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復刻・第10回:打ち上げ花火

復刻・第10回:打ち上げ花火

先月の第38回:先駆放電で新規作例の掲載を終了した本連載ですが、今月から13回にわたって書籍「イラストでわかる物理現象 CGエフェクトLab.」に未掲載のテーマをCGWORLD本誌のバックナンバーより転載します。

今回は夜空に咲く華やかな「打ち上げ花火」を制作します。400年以上の歴史をもち、膨大な種類がありながら今なお進化を続ける花火のスケール感をFumeFXを用いて再現してみました。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 201(2015年5月号)からの転載となります

TEXT_近藤啓太(ジェットスタジオ
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD) 、山田桃子 / Momoko Yamada

400年以上の歴史をもつ夏の風物詩

読者のみなさまこんにちは。今回取り扱うテーマは「打ち上げ花火」です。打ち上げ花火と言えば夏の風物詩。確認できる限りでは、日本で花火を楽しむようになって400年以上経つそうです。そんな長い歴史をもつとあって、花火には実に多くの種類があることがわかりました。今回使用したリファレンス動画では定番である球状の打ち上げ花火だけではなく様々な種類の花火が登場していますので、時間の許す限り再現に挑みました。今まで何気なく花火を見ていたという人にも「こんなに色々な花火があるんだ」と、本稿を読んで興味をもってもらえたら幸いです。

そんな驚くほどの種類がある打ち上げ花火ですが、やはりその理由は職人の方たちが時を超えて連綿と積み上げてきた技術と創作への熱意があったからにほかなりません。人がひとりでできることは些細ですが、同じ志をもった人たちが集まれば人数以上の素晴らしい作品ができるのは3DCGでも同じだと思います。日本の3DCG業界も打ち上げ花火の歴史のように、切磋琢磨しながら永く続いていけばと感じた次第です。

主要な制作アプリケーション
・Autodesk 3ds Max 2013
・Adobe After Effects CS5.5
・FumeFX 3.5.3

STEP1:「打ち上げ花火」を考える ~花火のしくみと種類を調べてみた~

400年以上続く日本の花火のしくみと種類の多さ

今回のテーマである「打ち上げ花火」について説明しますと、特殊な火薬を球状に包んだ「花火玉」と呼ばれる紙製の玉を打ち上げることによって上空で引火し、その燃焼や音を楽しむものを言うそうです。内部には主に「星」と言われる金属粉を混ぜ合わせた火薬が敷き詰められており、星の配置を変えたり燃焼による「炎色反応」を起こすことで様々な形や色の花火を楽しむことができます。お祭りのときに幾度も見ている花火ですが、実は今でも毎年各地域で新作が発表されており、数えきれないほどの種類が存在します。大きく分けると「割物」、「小(半)割物」、「ポカ物」、「型物」という名称に分類でき、花火玉の中身や割れ方が主な分類の理由となっているようです。職人に受け継がれ改良されてきた日本の打ち上げ花火は世界でも屈指の美しさを誇ります。次に見るときは、ひとつひとつ形や色の変化に注目するといっそう花火が楽しめるかと思います。


STEP2:「花火の煙」を考える ~煙は花火と同じくらい大切だった~

煙によって花火のスケールや空間の奥行きを表現する

STEP 02では「花火の煙」を再現してみます。筆者は花火の煙はメインである花火と同じくらい大切な要素だと考えています。花火の照り返しによって上空で浮かび上がる煙はスケールの大きさや空間の奥行きを感じさせるので、より花火の魅力を伝えてくれていると思います。そのため、花火が開花するたびに思わず煙にばかり注目してしまう人も多くいるのではないでしょうか。さて、花火の煙を再現するためには本連載ではお馴染みのプラグインFumeFXを使用します。今回は煙の要素別にシミュレーションを行うことにしました。❶地上に滞留する煙、❷スターマインによる煙、❸上空の煙の3種類です。各パーティクルが用意できたらさっそくシミュレーションを行います。花火となるとどうしてもグリッドの規模が大きくなるので、普段より煙の立ち昇りが遅く、望んだ煙の質感や動きの再現に手間どってしまいます。そのような場合はParticle SrcのTemperatureの数値を上げるなどしてグリッド内の温度を上げ、煙の上昇する力を調整します。それでも上がりにくい場合は、Gravityの数値を変更して全体の上がりを調整するのもひとつの方法です。


今回煙を3つの要素に分けてシミュレーションしました


❶は動画を参考に煙の発生する量に合わせるため、フレームごとにイベントをつくりパーティクル数を調整します


❷と❸についてはSTEP 03で後述する花火のパーティクルをベースに、シミュレーション用に調整したものを使用します


煙の立ち昇りが遅い場合はParticle SrcのTemperatureやGravityの数値を変更して上がる力を調整します

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STEP3:「花火」を考える ~種類に合わせた形や動きが大切だった~

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