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第7回:レンダリングした画像を、別ソフトに読み込んだ際の色合わせ

第7回:レンダリングした画像を、別ソフトに読み込んだ際の色合わせ

3DCG ソフトと Photoshop で色の見え方を合わせる方法

そこで、Photoshop で何が行われているのかを検証することにしました。Photoshop では [カラー管理] で色に関する設定を行なっています。[作業用スペース][RGB]欄に設定したカラープロファイルが、モニタに表示されるカラースペースということになるわけですが、これはつまり Photoshop で開いたRGB データはここで指定したカラープロファイルに落とし込まれて表示されるということです。カラーマネジメントの世界ではよく「RGBは相対値だ」と言われますが、それはカラープロファイルによって色が変わるということを意味しています。

異なるカラースペースでRGBは色を変える

人の見える範囲を示したXY色度図で、シアンの三角形は「sRGB」を、赤い三角形は「Adobe RGB」の表示領域を示したもの。どちらも三角形の頂点は 255 という値を持つ。つまり、三角形の大きさにより私たちが見る色が変わることを意味している
 

このような結果から、どうやら Photoshop は、「ソフトウェア内部で色変換を行なっている」 と考えた方が解決策を導きやすいように感じました。これは、よく 「シミュレーション機能」 として紹介されている、カラーマネジメント機能の最大の特徴とも言えるものです。

さて 3DCG ソフトと Photoshop が、どのように色を取り扱っているのかまでは判りましたが、ストレートに解決策が出てこないのは、各ソフトで連携が自動で行える機能がないからです。そこでこの2つの現象を結びつける方法を自分たちで見つけ、パイプライン化(作業フローのルール決め)する必要が出てきました。

答えは意外に単純な思いつきから出てきました。それは「Photoshop は常にカラープロファイルをシミュレーションしてくれる。それならモニタの色をシミュレーションさせれば、3DCG ソフトと同じ色になるのではないか」というものです。3DCG ソフトはモニタの色に依存しているので、それに Photoshop が合わせてくれれば一致させられるはずです。

さっそく、以下の手順で試してみました;

STEP 1:作業用モニタを sRGB に調整

STEP 2:3DCG ソフトでレンダリングした画像を書き出す

STEP 3:Photoshop の [カラー設定/作業用スペース/RGB]「sRGB」に設定
※カラー設定を変更しなくても [カラープロファイルの指定] で sRGB に設定すれば同じ結果が得られます。しかしこの場合は、その都度設定を行う必要があるのでミスが出やすく注意が必要です

STEP 4:Photoshop で開き、確認

すると予想通り、見事に色が一致しました。再確認のため、モニタを Adobe RGB に調整して、Photoshop を Adobe RGB に設定してみても、やはり一致します。

Photoshop の[カラー設定]とモニタのカラースペースを揃える

上述の手順で、前ページに載せたものと同じ画像を表示させてみたところ、3ds Maxのレンダリングウィンドウと Photoshop で開いたレンダリング画像の色が見事に一致した
 

これで色を一致させることができるようになりましたが、メンバーから疑問の声が上がりました。

「厳密には sRGB ではなく、モニタを測色した際に制作したカラープロファイルにしなくて良いのか?」

確かにその通りです。Photoshop にはモニタをシミュレーションさせるわけですから、その方が正しいし、色が一致する精度も高いはずです。しかし、この方法を採用すると大きな問題が発生します。モニタの調整、つまり 「キャリブレーション」 という、モニタを測色機で測定してプロファイルを作成し、モニタに調整結果を反映させる作業は、各モニタごとに行うため、プロファイルもモニタの数だけ作られることになります。例えば、長尾が作った 3DCG のレンダリング画像を別のスタッフに渡すと、その人は長尾のカラープロファイルを適応させます。一方、また別のスタッフが作ったものは、そのスタッフのカラープロファイルを適応させるわけです。
これではキリがありませんし、面倒でミスを誘発することになるかもしれません。そこで、全てのモニタをパイプラインで定めたカラースペース(sRGB や Adobe RGB など)に近づくように調整し、データの受け渡し時にはそのカラースペースのプロファイルを採用することで解決することにしました(皆さんがどのプロファイルを採用するかは、「第3回:カラーマネジメントに適した機材とは?」 の記事を見て決めてくださいね)。

ようやく運用ですが、その際にまた別の問題が発生しました。それは、「モニタ調整の精度」 です。ハードウェアキャリブレーションが可能なモニタは高い精度で調整できるために、基準にしたカラープロファイルを再現でき問題ありません。しかし、ソフトウェアキャリブレーションを行なったモニタは精度が低いために、色の一致度が低い結果になりました。
また、モニタによってはカラースペースが固定されているため、例えば広色域のモニターを sRGB のカラースペースに合わせられない、といったことも起こります。もし、あなたのモニタで色が一致しない場合は、「モニタの精度・調整の精度」 が低いことが原因ですので、カラースペースを変えることができるハードウェアキャリブレーション対応モニタを試してみるとすんなり解決するでしょう。

ちょっと長くなってしまったので、色合わせの方法を以下にまとめます;

STEP 1:作業基準となるカラープロファイルを決める

STEP 2:そのカラープロファイルになるようにモニタを調整する

STEP 3:3DCG ソフトのカラー設定を行う
※3ds Max Maya については 第5回、については 第6回 を参照

STEP 4:レンダリングして保存

STEP 5:Photoshop の[カラー設定]を作業基準のカラープロファイルに設定

STEP 6:Photoshop で開く

これで、3DCG ソフトと Photoshop の間で色が一致しないという、非効率で前時代的な状況から脱却することができます。今回は Photoshop を題材にしましたが、色が合わない原因と、その解決策について詳しく解説したので、きっと他のソフトの設定方法を探る際にもお役立て頂けると思います。
次回は、3DCG ソフトというバーチャルシミュレーション世界での、バーチャル色合わせについて解説していきますので、ご期待ください。

TEXT_長尾健作(パーチ)

▼Profile


長尾健作(ながおけんさく)

広告写真制作会社(株)アマナにて、3DCG 制作などの事業立ち上げを行なった後、(株)パーチ を設立。広告業界・製造メーカーに向けて、3DCG による新しい広告制作手法の導入/制作サポートを手がける。各種セミナーでは、制作業務の効率化・コスト削減を実現するためのノウハウを提供。「3DCGのためのカラーマネジメントセミナー」も実施している
 
 

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