最近では、監督作である京都学園大学CM『アサキマダラの夢』(2015年度版)が公開されたほか、「SIGGRAPH Asia 2015」の「Computer Animation Festival」に同じく監督を務めたHigh speed boyz『I wanna rock』MVが入選をはたすなど、若手の気鋭クリエイターとして2015年も八面六臂の活躍をみせた森江康太氏(トランジスタ・スタジオ)。一連の功績を称え、「CGWORLD大賞 2015」候補者に選出された森江氏に、今年のふり返りや2016年の抱負などについて伺った。
<1>賛否両論あったテライユキの表紙
――森江さんにはCGWORLD200号記念号で表紙用にテライユキのCGを描いていただきましたね。
森江康太氏(以下、森江):最初にお話しを頂いた時は「嘘だろ」って思いましたけどね(笑)。テライユキが流行ったころはまだ高校生でしたし。そのためキャラクターのリサーチから始めました。ラフデザインを何枚か描いてみて、ファッション雑誌の表紙のようなイメージでいくことに決めました。
――背景は東京駅の写真ですよね。
森江:ちょうど東京駅も開業100周年で、2020年には東京オリンピックも開催されますし、200号記念にぴったりじゃないかと。なにか東京らしさというか、時代性みたいなものを取り入れたかったんです。他に東京タワーの写真を使うなどのアイディアもありました。
――反響はいかがでしたか?
森江:賛否両論ありました。こんなのテライユキじゃないとか(笑)。逆にTwitterのタイムラインでは、懐かしいというコメントもよく見かけました。おそらく30~40代の方々がそのように書いてくださったんだと思います(笑)。
――2015年はどんな年でしたか?
森江:CM案件が増えました。もともとCGアニメーターからキャリアをスタートさせて、次第に監督業の比重を高めていきましたが、以前は人づてでオファーが来ることが多かったんです。それが弊社宛に業務発注される案件が増えて、少しは認知度も上がってきたのかなと。京都学園大学のTVCMなどは、そうした例ですね。ローカルCMですが地上波でオンエアされて、かなりの投下量だったと聞いています。
森江氏が監督を務めた京都学園大学のCM。【Web限定】『アサギマダラの夢』~京都学園大学 2015年度テレビCMシリーズ~
High speed boyz『I wanna rock』MV(SIGGRAPH Asia 2015「Computer Animation Festival」入選)
セル・シェーディングやフォトリアリスティック、そしてそのどちらでもない様式美あふれる表現など、多彩なビジュアルをつくり出せるのが森江氏の強みだ
――監督業以外ではいかがでしょうか? NHKスペシャル『生命大躍進』のCG映像制作にも参加されました。
森江:古代生物や恐竜のCGアニメーションを作成させていただきました。NHKスペシャルで扱われるので、動きについてはかなり厳しい監修がくると覚悟してましたが、私たちの作った動きをほぼそのまま放送していただけたので、逆に驚きましたね。ただ、自分なりに勉強はしたんです。骨格の形状や現存する動物の動きをかなり研究し、推測しながら作りました。
――生命大躍進はCGの制作陣も豪華でしたね。
森江:そうなんですよ。田口工亮さん、森田悠揮さん、福田裕也さんなど、モデラー陣も超一流で。こりゃ動かす方も負けてられないなと。リグは神央薬品さんに組んで頂いただけたので、とても助かりました。
――それは珍しいやり方ですね。
森江:はい、ふつうは元請けになるCGスタジオから外注されるか、そのスタジオにCGクリエイターが出向して作るケースが多いんですよ。逆に得意分野が異なる制作会社が何社か集まってつくると、個性が強すぎて空中分解してしまうリスクも高まります。今回はNHKの松永孝治さんと高畠和哉さんが、うまくまとめてくださって。各スタジオの個性を尊重してくださる感じが伝わってきました。
――生命大躍進は4K映像でしたが、実際に制作されていかがでしたか?
森江:うちはアニメーション作成だけだったので、それほど大変ではありませんでした。ただレンダリングは大変だったと思いますね。国内でも随一の規模を誇るレンダーファームを備えた、NHKならではの企画だったと思います。