NHKの大河ドラマ『青天を衝(つ)け』のVFX映像の制作過程や裏話、現場の様子などをご紹介するシリーズ企画。11回目となる今回は「江戸紺屋町」のシーンについて解説したいと思います。

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TEXT_『青天を衝け』VFXチーム(NHK
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada

[青天を衝け] VFX編 | 激動の幕末をダイナミックに描く舞台裏 | 青天を衝けの世界 | NHK
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ミッション<11>「染め物がたなびく紺屋町を再現!」

第3回の放送では渋沢栄一と市郎右衛門の父子は染め物の流行の発信地として有名だった江戸神田の紺屋町を訪れます。栄一たちは血洗島で染め物に必要な染料となる藍玉をつくっています。紺屋町の問屋で扱ってもらおうと営業に来たのです。当時の紺屋町の家の屋根には染め物を干す物干し台があり、藍色の染め物を風で乾かしていたそうです。今回はその風景をどうやってつくったのかをご紹介します。

▲第3回放送の紺屋町のシーン

このシーンも茨城県の「ワープステーション江戸」で撮影しています。当時の浮世絵にも紺屋町の景観は描かれていて、「屋根の上で風にはためく、たくさんの長い藍染の布」を実現するべく検討をはじめました。オープンセットの屋根の上には強度の問題で物干し台やたくさんの布を実際に置くことができないため、VFXで実現するしかありません。屋根より下は美術飾り、屋根より上はVFXと役割分担をしました。

▲美術部が描いた紺屋町のイメージ

カメラが動いていても、屋根の上の物干し台や藍染の布をピッタリ合わせて合成することができるか? それらを検証するためにまずはテストをすることにしました。ロケハン時にスマートフォンで撮影したムービーをPFTrackでトラッキングをし、そのデータから屋根のラフモデルを起こしました。そして、その屋根の上にライブラリにある櫓のCGモデルをテスト合成したところ、上手くいきそうな手ごたえを得られました。このように気になるところを確認するためにも、ロケハンや下見のときには写真やムービーを撮影しておき、実際の撮影プランをたてる前に検証できるようにしています。

▲建物の屋根に櫓を合成するトラッキングテスト

次に長い布をはためかせるテストをしました。HoudiniのVellumでClothシミュレーションをしています。

▲Houdiniの画面

垂れ下がる布の長さを変えながらシミュレーションをし、見え方を確認しています。

▲布の長さを変えながら見え方を確認

▲VellumでClothシミュレーション

先程の実写プレートに物干し台とClothシミュレーションをした布を合成してみます。

▲プレビューとレンダリング画像

事前にR&Dをしたことで目処がたち、安心して撮影に臨めました。撮影では屋根より下の部分は鮮やかな藍染の布を美術チームが飾り付けています。

▲オープンセットに美術で飾りつけをする

下記のムービーが撮影映像です。屋根の上には何もないことがおわかりいただけると思います。

▲撮影映像

そして下記のムービーがVFXで制作した藍染の布を屋根に合成したものです。

▲完成映像

このようにしてにぎやかな江戸紺屋町のシーンはつくられました。今後もNHKの大河ドラマ『青天を衝け』のVFX技術をたくさん紹介していきますので、ぜひ放送をご覧ください。(『青天を衝け』VFXチーム)



info

  • 大河ドラマ『青天を衝け』
    【放送情報】
    NHK 総合 毎週(日)夜 8:00~/[再放送]毎週(土)午後 1:05~
    NHK BSプレミアム 毎週(日)午後 6:00~
    NHK BS4K 毎週(日)午後 6:00~
    公式HP www.nhk.or.jp/seiten

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