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第3回:セット&プロップ

第3回:セット&プロップ

section 04 Technique
インスタンス化と3Dペイントの活用

MARZA ANIMATION PLANETのセット&プロップチームが多用したという、 単体モデルのインスタンスによる岩肌の作成と、Mudboxによる3Dペイントで 描いた汚しテクスチャという2つの技法について具体的にみていこう。

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© LEIJI MATSUMOTO / CAPTAIN HARLOCK Film Partners

惑星トカーガの岩肌表現~インスタンスの活用

中盤に登場する岩肌で覆われたトカーガの地表。宇宙空間など暗めのシーンが多い本作の中で、明るいルックの本シーンは中盤の大きな見せ場である。このシーンでは、単一モデルを巧妙にインスタンスすることにより、表情豊かな景観を作り出している。まずはベースとなる岩モデルを1つだけ作成する。具体的にはMayaでベースとなる岩の形状を作りUV設定をした後、それをZBrush内にもっていき、岩表面のディテールをスカルプトする。このときに大事なのが、「どの方向からも使えるように、ビューを回しながら作ることです」(早川一繁氏)。
この作り込まれた岩からディスプレイスメントマップを作成し、中程度にポリゴン数を落とされた岩のジオメトリをエクスポートする。そしてあらかじめローポリで作っておいた崖の形のモデルの表面に沿って岩をひとつひとつインスタンスして並べていく。その際、それぞれの岩を回転させ、カメラから見える面にバラつきをもたせつつ、サイズもひとつひとつ変えスケール感に注意しながら並べていく。「コツは、カメラに近い部分は情報量を増やすために比較的サイズの小さい、細かいディテールに見える形にした上で配置することですね」(早川氏)。

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ZBrushで仕上げた、岩肌モデル。これを1ユニットとして、インスタンス化させて利用する
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特徴ある形状については、個々にモデリングする。画像はその一例
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Maya上のシーンファイル。メッシュ表示されている箇所がインスタンス化された岩肌モデル。インスタンスの配置は手作業で行われた
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レンダリングした、トカーガ地表の完成形。インスタンスを利用することで、データ節減とハイディテールを両立させて いる
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ディスプレイスメントマップの例。岩肌用〈上〉と、橋の部分用〈下〉
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アルカディア号の作業艇~Mudboxによる汚しテクスチャ~

続けて、惑星トカーガで登場する作業艇を例に、Mudboxによる汚しテクスチャの作成方法(完成モデルに対して、3D空間上で確認しながら汚しを加えていくワークフロー)を紹介しよう。まずは、Photoshop上で塗装の色と質感ごとに色を塗り分けたマスク用テクスチャを作り、モデルに貼り付ける。次にMudboxにもっていき、この色分けを基に簡単なベタ塗りを施す。この状態に対して、Mudboxのブラシを使い、ムラ、くすみ、ペイント欠け等のディテールをレイヤー分けしながら描き込んでいく。最後に出来上がったテスクチャを再度Photoshop上で再調整し、テクスチャが完成する、という流れだ。
Mudboxを使う利点としては、「ブラシの機能がとても優れていることに加え、(テクスチャを)3D上で確認しながら自分の意図した部位に見た目ベースで描き込めるところですね」と、早川氏。ちなみにテクスチャ(4Kサイズ)は、この作業艇1体に対して、カラー、スペキュラ、ラフネス、バンプを各々15枚ほど、全部で約60枚が使われているという。「作業艇が出てくるシーンはキャラクターが演技するような寄りのショットがあったため、テクスチャの解像度はかなり高めに作りました」(早川氏)。

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〈上左〉作業艇コクピット周辺の完成モデル(ワイヤーフレーム表示)。〈上中〉塗装の色と質感のちがいをマスキングし、色分けする。〈上左〉マスクを基に簡単なベタ塗りを行う。〈下左〉Mudboxのブラシを使い、ムラ、くすみ、欠けなど、各要素ごとにレイヤー分けしながら描き込んでいく。〈下中〉素材となるイメージを貼り付ける。〈下右〉完成したテクスチャ。ドロの付着や金属のスリ傷などが細かく描かれているが、こうした表現にはMudboxによるテクスチャワークが絶大な効果を発揮したという
© LEIJI MATSUMOTO / CAPTAIN HARLOCK Film Partners

TEXT_谷口充大(テトラ※p1、今泉隼介 ※p2〜4
PHOTO_大沼洋平

『キャプテンハーロック』

映画『キャプテンハーロック』

2013年9月7日(土)全国ロードショー
原作総設定:松本零士
監督:荒牧伸志
脚本:福井晴敏、竹内清人
アニメーション制作:東映アニメーション、MARZA ANIMATION PLANET
harlock-movie.com
© LEIJI MATSUMOTO / CAPTAIN HARLOCK Film Partners

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