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第12回:導入してみよう!

第12回:導入してみよう!

段階的導入

すでにカラマネを導入しているプロダクションや個人の多くは、段階的 に導入しています(もちろん全部署で一気に導入するケースもあります)。段階的導入のメリットは;

・1回の投資が少ない
・パイプライン構築を徐々に進められる
・1部署だけの導入でも、一定の高品質化と効率化が起こるので、すぐに効果を確認できる

......段階的に導入することで、投資と手間を分散させることができるのがメリットだとわかります。効果をすぐに確認できるので、追加投資もしやすいという意見もよく聞きます。あと、これは私の経験ですが、導入直後は制作者と管理者に小さな混乱が起きます。理由は、これまで慣れ親しんだモニタの色、パイプラインが変更されたことに対する気持ちの問題です。人間は「変化を好まない生き物」 ですからね。その気持ちを和らげてあげるには、改めてメリットを説明したり、徐々に慣れてもらうお願いをしたり、が効果的でした。

でも安心してください、導入から少し経つとメリットを実感してくるので、プラス意見が出てきます。そうすると混乱した人たちも落ち着きを取り戻し、導入を喜んでくれるようになります。そして、半年も経つと「カラマネがない環境なんて考えられない」「ビジュアル制作に携わる人は、みんな導入した方が良いよ」という言葉が聞こえるようになります。人間の適応力に驚かされる瞬間です。
では、段階的導入の具体例を見ていきましょう。

段階的導入例1:試験導入からスタート

まずは1台、または数台で導入して、カラマネ導入方法、パイプラインの構築などの試験を行います。そして、その経験を元に徐々に拡大していきます。実例を見ると、試験導入を担当する方は、

・カラーマネジメント導入がミッションになった専任者(開発部署の方が多い)
・機材に詳しい方
・色に関して厳しい部署の方

......になるようです。この方法は、特にカラマネに関する知識が少なかった時代に多かったように思います。導入に関する知識、マニュアルなどがないために、自社でカラマネをイチから研究する必要があったんでしょうね。どのような機材が最適なのかを判断するために、複数台の機材を購入したり、パイプラインを組み替えたり、試したりする必要がありました。そのためには1名ないし数名でスタートした方が費用がかからないので、このような例になったのだと思います。

図版2「段階的導入例《試験導入からスタート》」

「段階的導入例《試験導入からスタート》」 ※クリックで拡大
1台もしくは数台から試験的に導入します

段階的導入例2:部署単位で導入

最も色に厳しい部署に導入します。そして、徐々に拡大していきます。実例を見ると、色に厳しい部署とは、

・色を決定する部署
・色を間違えると問題が発生する部署

......のようです。このような部署の場合、カラマネの導入効果が最もよく現れます。品質向上はもちろんですが、作業効率が劇的に向上します。そして何より担当者にとって嬉しいのは、ストレスが激減する! ことでしょう。モニタで見た色が忠実でデータ通りの色になるため、色の決定が早くなり、他部署へデータを渡しても問題が発生することが無くなります。部署単位で一括導入するため、グループ内のメンバー間で色の統一が図られます。どのモニタを見ても同じ色になっているので、メンバーを指揮するディレクターは指示がしやすくなり、あるメンバーが作ったデータを使い回したり、仕込みと仕上げを違うメンバーが行なっても色確認や修正をする必要がなくなります。また、他部署との関わりがないため、問題が起きづらく、導入がスムーズに進みます。

図版3「段階的導入例《部単位で導入》」

「段階的導入例《部単位で導入》」 ※クリックで拡大
部署のメンバー全員で導入します

段階的導入例3:全体で導入

会社全体、または関係者全体で導入します。導入例2で、「色に厳しい部署は導入効果が大きい」 と解説しましたが、カラマネはどの部署でも高品質化と効率化をもたらします。それ以外の部署でも、その度合いが多少小さくなるだけです。そして、全体で導入することでその効果は最大化します。実例を見ると、以下のような条件と理由を持った会社が行うようです;

・カラマネの導入方法を持っている(または専門知識を持っている方に協力してもらう)
・なるべく早く品質と効率を上げたい
・いずれやるのだから、どうせなら一気にやる(経営判断が早い)

全体に導入する期間が他の例に比べて 短期間 になるため、最も早く "最大の効果" を得ることができます。一方で試験期間がないため、すでに導入した経験のあるスタッフが進行するか、外部からの協力を得て進めていきます。

図版3「段階的導入例《全体で導入》」

「段階的導入例《全体で導入》」 ※クリックで拡大
全体で導入して、短期間で効果を最大化します

段階的導入例4:モニタの品質を徐々に上げていく

これまでの例と視点を変えてみましょう。これまでの例はカラーマネジメントシステムの導入についてでしたが、そのうちのモニタについてフォーカスした例です。 一番重要な機材であるモニタですが、3DCG ソフトの設定などと違い、機材そのものを入れ替える必要があります。カラマネ導入のタイミングと、機材入れ替えのタイミング(リース切れや故障など)を一致させるのは簡単ではありません。そこで、既存のモニタを生かしながら徐々に高品質なモニタに入れ替えていきます。既存のモニタを生かしながらなので、取り組みやすいのが特徴です。

実例を見ると、既存のモニタは新たに購入した 測色器 を使って調整を行う 「ソフトウェア・キャリブレーション」 で運用します。その際の注意点が2つあります。

POINT 1:測色器によって性能が違う
POINT 2:測色器によって調整できる台数に制限がある

POINT 1 の性能 については、「フィルタ方式」と「分光式」の2種類に大別できます。 より精度が高いのは「分光式」 です。そして POINT 2 の台数制限 ですが、ハードウェア・キャリブレーションの場合は一般的に制限がありませんので、対応している測色器を1台所有していれば大丈夫です。その理由は、モニタ側に補正回路があり、調整用ソフトウェアもモニタメーカーから提供されるためです。
しかし、ソフトウェア・キャリブレーションの場合は測色器に付属のソフトウェアで行うため、ソフトウェアのライセンス形態によっては台数制限がある場合があるので注意が必要です。たとえば手頃な価格で分光式の X-Rite ColorMunki は3台までとなっているので、調整するモニタが多くなると測色器の購入台数が増えることになり、かえって投資が大きくなることもあります。

図版5「段階的導入例《モニタを徐々に高品質化する》」

「段階的導入例《モニタを徐々に高品質化する》」 ※クリックで拡大
既存モニタを生かしながら、徐々にハードウェア・キャリブレーション型モニタに入れ替えていきます

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