NHKの大河ドラマ『青天を衝(つ)け』のVFX映像の制作過程や裏話、現場の様子などをご紹介するシリーズ企画。20回目となる今回は3DCGで再現した富岡製糸場と第一国立銀行について解説したいと思います。

TEXT_『青天を衝け』VFXチーム(NHK)
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada

[青天を衝け] VFX編 | 激動の幕末をダイナミックに描く舞台裏 | 青天を衝けの世界 | NHK
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ミッション<20>「3DCGで明治の建物を再現する!」

連載第10回の「江戸日本橋大通り」でもご紹介していますが、NHKでは江戸時代の建物をはじめ、明治・大正・昭和の日本建築や洋館など、汎用的な建物CGをライブラリ化しており、多くのドラマ番組などで活用しています。汎用アセットとしてライブラリにないものについては番組ごとにCGモデルをつくり、それらもライブラリ化していくことでその後の番組で利用できるようにしています。

▲江戸アセットの一例

▲昭和アセットの一例

今回は第31回で放送した「富岡製糸場」と「第一国立銀行(三井組ハウス)」についてご紹介します。

①『花燃ゆ』のCGモデルを活用した富岡製糸場

世界遺産でもある「富岡製糸場」は大河ドラマ『花燃ゆ』(2015年放送)でも登場し、そのときにCGモデルを制作しています。たくさんの写真から制作した『花燃ゆ』当時のCGモデルはmentalrayシェーダで制作していたため、今回Arnold化するとともに、ブラッシュアップを行ないました。細かくつくり込み、煙突の形状なども建設当時のものにより近づけています。

▲富岡製糸場で撮影した写真

▲現在の富岡製糸場の写真

▲富岡製糸場のCGレンダリング

▲富岡製糸場のCGワイヤーフレーム 

次のムービーは富岡製糸場のパンカットの完成映像です。

▲富岡製糸場のパンカットの完成ムービー

富岡製糸場は当時の建物の多くが残っていますが、現代物があったり、煙突の形状が変わっていたり、工事中だったりしたため、西置繭所以外の建物は3DCGで置き換えています。

▲富岡製糸場での撮影映像

コロナ禍の中、出演者を連れての現地撮影ができなかったため、渋沢喜作の撮影はスタジオでのグリーンバックで行ないました。

▲スタジオでの喜作の撮影映像

次の映像はVFXブレイクダウンです。富岡製糸場で撮影した素材に合わせ、3DCGによる当時の富岡製糸場、グリーンバックによる喜作を合成しています。

▲富岡製糸場のパンカットのVFXブレイクダウン

次のムービーは喜作のアップカットの完成映像です。

▲喜作のアップカットの完成ムービー

この喜作のアップカットも、もちろんスタジオでグリーンバック撮影を行ないました。

▲スタジオでの喜作の撮影映像

最後に、次の映像はVFXブレイクダウンです。

▲喜作のアップカットのVFXブレイクダウン 

②第一国立銀行(三井組ハウス)

続いて「第一国立銀行(三井組ハウス)」について説明します。この建物は1873年(明治6年)に清水組によって建設されたもので、横浜や築地など外国人居留地の外に建てられた国内初の洋風建築です。第31回の放送では「三井組ハウス」として登場しますが、第32回の放送以降は「第一国立銀行」となります。ドラマの中でも登場していましたが、建設業を営んでいた清水喜助が外国人の手を借りず、和洋折衷の凝洋風建築として作ったもので、当時としても珍しい形をしており、観光名所にもなったそうです。関係各所(清水建設や国立科学博物館など)から資料を借り受け、忠実に3DCGで再現していきました。

▲第一国立銀行のCGモデル

▲第一国立銀行のCGレンダリング

次のムービーはルックデヴのものです。ドラマでは映らない裏面はつくっていないことがわかると思います。

▲第一国立銀行のルックデヴ

次のムービーは第31回放送で登場した三井組ハウス(第一国立銀行)の完成映像です。

▲三井組ハウスの完成ムービー

このシーンはスタジオグリーンバックでの撮影となっています。三井組ハウスの建物が高いのでカメラは仰瞰しており、人物の上半身がグリーンバックの外に出ています。天井や照明器具に重なっているため、手でのマスク作業が必要となり、VFXカットとしてはとても難易度の高いものになりました。今回はスタジオ撮影となりましたが、スケジュールや予算が許せばロケ撮影にして、外光の中で人物の撮影ができたなら、VFX制作の難易度も下がり、クオリティも上げやすくなると思います。

▲スタジオ撮影の様子

▲三井組ハウスの撮影ムービー。人物の上半身がグリーンバックの外に出ていることがわかる

門や塀は美術セットで作り、その奥の三井組ハウス(第一国立銀行)や木などは3DCGにしています。ちなみにこのカットは、塀の細い柵のマスクの作業量が膨大になりそうだったので、最終的には3DCGの柵に差し替えました。

▲三井組ハウスのCGムービー

このシーンでは三井組ハウス完成祝賀会のパーティーが開かれており、2階のベランダには複数の客人を合成する必要がありました。そこで、スタジオに簡易の台をつくり、カメラを見上げた状態で人物素材の撮影も行ないました。このような素材はできるだけ実際のパースに近づけて撮影することが重要です。

▲2階に立つ人物素材撮影の様子

▲撮影した人物素材

建物のポールに掲げられている「三井組」の旗は実際に外で低いアングルから撮影しました。3DCGで制作することも可能ですが、制作スケジュールやコストなどを考えた結果、実写で撮影するという判断をしました。旗の揺れは大きな扇風機を使用しています。

▲揺れる旗の素材

建物に飾り付けた提灯の揺れはHoudiniのVellumでシミュレーションしています。先程の実写で撮影した旗の揺れが強かったため、それに合わせて揺れを調整しています。ただ、実写に合わせて強くしすぎると不自然に見えたため、斜めに貼っている長いロープだけ大きく揺らすなど、場所によって揺れの大きさを調整しています。

▲HoudiniのVellumでのシミュレーション

▲HoudiniのVellumでのシミュレーション

次のムービーはVFXブレイクダウンの映像です。このように実写や3DCGなど多くの素材を合成してつくり上げたカットです。

▲三井組ハウス(第一国立銀行)カットのVFXブレイクダウン 

今回は「富岡製糸場」と「三井組ハウス(第一国立銀行)」の外観カットの制作事例をご紹介しました。今後もNHKの大河ドラマ『青天を衝け』のVFX技術をたくさん紹介していきますので、ぜひ放送をご覧ください。(『青天を衝け』VFXチーム)



info

  • 大河ドラマ『青天を衝け』
    【放送情報】
    NHK 総合 毎週(日)夜 8:00~/[再放送]毎週(土)午後 1:05~
    NHK BSプレミアム 毎週(日)午後 6:00~
    NHK BS4K 毎週(日)午後 6:00~

    総集編:2022年1月3日(月)NHK総合
    午前 8:15~10:00 第1部(55分)・第2部(50分)
    午前10:05~11:49 第3部(54分)・第4部(50分)
            
    公式HP www.nhk.or.jp/seiten

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