⚫︎講義内容

日本のゲーム開発現場において、「レベルデザイナー」と呼ばれる開発者どうしがノウハウを共有する機会は限られており、その専門的な業務知識は多くの場合クローズドな状態にあります。

本講演では、現役レベルデザイナーとしての実務経験や海外文献研究をもとに、レベルデザイン業務の進め方や実践的テクニックについて体系的に紹介します。

講演の中核テーマは「"外交官"としてのレベルデザイナー」です。これは『A Practical Guide to Level Design: From Theory to Practice, Diplomacy and Production』で提唱されている一節で、レベルデザイナーがゲーム開発現場における職種横断的な連携のハブとして機能し、時にはプロジェクト全体の成否を左右する重要な役割を担うことを示しています。具体的には、多部門との協働プロセス、効果的なコミュニケーション手法、プロジェクト管理のノウハウなど、実務で即座に活用できる知識を共有します。

また併せて、前提となる「ゲームデザインにおけるレベルデザインの位置づけ」についてや、ミクロな実践例として「プレイヤー誘導のテクニック」についても解説し、レベルデザイン業務の全体像を包括的に提示します。

⚫︎カリキュラム

1 -「ゲームデザイン」における「レベルデザイン」の位置づけ
「レベルデザイン」という職種や業務内容は、会社や現場によって大きく異なる定義で使われることが多く、まずは本講演における「ゲームデザイン」や「レベルデザイン」という概念について、皆さんと認識をすりあわせるところから始めます。
私が考えるゲームデザインの職務・分野・要素について整理した上で、その中での「レベルデザイン」という仕事がどのようなものなのかを明らかにしていきます。

2 -“外交官”としてのレベルデザイナー
理想的なレベルデザイナーは、ゲーム開発現場における”外交官”として、異なる専門性を持つ職種間の橋渡し役となり、時にはプロジェクト全体の成否を左右する重要な役割を担います。
今回は仮に「バトル要素のあるリニア進行の3Dアクションのコンシューマゲーム」のプロジェクトを想定して、レベルデザイナーがいかなる仕事でそのミッションを達成するべきなのか説明し、その注意点やコツをお伝えします。
背景アーティストやスクリプトプログラマとの連携、スケジュール管理やプレイテスト、デバッグ機能に至るまで、幅広く取り扱います。

3 - ”プレイヤー誘導”のテクニック
レベルデザインの主な役割の一つである”プレイヤー誘導”について、欧米では様々なテクニックが確立され、活発に議論が交わされています。
今回は、マクロな設計からミクロな配置、直感的なものから意識的なものに至るまで、具体的な”誘導”テクニックをいくつか紹介します。
そして、これまで説明してきた”外交官としてのレベルデザイン”のまとめとして、”外交官”としてどのように誘導テクニックを扱っていくのかについても説明します。