど♥プリキュア』後期ED『エビバディ☆ヒーリングッデイ!』制作スタッフ
<前列>左から、背景/コンポジット/編集担当 田中洋平氏、ディレクター 角田徳秀氏。以上、GUILD STUDIO



本作のコンセプトは、EDシリーズの原点回帰となる「映像を観た子供たちにダンスを覚えてもらう」だったと、角田氏は語る。また、GUILD STUDIOへのオファーの背景としては、クライアントである東映アニメーションとしても各作品にて制作したアセットのワンソースマルチユースを目指しているそうで、リアルタイムエンジンによる開発実績が豊富なGUILD STUDIOと方向性が噛み合った格好だ。両社にとって、今後を見据えた戦略的なプロジェクトになった印象がある。

制作は2020年3月よりスタート、リアルタイムCGはUnreal Engine 4(以下、UE4)によって作業が行われた。制作中は必要に応じて『ヒーリングっど❤プリキュア』本編のCGディレクターを務める大曽根悠介氏(東映アニメーション)による監修を受けていたという。

大まかなスケジュールは下記の通り;

3月:プリプロダクション
......コンテや表現など演出プランの作成開始
4月:R&D
......東映アニメーションよりアセットの提供を受けて検証、リアルタイムCGへの最適化
5〜7月:本制作

8月:最終仕上げ→O.A

© ABC-A・東映アニメーション


昨年(1回目)の緊急事態宣言発令を受けて、4〜5月はリモートワーク主体の制作となったという。6月より徐々に出社していくかたちになったが、状況によって臨機応変に対応。制作に用いる機材との兼ね合いでリモートワークが難しかったり、1人での作業が逆にストレスになったりと、相応に苦労もあったそうだ。

GUILD STUDIOでは14名が制作に参加、その内訳は次の通り;
ディレクター:1名(角田氏)
プロダクション・マネージャー:1名
エンジニア:2名
コンセプトアーティスト:1名(イメージボードを作成)
モデラー:2名(キャラクターモデルの最適化を担当)
アニメーター:4名
FXアーティスト:1名
背景/コンポジット/編集:1名
シーン制作:1名(UE4による画づくり)

ここからは制作過程を具体的に紹介したい、まずはプリプロダクションだ。ダンスムービーとして制作することから、通常のカットを割った絵コンテは作成せず、UE4のシーケンサーを用いてオフライン編集を行うようにVコンテが作成された。手順としては、ダンスのモーションキャプチャデータをそのまま流し込み、大まかなレイアウトをとる。ショットごとにサブシーケンスを作成し、それをマスターシーケンスに並べるかたちだ。ライブやMVなどで複数のカメラで撮影した素材を編集するようなイメージに近い。


▲ UE4のシーケンサー上で作成したVコンテの例。個々のショットはサブシーケンスで作成し、それをマスターシーケンスに並べている。「セカンダリのない、純粋にダンスモーションを流し込んだだけのSkeletal Meshで撮影しています。この段階では背景はなく(イメージボードの作成と平行して作業しています)、タイムシートに沿ったながれでダンスと大まかなレイアウトを作成しました。ダンスものの場合、絵コンテよりもシーケンサーでVコンを作成した方が、後の工程にもつなぎやすく効率的に作業を進めることができます」(角田氏)。これ以降のショット制作は、Vコンをベースにショットごとにブラッシュアップが重ねられた


Vコンテの作成に先立ち、楽曲の歌詞や小節、振り付け、拍のタイミングを視覚化した「タイムシート」が作成される。これにより各要素が認識しにくくならないように配慮された。どのフレームにどの振り付けを合わせるか、その小節で何カット割けるかなどを検証。リズムゲームの開発にも携わってきたという角田氏の経験を活かした制作スタイルと言えるだろう。

▲(左図)タイムシートの例/(右図)タイムシートを基に作成した動画。リストだと作業時に把握しにくいため、ムービーでタイムシートの内容を指定したものである。タイムシートとは、楽曲のセクション、小節、拍のタイミングを視覚化したリストである。「楽曲の歌詞、ダンスのタイミングと演出の同期のために作成したものです。曲のセクションの切り替わるフレーム数、ダンスの連続性をカットで認識しにくくならないようこのリストをガイドにして演出を考えます」(角田氏)。タイムシートに記載されている情報は、「曲のBPM」「セクション、小節、拍」「秒」「フレーム数(24fps)」「ダンスの特徴的な部分の画像(振付のガイドムービーより)」「歌詞」である。歌詞、ダンスの振り、小節頭のフレーム数がポイントになるほか、エフェクトのタイミングなど細かい部分は拍のフレーム数でタイミングを取っている

イメージボードで表現や世界観を提案していったそうだが、リファレンスムービーなどを用いつつも東映アニメーションから提供されたキャラクターモデルをシーンに入れ込んで、ルックデヴも並行して進めていくなど、早いタイミングから最終的なルックにできるだけ近いかたちでチェックを受けることが心がけられた。


▲ イメージボードの例。全シーンのイメージや演出案を記載した資料を用意し、東映アニメーションに確認してもらったという。曲のセクションごとのシーンや演出イメージなどが、この段階でほぼ決まっていたことが窺える


Vコンテの段階で最終的なルックに近い状態に仕上げられたわけだが、まさにリアルタイムCGの強みを活かしたワークフローと言えよう。また、GUILD STUDIOが普段行なっているゲーム開発では早い段階でルックとしては完成形に近い状態に仕上げることが習慣化しているそうだ。



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<2>アニメ本編の魅力をリアルタイムCGへ継承させる

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