>   >  日本アニメCGの新たな原動力 Autodesk 3ds Max 2011×PSOFT Pencil+ 3:日本アニメCGの新たな原動力 Autodesk 3ds Max 2011×PSOFT Pencil+ 3(第2回)
日本アニメCGの新たな原動力 Autodesk 3ds Max 2011×PSOFT Pencil+ 3(第2回)

日本アニメCGの新たな原動力 Autodesk 3ds Max 2011×PSOFT Pencil+ 3(第2回)

Pencil+ 3 ストローク

Pencil+ 3のストローク機能では、ハーフトーン調や色鉛筆調の等のマテリアルを設定できる。前バージョンPencil+ 2.6からいくつか機能拡張が施されているのだが、今回はPencil+ 3のストロークを標準マテリアル等にマップとして貼り付けて使用する方法を紹介する。前バージョンでは、[Pencil+ 2 マテリアル→ゾーン→ストロークからコピー]という手順を踏まなければならなかったが、Pencil+ 3では、一般マップ化され、簡単にマテリアル等に簡単に貼れるようになった。

グラデーションオフセット マップUI

ストローク機能はPencil+ 3から一般マップ化され、マップブラウザから手軽にアクセスできるようになった
 

次にパラメータを見てもらいたいのだが、一目でパラメータ項目が豊富に用意されていることが判る。サイズ、長さ、間隔、角度、設定でき、サイズとアルファには、減衰をかけることが出来るのでタッチを表現するのも可能で、さらにそれぞれ0%~100%のランダム数値を割り当てられるので複雑なストロークも再現できる。これだけ設定項目があると自分のイメージに近づけるのが大変に思われるかもしれないがとても感覚的にストロークを設定できすぐにイメージに近づけることができる。プリセットも幾つか用意してあるので参考にするといいだろう。

グラデーションオフセット マップUI

Pencil+ 3 ストロークUI。設定項目が多岐にわたって用意されている
 

それでは、実際にカット制作で使えそうなオブジェクトとして、簡単なエフェクトの竜巻を作ってみたい。まず円柱モデルを作成し、ディスプレイス(ノイズマップを割り当て)とテーパーで変形させ、それっぽい形にする。

グラデーションオフセット マップUI

その上で、Pencil+ 3 ストロークを貼ったマテリアルを割り当てるわけだが、マップは[拡散反射光]と[不透明度]の2箇所に貼るだけでOK。続けて、ストロークの設定を行う。まずは[拡散反射光]にPencil+ 3 ストロークを割り当てる。[座標]ロールアウト内にある「タイリング」のV値を10に、そして[ストローク]ロールアウト下の各種設定は以下のようにする(実際に試してもらえればと思う);
 
 サイズ:8.29/ランダム:7.9
 ラインアンチ:1.0
 長さ:100.0/ランダム:100.0
 水平間隔:1.0/ランダム:5.0
 垂直間隔 1.0/ランダム:0.0
 角度:18.5/ランダム:26.0
 曲率:0.0
 形状に依存:0.0
 
続けて、[サイズ減衰]を有効にし縁の方向に減衰が掛かるよう設定、拡散反射光のマップを不透明度にコピーし色をカラー範囲ロールアウトで白黒に変更する、以上で設定は終了だ。レンタリングした画像が下のものである。

グラデーションオフセット マップUI

Pencil+ 3 ストロークを用いた竜巻の表現。作画のニュアンスが効果的に再現されている
 

ここで紹介した手法以外にも既存のマップと組み合わせたりして作れば、作画タッチのエフェクトを簡単に作成することが出来てしまうのはPencil+ 3の大きなアドバンテージと言える。なお、公式サイトからPencil+ 3 ストロークが使われたマテリアルのサンプルファイルのダウンロードができるのでそちらも参考にしてもらえればと思う。(文:サンジゲン・松浦宏樹)

導入事例①
『Panty&Stocking with Garterbelt』

2010年10月から全13回にわたって放映されたTVシリーズ『Panty&Stocking with Garterbelt(パンティ&ストッキングwithガーターベルト)』(アニメーション制作:GAINAX)では、PSOFT Pencil+ 3の機能をフル活用した。下の画像の通り、本作はリミテッドアニメとカートゥーンを併せ持ったルックスに仕上がっているが、こうした一見、CGとは無縁のアニメーション作品にもサンジゲンは参加させて頂いている。そもそも作画アニメの中にCGを取り入れるといった一般的な使用方法ではあったが、違っていた部分はカットの中身まるごとCGで担当するところにあった。これまでもいくつかCGのカットと作画のカットが交互に存在する、もしくは同一画面内に共存させるという方式であったが、いずれの場合も確かな進歩があったとは言え、依然として改良の余地が残ってしまっていた。本作でも従来と同様にCGと作画のカットが交互に存在するような作り方ではあったが、CGパートのコンセプトとしては作画のカットに負けじと極限まで馴染ませることに注力した。Pencil+ 3でどこまで表現できるのかという挑戦でもあった本作、手前味噌にはなるが巧くハマった作品だと自負している。

『Panty&Stocking with Garterbelt』場面写真01 『Panty&Stocking with Garterbelt』場面写真02 『Panty&Stocking with Garterbelt』場面写真03 『Panty&Stocking with Garterbelt』場面写真04

© 2010 GAINAX/GEEKS

『Panty&Stocking with Garterbelt』プロジェクトでも、まずは通常のようにカラーの設定を行なった(影を落とさないのでそのようにグラデーションを設定した)。そして苦労したのは、やはりラインの調整である。前カットの作画の太さや、見え方などを参考にする、その逆で、作画班にCGのラインに合わせて描いてもらったりもしたが、そうした試行錯誤の中から、Pencil+ 3によるルックスで先に提示した効果を作画にフィードバックするという化学反応が起きたりもした。また、本作では「内線とアウトラインが異なる色」で作画されたりもしており、その完成画を見てからCG担当カットで再現するまでの時間を短縮できたのもPencil+ 3に依るところが大きいだろう。効果的という意味では、第1回記事にて取り上げた「マテリアルカラーのグラデーション バーの機能向上」も挙げられる。このプロジェクトでは、毎回新規のアニメを作るかの如く様々な色指定があり、それらに短時間で対応する上ではフル活用させてもらった。
さらに、特殊な「勢い」を表現する上でもPencil+ 3を重宝した。線を何重にも重ねたり、様々なフォルムの設定を複数作ることで作画の手法であるタッチ線を表現したりといった具合だ。最終的な画づくりにおいては、いわゆるカメラをナメる場合などに迫力を足すための調整として、パース変形モディファイヤを用いて強烈なパースを付けることにより、良い意味での「作画的ハッタリ」に似た画づくりがより効果的に表現できるようにもなった。これは最終的な画をさらに良くするだけでなく、その画に辿り着くまでのトライ&エラーがより直感的かつスピーディーに行えるようになったという面でも実に意義深い。本作におけるCG表現については、アニメNewtypeチャンネル内の特設ページにて全6回に分けてメイキング動画が公開中なのでそちらもご覧になって頂ければ幸いである。(文:サンジゲン・松浦裕暁)

TEXT_サンジゲン

▼About Company

株式会社サンジゲン
3DCGによる日本的なリミテッド・アニメーション表現を得意とするCGプロダクション。アニメーション作品を中心に、モデリング・テクスチャ・リギング・アニメーション・コンポジットに至るまでトータルでプロデュースを行なっている。
 
<近年の代表作>
『機動戦士ガンダム00』シリーズ『映画ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー...ですか!?』『パンティ&ストッキング with ガーターベルト』『マルドゥック・スクランブル』『とある魔術の禁書目録Ⅱ』『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』『ラブライブ!』『アマガミSS』ほか多数
 

Autodesk 3ds Max 2011パッケージ画像

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価格:409,500円(通常版スタンドアロン、NetShop.Too価格)
問:株式会社Tooデジタルメディアシステム部
TEL:03-5752-2855
Tooデジタルメディアシステム部公式サイト

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サンジゲン特製「3ds Max アニメCG制作マニュアル」プレゼントキャンペーン特設ページ

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