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第3回:野﨑宏二先生&大澤 司先生(エヌ・デザイン)

第3回:野﨑宏二先生&大澤 司先生(エヌ・デザイン)

企業目線の率直なフィードバックを心がけている

前述のステージ3に進んだ学生は、モデリング、アニメーション、エフェクト、コンポジットなどのスペシャリストコース、あるいはゼネラリストコースに分かれて課題を制作する。「なるべく少ない学費で、最短期間で、実践的なスキルだけを身に付けて就職したいという人には、何らかのスペシャリストを目指すよう勧めています」と大澤氏は語る。

「先生に聞く。」第3回・大澤 司先生

モデリングからコンポジットまで、全工程のスキルを身に付けたゼネラリストになろうとすると、必然的に学習期間は長くなる。そういうゼネラリストが必要とされる現場、例えば"CM制作に携わりたい"といった明確な目標がある学生は、腰を据えてゼネラリストを目指せば良い。そうではなく、なるべく早い就職を優先したいなら、1つの分野だけを極めた方が良いと野﨑氏も同意する。

「CGデザイナーの募集に対して、全てが中途半端な5分のムービーを送ってこられても、採用担当としては何も注目するものがないのです。それよりは、3ヶ月がかりで必死にモデリングした、すごく完成度の高い静止画1枚の方が説得力があります。"ちょうどモデラーが足りないから、試しにアルバイトで採用してみようかな"という気持ちになるかもしれない。そうやって"アルバイトでも、プロジェクト契約でも、何でも良いから業界に滑り込め"と伝えています」。

同様に、アニメーションのスペシャリストを目指すなら、モデルはすごく簡素で良いから、活き活きとしたアニメーションを追求すれば良い。そのようにして、学生たちが極めに極めた課題作品が、アルケミーのWebサイトには数多く掲載されている。「通学期間や勉強スタイルに関しては学生の自主性を重んじますが、進路の選び方に関しては、企業目線の率直なフィードバックを心がけています。ときには、本人がアニメーションをやりたいと希望しても、"アニメーションには向いていないから、まずはモデリングでの就職を目指してみてはどうか"といったアドバイスをすることもあります」(野﨑氏)。

企業目線の率直なフィードバックは、課題制作においても徹底されている。アルケミーでは、学生に好きなものを、好きなようにつくらせることがないという。「"好きなもの"の場合、本人が納得すれば、そこがゴールになります。しかし、われわれの仕事のゴールは、クライアントが納得してくださるかどうかです。例えばモデリングなら、指示されたコップ1個、ペットボトル1本を、われわれプロが納得するレベルでつくれるようになることが、業界に入るための最低条件だと伝えています」(野﨑氏)。

たび重なる細かいリテイクを素直に受け止め、仕事で求められる高いレベルのデータをつくれるようになれば、自然と業界への道が開けていくという。「ほとんどの学生は、アルケミーでつくった課題作品を使って就職活動をしています。就職活動用の自主制作をつくらなくても、プロレベルのクオリティを満たしていれば、ちゃんと評価されるのです」(大澤氏)。

「先生に聞く。」第3回・野﨑宏二先生&大澤 司先生

CGプロダクション経営の経験に裏打ちされた独自の教育スタイルを有するアルケミーは、他の3DCGの教育機関とは一線を画した存在だ。社会人を対象とする職業訓練校といっても良いだろう。世の中の変化のスピードが増し、社会人になった後も生涯学び続ける姿勢が重要視されるようになった昨今、アルケミーに期待される役割はさらに拡大していくだろうことが予想される。

TEXT_尾形美幸(CGWORLD)
PHOTO_大沼洋平

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