身体を張ってモンスターの動きを表現
C:小西さんは『Gray』を通して何をやりたいと考えていましたか?
小西:新しい何かを経験し、できることを増やしたいと思っていました。初めて学内のモーションキャプチャ施設を使い、モンスターの動きを収録できたことは大きな収穫でした。加えて、これまでは一般的な人間の動きを中心につくってきたので、超常的なモンスターの動きをつくれた点も良かったです。60fpsのアニメーションを付けるのも初めての経験だったし、とにかく表現の幅が広がりました。自分の成長にとって『Gray』はとても有益なプロジェクトだったと思います。
C:モーションキャプチャと手付けアニメーションは、どのように使い分けましたか?
小西:基本的な動きはモーションキャプチャで収録し、人間が演じられない超常的な動きは手付けで表現しています。例えば天井から真っ逆さまに落下してきたり、人間離れした起き上がり方をしたりする部分は手付けしています。
C:モーションの数はどのくらいあったのでしょう?
小西:当初は30くらいを予定しており、実際に結構つくったのですが、最終的に使ったのは一部だけでした。
C:ボツになったモーションも結構あったわけですね。アクターも担当したとおっしゃっていましたね。
小西:はい。そのせいもあって、肉体的にもハードなプロジェクトでした(笑)。仮面を付けたモンスターは「ちょっと動きがぎこちない」という設定だったので、上半身にぐるんぐるんにテープを巻き、関節の動きを抑え込みました。上半身は少しずつ、ぎじぎじぎじって感じで動かす一方で、下半身は比較的よく動く、不思議な歩きを表現したかったのです。一緒にアクターをやった友だちも身体を張ってくれて、片手に重りを持ちながら、20テイク近くも同じ歩きを演じてくれました。最後に収録した疲れ切ってへろへろになった動きが一番イメージに近いということで、ようやくOKがでました(笑)。
C:その判断は誰がしていたのですか?
今村:自分です。
C:厳しいアートディレクターですね(笑)。
今村:チームメンバーには、本当に感謝しています(笑)。
▲モーションキャプチャの収録風景。アクターを担当しているのは小西氏の友人。モンスターらしさを表現するため、片手に重りを持ちながら、20テイク近くも同じ歩きを演じたという
▲同じくモーションキャプチャの収録風景。収録データを今村氏たちがその場で確認し、アクターに指示を出している
▲モーションキャプチャデータを基につくられたモンスターのアニメーション
前編は以上です。後編では、『Gray』におけるテクニカルアーティストとプログラマの役割を中心に紹介します。ぜひお付き合いください。
「学生作品とは思えない?!本格サバイバルホラーVRゲーム『Gray』メイキング(後編)」は
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